リパクレオン出荷調整が始まった2024年6月以降も代替薬に切り替えた患者の8割以上が「消化器症状の悪化」を一時的に経験しているというデータがあります。

リパクレオン(パンクレリパーゼ)の出荷調整は、2024年6月にカプセル150mgの限定出荷から始まりました。 同年8月には顆粒300mg分包(120包)にも限定出荷が拡大され、医療現場での在庫不足が顕在化しました。
参考)https://www.gifu-upharm.jp/di/mguide/salesupply/2g/ss1918512408.pdf
原因はひとつではありません。主要な背景として、タフマックEやエクセラーゼといった低力価消化酵素製剤の製造販売中止が相次いだことがあります。 これらの薬剤から切り替えを余儀なくされた患者が一斉にリパクレオンへ流入し、需要が平常時を大きく超える状況が続きました。つまり需要急増と製造能力のミスマッチです。
製造受託企業からの出荷遅延も重なり、2025年6月時点でもカプセルの供給スケジュールが変更されるなど、断続的な供給不安が続きました。 その後、2026年4月20日に顆粒300mg分包の通常出荷が再開され、同年5月以降にカプセル150mgも通常出荷に移行しています。
参考)膵消化酵素補充剤「リパクレオン®カプセル150mg 120カ…
現在の状況はこうです。
日本消化器病学会:リパクレオン®カプセル150mg 通常出荷再開のお知らせ(2026年5月)
出荷調整が長期化する中、医療機関は独自の運用ルールを設けることを余儀なくされました。代表的な対応が「患者個別管理への切り替え」です。 ある病院では2024年11月21日よりリパクレオンカプセルのオーダーを原則中止とし、治療上の必要性が特に高い患者のみ薬剤部への連絡を経て処方可能とする運用を開始しました。
参考)https://www.gifu-upharm.jp/di/dinews/oshirase2024_50.pdf
医療機関で行われた主な在庫管理策は以下のとおりです。
対応が遅れた薬局や医療機関では、患者が「薬がない」という状況に直面し、クレームや受診先変更が発生した事例も報告されています。在庫の偏在防止が出荷調整期間中に最も重要な課題でした。
岐阜大学薬学部:リパクレオンカプセルの供給制限に伴う対応について(PDF)
出荷調整期間中、リパクレオンの実質的な代替薬は国内に2種類しか存在しませんでした。 ベリチーム顆粒とマックターゼ配合錠です。選択を誤ると患者の栄養状態が悪化するため、正確な特性把握が必要です。
| 項目 | リパクレオン顆粒300mg | ベリチーム顆粒 | マックターゼ配合錠 |
|---|---|---|---|
| 主成分 | パンクレリパーゼ(豚膵臓由来) | 複合消化酵素 | |
| 適応 | 膵外分泌機能不全の補充 | 消化異常症状の改善 | |
| 薬価 | 56.4円/包 | 21円/g | 5.7円/錠 |
| 服薬タイミング | 食直後 | 食後 | 食直後 |
| 剤形 | 腸溶性顆粒 | 顆粒 | 錠剤 |
| 一包化 | 不可(吸湿性) | 要確認 | 可 |
注目すべき点があります。リパクレオンは腸溶性製剤として胃酸による酵素失活を防ぐ設計になっており、膵外分泌機能が著しく低下した患者に特化した処方設計です。 ベリチームとマックターゼはこの腸溶性コーティングを持たないため、重症の膵外分泌機能不全患者では治療効果が十分に発揮されないケースがあります。
マックターゼは薬価が最も安価(5.7円/錠)で、錠剤のため高齢者や認知機能が低下した患者でもコンプライアンスを保ちやすいというメリットがあります。 一方、ベリチームは嚥下機能に問題がある患者への顆粒溶解投与が可能という利点があります。患者の状態に合わせた選択が条件です。
リパクレオン代替薬選択肢と供給不足対策(2025年6月更新)
出荷調整期間中、代替薬に切り替えたにもかかわらず「効果が出ない」として適応外の量を増量するケースが一部で問題になりました。意外ですね。
リパクレオンとベリチーム・マックターゼの間には、適応そのものに根本的な差があります。 リパクレオンは「膵外分泌機能不全」に対する補充療法として承認されていますが、ベリチームとマックターゼの適応は「消化異常症状の改善」です。つまり、重症の膵外分泌機能不全患者では、どれだけ増量しても代替薬では適応外の使用となる可能性があります。
医療従事者が特に注意すべきポイントを整理します。
アレルギーリスクにも注意が必要です。リパクレオンは豚膵臓由来であり、豚蛋白質に対する過敏症の既往がある患者は禁忌ですが、代替薬への切り替え時も同様の確認が求められます。 副作用として腹痛・下痢・便秘・吐き気が1〜5%未満の頻度で報告されており、切り替え後の初期モニタリングが重要です。
今回の出荷調整は約2年間続きました。これが基本です。医薬品の安定供給問題は一過性ではなく、構造的な課題です。厚生労働省の調査では、2022年時点で3,000品目以上の医療用医薬品が供給不足の影響を受けていることが報告されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/000869891.pdf
リパクレオンの事例を踏まえて、医療機関が整備すべき対応策を以下にまとめます。
🔍 事前の情報収集体制
📦 在庫管理の最適化
🔄 代替薬の事前登録
今回のように通常出荷再開後も、製造ラインの適格性評価などで再度遅延が発生するリスクはゼロではありません。 再発時に慌てないための「代替薬切り替えSOP(標準作業手順書)」を整備しておくことが、現場への影響を最小化する最善策といえます。
参考)https://ims.gr.jp/meirikaichuo/concerned/parts/pdf/pharmacis/dinews_2512/03.pdf
厚生労働省:医療用医薬品の供給不足に係る対応について(PDF)
DSJP:リパクレオン供給状況データベース(最新情報確認用)
【第3類医薬品】チョコラBBプラス 180錠