オグサワ処方に増量で使っていると、クラブラン酸が過剰になって下痢リスクが3倍以上に跳ね上がります。
参考)オーグメンチンとサワシリンの併用(オグサワ処方) - 薬局薬…

オグサワ処方とは、オーグメンチン配合錠(CVA/AMPC)とサワシリン(AMPC単独)を同時に処方する治療戦略です。 名称は「オーグメンチン」と「サワシリン」の頭文字を組み合わせたもので、医療現場での通称として広く使われています。
参考)【オグサワ処方】オーグメンチンとサワシリンを併用する理由【A…
オーグメンチン配合錠250RSには、1錠あたりアモキシシリン(AMPC)250mgとクラブラン酸カリウム(CVA)125mgが含まれています。 つまり配合比はAMPC:CVA=2:1の設計です。これは国際基準(7:1や14:1など)と比べてCVAの比率が高い、日本独自の製剤仕様です。
参考)https://gifu-min.jp/midori/document/576/naihukusiyou.pdf
標準的なオグサワ処方の用量は以下の通りです。
つまり核心はここです。 AMPC:CVA比を4:1に調整することが目的です。 オーグメンチンを単独で増量(1日6〜8錠)するとCVAも比例して増加し、消化器系副作用(特に下痢)のリスクが大幅に上昇します。サワシリンを追加することで、CVAを増やさずにAMPCだけを高用量にする設計が成立します。
オーグメンチンとサワシリンの配合比・用量についての薬剤師解説(薬局薬剤師の勉強日誌)
なぜ通常量の2倍近いAMPCが必要なのでしょうか?
JAID/JSC感染症治療ガイドラインでは、市中肺炎や急性副鼻腔炎における主要起因菌(肺炎球菌・インフルエンザ菌)に対して、AMPC 1500〜2000mg/日を第一選択として推奨しています。 サワシリンの添付文書上の通常用量は750〜1000mg/日であり、ガイドライン推奨量はその1.5〜2倍に相当します。
参考)オグサワ処方について〜アモキシシリンを重複させる理由〜【ファ…
これには明確な薬力学的理由があります。アモキシシリンはtime-dependent(時間依存性)抗菌薬であり、MIC(最小発育阻止濃度)を上回る血中濃度を維持する時間(%T>MIC)が殺菌効果を決定します。 AMPC量が多いほど%T>MICが延長します。 高用量投与がそのまま治療効果の向上に直結するのです。
これが条件です。起因菌の耐性パターンに応じた用量設計が治療成否を左右します。
参考)オグサワ処方がオーグメンチンとサワシリンを併用する理由
感染症治療ガイドライン記載のCVA/AMPCの推奨用量・投与例(pharmyuki)
すべての症例で同じ用量でいいんでしょうか? 実は臨床では複数のパターンが使われています。
基本の「3錠+3Cp(分3)」以外にも、重症度・腎機能・対象疾患に応じた用量調整が行われます。
| パターン | オーグメンチン | サワシリン | AMPC総量/日 | 主な対象 |
|---|---|---|---|---|
| 標準型 | 3錠 分3 | 3Cp 分3 | 1500mg | 市中肺炎・副鼻腔炎(中等症) |
| 強化型 | 3錠 分3 | 6Cp 分3 | 2250mg | 中等症〜重症・耐性菌リスク高 |
| 軽症型 | 2錠 分2 | 2Cp 分2 | 1000mg | 軽症・高齢者・外来初期治療 |
AMPC総量1500〜2250mg/日を狙う設計が多く、中等症以上の副鼻腔炎・肺炎などでは上限側を目指すことが一般的です。 耳鼻科医によっては「オーグメンチンで下痢が出やすい患者にはアモキシシリン倍量で代替する」ケースも報告されており、CVAへの忌避が用量設計を変える要因になることがあります。
参考)オグサワ処方はなぜ使う?2剤併用の理由と使い分けを解説
腎機能低下例ではAMPCのクリアランスが低下するため用量の減量を検討します。 eGFR 30未満では投与間隔延長または1回量の調整が必要です。 また小児への使用では、体重あたりの用量計算(AMPC 40〜90mg/kg/日)が基本となり、成人向け処方をそのまま応用できない点に注意が必要です。
参考)https://hokuto.app/antibacterialDrug/78MHz8ClBxkmNf7x1mch
適応疾患によって用量の考え方も変わります。
オグサワ処方が特に力を発揮するのは、グラム陽性菌とグラム陰性菌の混合感染、またはβ-ラクタマーゼ産生菌と非産生菌の共存が疑われる病態です。
参考)https://medical.kameda.com/general/medical/assets/41.pdf
これは使えそうです。疾患ごとのAMPC必要量を把握しておけば、処方見直しの際の疑義照会の判断も明確になります。
参考)オグサワ処方に疑義照会は必要? オーグメンチンとサワシリンの…
亀田総合病院・感染症内科作成のオーグメンチン/アモキシシリン適応疾患と代替薬一覧(PDF)
実はここが一番の盲点です。
JAID/JSCガイドラインでCVA/AMPC「1回2錠・1日3〜4回」(添付文書最大4錠/日を超える高用量)が推奨されていますが、現時点ではこの用量は保険適用外です。 オグサワ処方で実現する高用量AMPC(1500mg/日超)も同様に、添付文書の「通常成人は1日750〜1000mg」という記載を超える投与となります。
これは厳しいところですね。処方箋を受け取った薬剤師が疑義照会を行うケースが発生する一因になっています。
この問題への現実的な対応として以下が行われています。
保険審査の動向は施設・地域により異なります。 処方前に薬剤部・事務との情報共有が条件です。 特に在宅患者・高齢者への処方では、調剤薬局との事前連携が疑義照会を減らす実践的なアプローチになります。
オグサワ処方に疑義照会は必要か?薬剤師視点での解説(MR・病院薬剤師向けブログ)
HokutoアプリによるAMPC/CVA(オーグメンチン)の保険用量と実臨床用量の注意点
| 年齢 | 1日量(mg) | 散剤50%換算(g) | 1回量の目安(3回分割) |
|---|---|---|---|
| 〜1歳 | 75〜200 | 0.15〜0.4 | 0.05〜0.13g |
| 2〜3歳 | 150〜350 | 0.3〜0.7 | 0.1〜0.23g |
| 4〜6歳 | 250〜650 | 0.5〜1.3 | 0.17〜0.43g |
| 7〜14歳 | 400〜1,000 | 0.8〜2.0 | 0.27〜0.67g |
| 15歳〜 | 750〜2,000 | 1.5〜4.0 | 0.5〜1.33g |