出血性ショックの症状と病態:医療従事者が押さえるべき診断と初期対応の要点

出血性ショックは循環血液量の急激な減少により組織灌流不全を来す重篤な病態です。ATLS分類に基づく4段階の症状、早期徴候と晩期徴候の見極め、致死のトライアドを含む病態生理を理解し、適切な初期対応を行うにはどうすべきでしょうか?

出血性ショック 症状の基礎知識と核心ガイド

出血性ショックの4段階分類と臨床徴候
ATLS分類による4段階の重症度

出血量15%未満のClass Iから40%超のClass IVまで、心拍数・血圧・尿量・意識レベルで重症度を判定します。

早期徴候と晩期徴候の見極め

頻脈は最も早期の徴候、低血圧は遅発性の所見です。皮膚冷感・尿量減少・意識変化を早期に把握することが重要です。

致死のトライアドと病態生理

低体温・凝固障害・代謝性アシドーシスが相互に悪循環を形成し、致死的転帰を招く病態を理解し予防的対応が求められます。


出血性ショックの定義と病態生理


出血性ショックは、外傷・消化管出血・産科出血などによる循環血液量の急激な減少により、組織への酸素供給が需要を下回り、細胞レベルの低酸素状態と多臓器不全を来す重篤な病態です。 循環血液量の減少は静脈還流量の低下を招き、心拍出量の減少、平均動脈圧の低下、そして末梢組織灌流不全へと進行します。


参考)https://www.slideshare.net/slideshow/comprehensive-overview-of-shock-classification-pathophysiology-and-management/286840804
初期には交感神経系の活性化により、心拍数の増加(頻脈)、末梢血管収縮(皮膚冷感・蒼白)、腎血流の再分布(尿量減少)などの代償機転が働きます。 しかし、出血量が循環血液量の30〜40%を超えると代償機転が破綻し、血圧低下、意識レベルの低下、無尿などの脱代償状態へと移行します。


参考)Shock and Resuscitation Revisi…


ATLS分類による4段階の症状と臨床所見

分類 出血量(比率) 臨床所見
Class I <750 mL(<15%) 心拍数<100/分、血圧正常、呼吸数14-20/分、尿量>30 mL/時、意識は alerta〜軽度不安
Class II 750-1,500 mL(15-30%) 心拍数100-120/分、血圧は維持されるが脈圧減少、呼吸数20-30/分、尿量20-30 mL/時、軽度不安
Class III 1,500-2,000 mL(30-40%) 心拍数120-140/分、血圧低下、呼吸数30-40/分、尿量5-15 mL/時、意識混濁・不安
Class IV >2,000 mL(>40%) 心拍数>140/分、血圧著明低下、呼吸数>35/分、尿量最小〜無尿、意識レベル低下(傾眠〜昏迷)

Class Iでは生命徴候はほぼ正常範囲であり、臨床的にショックを疑う所見に乏しいため、見落としに注意が必要です。 Class IIでは頻脈と脈圧の狭小化が早期の警告徴候となります。 Class III以降では低血圧、意識変化、尿量減少が顕著となり、即時の出血制御と大量輸血プロトコルの適応となります。



早期徴候と晩期徴候:臨床評価の要点

出血性ショックの臨床評価では、早期に出現する徴候と晩期に出現する徴候を明確に区別することが、迅速な診断と介入に不可欠です。


参考)What are late signs of hemorrh…

  • 早期徴候(代償期):頻脈(心拍数>100/分)は最も早期かつ高頻度の所見です。 末梢血管収縮による皮膚冷感・蒼白・毛細血管再充満時間の延長(>2秒)、軽度の呼吸数の増加(20-30/分)、尿量の減少(0.5 mL/kg/時未満)、軽度の不安や焦燥感が認められます。

特に、高齢者やβ遮断薬服用患者では頻脈が抑制されるため、血圧や尿量、意識レベル、乳酸値などの他の灌流マーカーを重視した評価が必要です。


参考)Shock & Major Haemorrhage


致死のトライアドと代謝性破綻

重篤な出血性ショックでは、「致死のトライアド(lethal triad)」と呼ばれる3つの病態が相互に増悪し合う悪循環を形成し、致死的転帰を招きます。


参考)How to Treat Hemorrhagic Shock…

  • 低体温:大量出血と大量輸液による熱喪失、環境曝露により深部体温が35℃未満に低下します。低体温は凝固酵素の活性を低下させ、血小板機能を障害し、不整脈や心機能低下を来します。
  • 凝固障害:凝固因子の希釈、消費、線溶亢進、血小板機能不全により止血能が破綻します。外傷性凝固障害は早期から生じ、トロンボエラストグラフィ(TEG)や回転式血栓弾性測定法(ROTEM)による評価が有用です。
  • 代謝性アシドーシス:組織低灌流による嫌気的代謝の亢進で乳酸が蓄積し、base deficitが悪化します(base deficit <-6 mEq/Lは重篤なショックを示唆)。 アシドーシスは心筋収縮力を低下させ、血管反応性を減弱させ、凝固障害を増悪させます。

これら3つの病態は相互に増悪し合うため、早期の出血制御、血液製剤のバランスのとれた投与(MTP)、体温管理(加温輸液・加温ブランケット)、ペルミッシブ・ハイポテンション(収縮期血圧80-90 mmHgを目標)などのDamage Control Resuscitation(DCR)戦略が推奨されます。


参考)Hemorrhagic Shock: Classificat…


診断アプローチと初期管理の指針

初期管理の要点は以下の通りです。


参考)Hemorrhagic Shock Classificati…

  • ABCの確保:気道確保、換気補助、2本以上の太い静脈路または骨髄内穿刺による循環確保。
  • 出血制御:直接圧迫、止血帯、手術、血管内塞栓術などによる早期の出血源制御。
  • 輸液・輸血:Class I-IIでは平衡液の急速投与、Class III-IVでは早期の血液製剤投与(MTP発動)とペルミッシブ・ハイポテンション。
  • モニタリング:連続的な血圧・心拍数・尿量・乳酸・base deficitの評価により、灌流改善と治療反応性を判定。

参考リンク:外傷初期診療ガイドライン(日本外傷学会)https://www.jstrauma.org/guideline/(https://www.jstrauma.org/guideline/)




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