貼り薬なのに、経口のドネペジルと同じ消化器副作用が出ることをご存じでしょうか。「貼るから消化器には影響しない」と思っている医療スタッフは少なくありません。これを知らないまま患者指導をすると、副作用の見逃しにつながります。
アリドネパッチの副作用で最も多く報告されているのが、適用部位の皮膚症状です。
参考)https://medical.kowa.co.jp/product/faq/19
国内第III相試験(高度アルツハイマー型認知症患者対象)では、55mg群において以下の頻度が確認されています。
つまり約3人に1人は何らかの皮膚症状が出ている計算です。 対処の基本は貼付部位のローテーション。同一部位への貼付は7日以上の間隔をあけることが添付文書(2025年4月改訂第4版)に明記されています。
参考)https://medical.kowa.co.jp/product/faq/18
皮膚症状が消失するまでの期間も明らかになっています。 健康高齢男性を対象とした反復貼付試験では、テープ剤本体接着面の皮膚症状はアリドネパッチ27.5mgで91.4%、55mgで79.4%の被験者が3日以内に消失したと報告されています。これは使えそうなデータです。
ただし固定用シート接着面では消失まで7日以上かかる例も多く、27.5mgで69.6%、55mgで76.9%の被験者が7日以内に消失する水準です。 部位ローテーションは最低7日間隔を厳守するのが原則です。
皮膚症状が現れた場合の対処として、ステロイド軟膏または抗ヒスタミン外用剤の使用が推奨されています。 症状が続く場合は一時休薬か中止を検討します。保湿剤の予防的使用も考慮すべきポイントです。
興和 医療関係者向けFAQ:アリドネパッチの皮膚症状と対処法(添付文書根拠も記載)
「貼り薬だから胃腸には影響しない」という思い込みは危険です。
参考)https://medical.itp.ne.jp/kusuri/shohou-20120000005495/
アリドネパッチはアセチルコリンエステラーゼを阻害し、脳内だけでなく末梢でもアセチルコリン量を増加させます。コリン賦活作用によって胃酸分泌と消化管運動が促進されるため、経口のドネペジルと同様に消化器症状が現れます。 貼り薬でも全身曝露があるということです。
参考)https://medical.kowa.co.jp/product/faq/17
主な消化器症状は以下のとおりです。
特に27.5mgから55mgへ増量する際は、消化器系副作用への監視を強化する必要があります。 増量直後の外来や訪問時に消化器症状の確認を行う習慣をつけることが重要です。
認知症患者自身が「気持ち悪い」「食べたくない」と言葉で訴えることが難しい場合も多いです。医療従事者が積極的に観察することが求められます。体重減少や活動量の低下なども消化器症状のサインになりえます。いつもと違う様子に注意すれば大丈夫です。
重篤なケースでは十二指腸潰瘍穿孔や消化管出血に至る報告もあります。 既往に消化性潰瘍がある患者への使用は特に慎重に行う必要があります。
病院検索iタウン 薬事典:アリドネパッチの使用上の注意(消化器系副作用の記載あり)
アリドネパッチの副作用は皮膚症状や消化器症状だけではありません。
頻度不明ながら、以下の重篤な副作用が添付文書に明記されています。
| 臓器・系統 | 主な副作用 |
|---|---|
| 循環器系 | QT延長、心室頻拍(トルサード・ドゥ・ポアントを含む)、心室細動、洞不全症候群、高度徐脈、心ブロック、失神、心筋梗塞、心不全 |
| 神経系 | 脳性発作(てんかん・けいれん)、錐体外路障害、脳出血、脳血管障害 |
| 筋肉・代謝系 | 悪性症候群、横紋筋融解症 |
| 肝臓 | 肝炎、肝機能障害、黄疸 |
| その他 | 急性膵炎、急性腎障害、血小板減少、原因不明の突然死 |
循環器系副作用は特に注意が必要です。 QT延長(1〜3%未満)は数値としても一定頻度で発生しており、電解質異常や他のQT延長薬との併用がある患者では、定期的な心電図チェックを検討することが合理的です。
悪性症候群は見逃しが危険な副作用です。 無動緘黙(むごんかんもく)・強度の筋強剛・嚥下困難・頻脈・血圧変動・発汗が現れ、発熱が続く場合は即時中止と全身管理が必要です。白血球増加やCK(CPK)上昇が指標になります。
横紋筋融解症が発症した場合は急性腎障害への進展リスクもあります。 筋肉痛や脱力感の訴え、CK上昇が見られたら早急な対応が求められます。結論は、重篤副作用は頻度不明でも「起こりうる」前提でモニタリングを続けることです。
KEGG MEDICUS:アリドネパッチの医薬品情報(副作用・警告を含む詳細データ)
アリドネパッチが2023年4月に発売されて以来、経口ドネペジルとの使い分けが現場では課題となっています。 貼付剤ならではのメリットがある一方、副作用の性質は経口剤と本質的に変わらない部分も多いです。
参考)アリドネパッチ(ドネペジル貼付薬)の特徴・副作用|明石市大久…
貼付剤のメリットとしては以下が挙げられます。
一方、副作用の面では貼付剤固有のリスクも存在します。 皮膚累積刺激性は反復投与によって蓄積するため、隔日投与群では連続投与群より皮膚反応が軽度であったというデータが動物実験で確認されています。これは意外ですね。
経口ドネペジルからアリドネパッチへの切り替え時は、同等量への換算に注意が必要です。 アリドネパッチ27.5mgがドネペジル経口剤5mgに、55mgが10mgに相当するとされています。切り替え後も副作用モニタリングを継続することが原則です。
参考)医療用医薬品 : アリドネ (アリドネパッチ27.5mg 他…
先行のリバスチグミン貼付剤(イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ)とどう使い分けるかも現場での疑問となっています。 ドネペジルは重度認知症にも適応があること、作用機序(AChE選択的阻害)が異なることを踏まえた選択が求められます。
朝日生命「あんしん介護」認知症コラム:認知症への貼り薬の種類・効果・副作用(医師監修)
副作用への対応は「発現してから対処する」だけでは不十分です。 発現を予防するための事前指導が患者アウトカムに直結します。
貼付前の患者・家族への説明として最低限伝えるべき内容を整理します。
皮膚症状の予防には保湿剤の活用が有効です。 特に乾燥しやすい高齢者では、入浴後に保湿剤を使用して皮膚のバリア機能を維持することが、皮膚症状の軽減につながると考えられています。これは見落とされがちな対策です。
訪問看護師や介護士など多職種との連携も重要です。日々の観察記録に「貼付部位の皮膚状態」「食事量・排便状況」「活動量の変化」を組み込むことで、副作用の早期発見が可能になります。医療チーム全体で副作用監視を共有することが条件です。
副作用が出た場合の記録として、PMDAへの副作用報告制度(医薬品副作用被害救済制度)の活用も忘れずに確認しておきましょう。 頻度不明とされている副作用のデータ蓄積には、現場からの報告が不可欠です。
PMDA:アリドネパッチに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)—重要なリスクと対策を収載