かかりつけ医いない割合と日本の現状と課題

かかりつけ医いない割合がどの程度存在し、その背景やリスク、医療政策の動きと現場での工夫を踏まえ、どう向き合うべきなのでしょうか?

かかりつけ医いない割合とそのインパクト

かかりつけ医いない割合と日本の現状
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かかりつけ医の有無と割合

全国調査から、かかりつけ医がいる人・いない人の割合と、その変化の傾向を概観し、地域差や年代差も押さえます。

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かかりつけ医いないことのリスク

受診遅れ、重症化リスク、多剤処方など、医療安全・医療資源の観点からの具体的な影響を整理します。

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現場でできる工夫と制度動向

かかりつけ医機能評価や地域医療構想などの制度と連動しながら、現場の医療従事者が取り得る実践的なアプローチを紹介します。


かかりつけ医いない割合の最新データと推移



かかりつけ医いない割合を把握するには、「いる人」の割合とセットで見る必要があります。厚生労働省の患者調査では、外来患者で「かかりつけ医師がいる」と答えた人が約6割(64.1%)と報告されており、逆に「いない」層が4割程度存在する構図が示されています。


参考)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jyuryo/00/kekka-2.html
日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の「日本の医療に関する意識調査」では、「かかりつけ医がいる」が56.9%、「いない」が26.6%、「いないがいるとよいと思う」が15.7%とされており、「いない」+「いないがいるとよい」を合わせると4割を超える結果になっています。


参考)「かかりつけ医」いる56.9%、日医総研調べ - CBnew…
興味深いのは、日医総研が2017年・2020年・2022年と継続して調査しているにもかかわらず、かかりつけ医がいる割合は一貫して55%台にとどまり、コロナ禍を経ても急激な増減が見られなかった点です。必要性が議論されながらも、実際の受療行動レベルでは構造的な変化が起きていない可能性を示唆しています。


参考)https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20201007_4.pdf
また、かかりつけ医いない理由として、「あまり病気にかからないので必要ない」が約7割、「その都度医療機関を選ぶ」が約26%、「どのような医師が適しているか分からない」が約22%と報告されており、健康観・情報不足・医療機関選択の自由度など複合的な要因が背景にあることがわかります。



Aichi県の医療計画関連資料では、県民のかかりつけ医の有無を把握するための現状調査が行われており、地域医療構想の中で「かかりつけ医機能の強化」が重要なテーマとして位置づけられています。


参考)https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/478099.pdf
Fukui県など一部自治体の資料でも、地域包括ケアと連動したかかりつけ医の役割が強調されており、高齢化が進む地域ほど「かかりつけ医いない割合」を減らすことが政策目標に近い位置づけになっている点は、医療従事者にとって重要な背景情報です。


参考)https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/iryou/iryoujouhou/7ji-iryoukeikaku_d/fil/yonnbu.pdf


かかりつけ医いない患者像と受診行動の特徴

かかりつけ医いない患者像を具体的にイメージするうえで、日医総研調査の「いない理由」は参考になります。「あまり病気にかからないので必要ない」と回答した層は、若年〜中年で比較的健康な人が多いと考えられ、受診は急性期症状のときのみ、近隣のクリニックや救急外来を選ぶ傾向が推測されます。


「その都度医療機関を選ぶ」と回答した層は、インターネット検索や口コミ、勤務先・学校周辺のアクセスなどを重視して受診先を決める「自由選択型」で、医療機関との関係性が継続しないため、検診や慢性疾患のフォローアップが断続的になりやすい点が臨床的なリスクとなります。


「どのような医師が適しているか分からない」とする回答は、医療情報リテラシーの問題だけでなく、専門と一般診療の境界が分かりにくい、医療機関同士の役割分担が患者側に見えづらいといった構造的要因も含んでいる可能性が指摘されています。この層は、症状が多岐にわたる場合に医療機関を転々とし、結果的にポリクリニック化・多剤処方のリスクを高めることがあります。



このような患者像を前提にすると、医療従事者側は「疾患ベース」だけでなく「受診行動ベース」で患者を捉え、どの層がかかりつけ医いない状態に陥りやすいかを念頭に置いた地域連携・紹介の動線設計が必要になります。


日医総研「日本の医療に関する意識調査」の概要。かかりつけ医の有無や理由の詳細データを確認する際に有用。


かかりつけ医いないことによる医療安全・医療資源への影響

かかりつけ医いない割合が高い地域では、軽症・慢性疾患であっても大病院外来に直接受診するケースが増え、結果的に三次救急や急性期病床の外来負荷が高まることが複数の自治体資料で指摘されています。これは、紹介状の有無だけでは把握しにくい「医療アクセス経路」の問題として認識されています。


慢性疾患管理の観点では、かかりつけ医がいない患者ほど定期受診の間隔が不安定になりやすく、糖尿病・高血圧など生活習慣病のコントロール不良期間が長くなることで、脳心血管イベントや腎障害などの合併症リスクが上昇する可能性があります。これは大規模コホート研究でも、継続的なプライマリケアとアウトカム改善の関連が示されており、日本の状況とも方向性は一致しています(例:Starfieldらプライマリケア研究などのレビュー)。
薬剤安全の面では、複数の医療機関をその都度受診する患者では、薬剤情報が分散しやすく重複処方や相互作用の見逃しにつながりやすいことが、ポリファーマシー関連の報告で繰り返し指摘されています。かかりつけ医いない場合、電子カルテや薬剤情報提供書での情報連携が唯一のセーフティネットとなることが多く、情報システムの整備と薬剤師の介入の重要性は相対的に高まります。


興味深い視点として、「あまり病気にかからないので必要ない」と回答した層は、一見リスクが低そうに見えますが、突然の重症イベント(心筋梗塞、脳卒中など)時にプライマリケア医が存在しないため、救急搬送後の退院支援・在宅移行で支援が途切れやすいという報告もあります。特に地域包括ケアシステムでは、かかりつけ医がハブとなる想定が多いため、この層の「かかりつけ医いない割合」は、ポストアキュート期のケア断絶要因として看過できないポイントです。


医療資源の観点では、「その都度医療機関を選ぶ」層が増えることで、平日日中の外来受診が特定の時間帯・特定の医療機関に集中し、待ち時間の増大やスタッフ負荷の偏在を招くことも報告されています。クリニック側から見ると、かかりつけ化していない一見リピーター患者が増えることで、問診・情報収集に毎回時間がかかり、結果として診療密度が下がるという、あまり知られていない影響もあります。


厚生労働省「患者調査」かかりつけ医師の状況。外来・入院別のかかりつけ医有無の割合を確認できる。


かかりつけ医いない割合と政策・制度上の位置づけ

かかりつけ医いない割合の高さは、単に個人の選好の問題ではなく、政策的な課題として認識されています。日医総研は意識調査結果を踏まえ、「かかりつけ医機能の評価・明示」「住民への情報提供」の必要性を提言しており、かかりつけ医の役割を明確化することで、「どのような医師が適しているか分からない」層の不安・迷いを減らすことを狙っています。


地域医療構想の文脈では、Fukui県などの資料で「かかりつけ医機能の強化」が高齢者の在宅療養支援・慢性疾患管理のキーとして位置づけられ、退院時連携や在宅医療の推進とセットで議論されています。このなかで、かかりつけ医いない割合をどう減らしていくかが、地域包括ケア実現の前提条件として扱われるようになってきています。


Aichi県の現状調査では、「かかりつけ医に関する認知度や利用状況」を把握すること自体が施策立案の入り口となっており、医師会・行政・医療機関が協働して「かかりつけ医機能を担う医療機関」を住民にわかりやすく提示する取り組みが検討されています。これは、患者側にとっての「見える化」によって、かかりつけ医いない状態からの移行を促す試みとも言えます。



政策面であまり知られていないポイントとして、かかりつけ医機能は「診療所医師」に限らず、病院外来や専門医が地域でプライマリケア的役割を担うケースも含めて議論されていることがあります。特に地方部では、病院勤務医が実質的なかかりつけ医となっている事例が少なくなく、制度上の枠組みと現場の実態にギャップが生じていることが、自治体の医療計画資料から読み取れます。


日医総研の意識調査では、「かかりつけ医」の定義として「日頃病気について診てもらったり相談などする医師」と説明した上で回答を求めていますが、患者がイメージする「かかりつけ医」は必ずしもプライマリケア専門医とは限らず、皮膚科・整形外科など特定領域の専門医を指している場合もあり、この点が制度設計と実際の受療行動の乖離要因になっている可能性があります。



内閣府「医療のかかり方・女性の健康に関する世論調査」概要。かかりつけ医の認知や利用に関する国民意識を確認できる。


かかりつけ医いない患者への現場での支援と工夫(独自視点)

かかりつけ医いない割合が一定程度存在することを前提にすると、医療従事者が取り得る現場の工夫は大きく二つの方向に整理できます。一つは、「受診のたびにミニかかりつけ化を試みる」アプローチで、初診・再診を問わず、患者の受診パターン・生活背景・服薬状況を簡潔に把握し、その場で「困ったときはまずここに相談してほしい」というメッセージを明確に伝えることです。これは、患者の自由選択を尊重しつつ、自然な形でかかりつけ医機能を提供する試みと言えます。
二つ目は、医療情報システムと地域連携の活用です。電子カルテ・レセプト・地域医療連携室の情報を通じて、複数の医療機関を受診している患者を把握し、必要に応じて地域の「かかりつけ候補」としてふさわしい医療機関に緩やかに誘導する仕組みを整えることが考えられます。特に高齢者や多疾患併存患者では、薬剤情報や検査結果の一元管理の観点から、かかりつけ医いない状態を長期化させないことが医療安全上重要です。


独自視点として重要なのは、「かかりつけ医を持たないことが合理的なケース」も一部存在するという点です。たとえば、特定の希少疾患で大学病院の専門外来に長期フォローされている患者では、一般的なプライマリケア機能の多くを専門医チームが担っており、形式的にかかりつけ医を設定することが必ずしも患者利益につながらない場合があります。このようなケースでは、専門外来がかかりつけ医機能を担う前提で、地域の診療所や薬局と情報共有し、いざというときの相談窓口を多層的に用意することが重要です。
また、ITリテラシーの高い患者の中には、セルフモニタリングやオンライン診療、健康アプリなどを活用し、分散した医療資源を自ら統合する形で受診行動を組み立てている層もいます。こうした「分散型受療モデル」を否定するのではなく、安全性と継続性の観点からどこか一箇所に情報のハブを置くことを提案するのが、現場の医療従事者として現実的なスタンスと言えるでしょう。


最後に、医療従事者自身が「自分のかかりつけ医いない割合」をどう捉えるかも示唆的です。医療職は自己診療や同僚相談に頼りがちで、形式的なかかりつけ医を持たないケースが少なくありません。この構造を自覚したうえで、患者にかかりつけ医の重要性を伝える際に、「自分ならどう動くか」という視点を重ねることで、より納得感のある説明や提案につながる可能性があります。


CBnewsマネジメント「『かかりつけ医』いる56.9%、日医総研調べ」。かかりつけ医の有無や理由、経年変化に関する詳細な解説がまとまっている。


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