カプセルを砕いて飲ませると、あなたが期待する効果はほぼ消えてしまいます。

膵外分泌機能不全(EPI)とは、膵臓から十二指腸へ分泌されるべき消化酵素が欠乏し、脂肪・蛋白質・炭水化物の消化吸収が障害される病態です。 慢性膵炎の非代償期、膵切除後、膵嚢胞線維症などが代表的な原疾患に該当します。
参考)リパクレオンカプセル|薬剤師求人・転職・派遣ならファルマスタ…
脂肪便・下痢・体重減少が主な症状で、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収障害も生じます。これは骨粗鬆症や凝固障害のリスクになるため、見落とされがちな合併症として注意が必要です。
栄養障害が進行するとQOL低下だけでなく、感染症リスクが増大するとも報告されています。 つまり早期の酵素補充がそのまま予後改善につながるということです。
リパクレオンカプセル150mgは、ブタ膵臓由来の高力価パンクレアチン製剤です。 1カプセル中にリパーゼ10,000〜16,000 FIP単位、アミラーゼ8,500〜15,000 FIP単位、プロテアーゼ560〜990 FIP単位を含有します。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=2331007D1029
日局パンクレアチンと比較した場合、単位重量あたりのリパーゼ活性は約8.4倍、プロテアーゼは約7.0倍、アミラーゼは約6.5倍という高力価が特徴です。 これは少ない服薬量で十分な消化酵素活性を得られることを意味します。
製剤の核心は腸溶コーティングにあります。カプセル本体は胃到達後に溶解し、中の顆粒が胃内に拡散します。この顆粒は腸溶剤皮でコーティングされているため、pH1の強酸環境でもリパーゼ残存活性が97.7%維持されます。 胃内では失活せず、pH5.5の十二指腸環境で45分以内に90%以上の酵素が遊離する設計です。
顆粒径が1.0〜1.2mmという点もポイントです。それが条件です。同じ腸溶製剤でも顆粒径1.8〜2.0mmの製剤と比べ、幽門通過が格段に速く、食物と一緒に十二指腸に排出されやすい設計になっています。
参考:ヴィアトリス製薬による詳細な製品情報概要(製剤設計・臨床試験データ・副作用一覧を含む)
リパクレオン総合製品情報概要(ヴィアトリスeチャンネル)
国内第Ⅲ相比較試験(S245.3.122試験)では、慢性膵炎または膵切除による膵外分泌機能不全患者96例を対象に、プラセボ対照二重盲検試験が実施されました。
| 投与群 | 脂肪吸収率変化量 | 脂肪吸収率80%達成例 |
|---|---|---|
| プラセボ群(n=30) | +12.6% | 16.7%(5/30例) |
| 900mg/日群(n=31) | +26.4%(p=0.003) | 41.9%(13/31例) |
| 1,800mg/日群(n=32) | +31.4%(p=0.001) | 51.5%(17/33例) |
脂肪吸収率80%を達成した患者は「健康成人に近い状態」と評価されます。 日本人健康成人の脂肪吸収率は概ね90%以上と推測されているためです。
便重量・便回数・便中脂肪排泄量もプラセボ群と比べ有意に改善されました。 1日の便重量は1,800mg/日群で161.6gの減少という具体的な改善が確認されています。これは、大きめのリンゴ1個分(約150〜180g)に相当する便重量の削減です。
さらに52週間の長期投与試験では、BMI・アルブミン・プレアルブミン・総コレステロールなどの栄養評価指標が投与4週後から有意に改善し、その改善が52週を通じて維持される傾向がみられました。 長期投与で効果が維持されるということですね。
標準用法・用量は、パンクレリパーゼとして1回600mg(リパクレオンカプセルでは4カプセル相当)を1日3回、食直後に経口投与です。 患者の状態に応じて増減が認められており、膵嚢胞線維症では体重・食事量をもとに個別設定が必要です。
参考)http://fukuokashi-yakkyoku.info/wp-content/uploads/2014/10/20120630.pdf
「食直後」が絶対条件である理由は、製剤設計に直結しています。顆粒が食物と同時に胃から十二指腸へ排出されることで、消化酵素が食物と接触するタイミングが合います。食前や食後間隔をあけて服用すると、食物とのタイミングがずれ、酵素が無駄になります。これが基本です。
また、カプセルや顆粒を砕いたり噛み砕いたりすることは絶対に避けなければなりません。 腸溶コーティングが破壊されると次の2つの問題が生じます。
吸湿にも要注意です。本剤は湿気により酵素活性が低下するため、服用直前まで必ずPTPシートから取り出さないよう患者指導が求められます。
参考:薬剤師向けのDI情報としてQ&A形式でまとめられた詳細な解説
リパクレオンカプセル DI解説(38-8931.com)
国内臨床試験において、安全性評価149例中64例(43.0%)で副作用が報告されています。 重大な副作用はないとされていますが、発現頻度の高い副作用を把握しておくことは適切な患者フォローに直結します。
特筆すべき点として、高血糖・糖尿病が副作用として報告されています。 膵外分泌機能不全患者には膵内分泌機能障害(糖尿病合併)が多いことを考えると、投与中の血糖管理は重要です。52週長期試験では56.3%(45/80例)に糖尿病の合併症が認められていました。
参考)リパクレオン顆粒300mg分包 他の添付文書・薬価・薬剤評価…
また、海外において膵嚢胞線維症の患者が高用量のパンクレアチン製剤を使用した場合に、回盲部および大腸の狭窄(線維化性結腸疾患)が報告されています。 膵嚢胞線維症の患者では1日体重1kgあたり150mgを超えた用量には特別な注意が必要です。
禁忌は2点のみです。本剤成分への過敏症既往、およびブタ蛋白質への過敏症既往が該当します。 宗教的・食事制限的理由でブタ由来成分を忌避する患者には事前確認が欠かせません。
さらに極めて高用量では、プリン体含有の影響で高尿酸尿症・高尿酸血症のリスクが海外で報告されています。 痛風・高尿酸血症を合併する患者への投与では用量に注意が必要です。
参考)https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/1458.pdf
参考:ケアネットによる添付文書ベースの詳細情報(副作用・作用機序・注意事項)
リパクレオンカプセル150mg 効能・副作用(ケアネット)
医療従事者でも見落とされがちなのが、PPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2ブロッカーとの組み合わせにおけるpH管理の問題です。これは意外ですね。
リパクレオンの腸溶コーティングはpH5.5の十二指腸環境で酵素を遊離するよう設計されています。 しかし膵外分泌機能不全患者では重炭酸ナトリウム(膵液由来のアルカリ化因子)の分泌も低下しているため、十二指腸内のpHが正常より低くなりやすい傾向があります。
この状態ではリパクレオンからの酵素遊離が遅延・不十分になる可能性があります。そのため欧米のガイドラインでは、PERT(膵酵素補充療法)を行っても症状が改善しない場合に、PPIの併用を検討することが推奨されています。
リパクレオンの国内承認試験においても、胆汁酸製剤の併用有無による脂肪吸収率への有意差は認められていません。 つまり胆汁酸製剤の上乗せは必ずしも必要ではないということです。
一方、制酸薬を併用して十二指腸pH環境を整えることは、酵素の遊離を促進するうえで理論的な根拠があります。投与量を増量しても症状コントロールが不十分な患者では、この視点が解決の糸口になることがあります。
参考:KEGGによるリパクレオン医薬品情報(承認番号・薬価・用法詳細)
リパクレオン医薬品情報(KEGG MEDICUS)
強ミヤリサン 錠 330錠 [指定医薬部外品]