
アテノロールの先発品は、太陽ファルマが販売するテノーミン錠25およびテノーミン錠50である。有効成分はいずれもアテノロールであり、心臓選択性β1受容体遮断作用を主作用とする。国内で流通するアテノロール製剤を確認する際、「アテノロール錠○mg『メーカー名』」という販売名の製剤は原則として後発医薬品であり、テノーミンが先発医薬品に位置付けられる。テノーミン錠25・50はいずれも先発品として薬価収載されている。
| 項目 | テノーミン錠25 | テノーミン錠50 |
|---|---|---|
| 有効成分量 | アテノロール25mg/錠 | アテノロール50mg/錠 |
| 通常成人投与量 | 2錠を1日1回 | 1錠を1日1回 |
| アテノロール換算量 | 50mg/日 | |
| 添付文書上の最大量 | 4錠、100mg/日 | 2錠、100mg/日 |
両規格は、通常用量では同じアテノロール50mgを1日1回投与する設計である。したがって「25mg製剤から50mg製剤へ変更する」場面では、錠数のみではなく、1日総投与量が維持されているかを必ず確認する。例えばテノーミン錠25を2錠からテノーミン錠50を1錠へ変更する場合は等量切替となる一方、25mg 1錠から50mg 1錠への変更は倍量化である。
アテノロールは処方箋医薬品であり、単に銘柄を確認するだけでは不十分である。規格、1回量、投与回数、腎機能、脈拍、併用薬を一体で確認することが安全な処方監査につながる。テノーミンの電子添文では、錠25は通常2錠、錠50は通常1錠を1日1回経口投与し、最高量はいずれもアテノロールとして100mgを1日1回と定めている。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00050120.pdf
先発品の添付文書、患者向医薬品ガイド、インタビューフォームなどの最新資料はPMDAの医療用医薬品添付文書等情報検索で販売名または一般名から確認できる。剤形や外観、添加剤、改訂履歴を確認したいときにも有用である。
PMDA 医療用医薬品 添付文書等情報検索
テノーミンの効能又は効果は、本態性高血圧症(軽症~中等症)、狭心症、頻脈性不整脈(洞性頻脈、期外収縮)である。β1受容体遮断により心拍数、心収縮力、心拍出量を抑制し、降圧作用と心筋酸素需要の低下をもたらす。狭心症では心筋酸素消費量を下げることが臨床上の基本的な位置付けとなる。
ただし、「心臓選択性」はβ1受容体に対して相対的に選択性が高いことを意味する。β2受容体への作用が完全にないという意味ではない。用量増加時や感受性の高い患者では、気管支攣縮、末梢循環への影響、糖代謝異常時の症状修飾といったβ遮断薬共通の問題を念頭に置く必要がある。
特に重要なのは、アテノロールが不整脈そのものを根治する薬剤ではなく、洞性頻脈や期外収縮などに伴う症状・心拍数をコントロールする目的で使われる点である。動悸を訴える患者では、脈拍数だけでなく、発熱、脱水、貧血、甲状腺機能亢進、疼痛、不安、薬剤性など、頻脈の誘因を見落とさない。β遮断薬で脈拍が低下しても、背景病態が未評価であれば治療の妥当性は担保されない。
また、褐色細胞腫患者ではα遮断剤による初期治療後にアテノロールを投与し、常にα遮断剤を併用することが添付文書に明記されている。β遮断を先行させると、α受容体刺激が相対的に優位となり、血圧上昇を助長するおそれがある。この注意は一般的な高血圧治療では目立ちにくいが、薬理学的に重要な処方確認ポイントである。
参考)https://www2.astrazeneca.co.jp/revise/revdisp.asp?revision_no=106
後発品は、先発品と同一の有効成分、含量、剤形、効能又は効果を基本として承認される医薬品である。アテノロール錠25mg・50mgにも複数の後発医薬品が存在し、生物学的同等性試験等に基づいて先発品との同等性が評価されている。後発品のインタビューフォームには、規格及び試験方法、安定性試験、生物学的同等性試験を実施したことが記載されている。
参考)https://med.sawai.co.jp/file/pr22_245.pdf
一方、先発品と後発品で必ず同一とは限らない項目もある。切替時は、有効成分量だけではなく、製剤ごとの添加剤、錠剤の大きさ・色・識別性、フィルムコーティング、PTPシート表示、供給状況、患者の服薬しやすさを確認する。嚥下機能が低下している患者、視力低下がある患者、複数のβ遮断薬を服用している患者では、外観変化が服薬エラーの引き金になり得る。
後発品への変更を「同じ成分だから確認不要」と扱うのは適切ではない。治療効果の中心は有効成分で比較できるが、日常診療における安全性は、患者が正しい規格を正しい錠数で飲めるかという運用面にも左右される。とくにアテノロールは1日1回投与であるため、飲み忘れ時に自己判断で翌日に倍量服用する例がないか、服薬指導で確認する意義がある。
アテノロールを含むβ遮断薬では、徐脈、房室ブロック、低血圧、心不全増悪、めまい、倦怠感、四肢冷感などに注意する。添付文書では、気管支喘息、気管支痙攣のおそれがある患者、うっ血性心不全のおそれがある患者、糖尿病患者、末梢循環障害患者などに対する注意事項が示されている。
服薬後の「だるい」「息切れがする」「ふらつく」という訴えを加齢や原疾患に帰属させず、脈拍、血圧、体重変動、浮腫、心電図所見、併用薬を確認する。アテノロールの開始・増量後であれば、薬剤性の徐脈や循環抑制を鑑別に挙げるべきである。添付文書では、徐脈又は低血圧の症状が現れた場合、減量又は中止、必要に応じたアトロピン使用が示されている。
参考)テノーミン錠の添付文書の使用上の注意を改訂しました。併せて新…
併用薬では、ベラパミル、ジルチアゼムなどの心機能抑制作用を有する薬剤、ジゴキシン、抗不整脈薬などとの併用時に、徐脈や房室伝導抑制が増強し得ることを意識する。降圧薬との併用では過度の血圧低下に注意する。糖尿病治療薬を使用している患者では、低血糖時の頻脈・動悸といった交感神経症状が現れにくくなる可能性があり、発汗、振戦、意識変容なども含めた低血糖教育が重要となる。
重要なのは、自己判断での急な中止を避けることである。β遮断薬の突然の中止では、反跳性の頻脈、血圧上昇、狭心症症状の悪化につながる可能性がある。中止または減量が必要な場合には、病態とリスクを評価しながら漸減を検討する。患者が「脈が遅いから今日は飲まない」と自己調整していないかを、薬局・外来で具体的に尋ねることが望ましい。
アテノロールで意外に重要なのは、肝代謝よりも腎排泄の影響を受けやすいという点である。健康成人に経口投与した場合、尿中および糞中から投与量のそれぞれ約50%が回収されたとの資料があり、腎機能低下時には体内曝露が増加し得る。
テノーミンの電子添文では、重篤な腎障害患者において、クレアチニン・クリアランス値または糸球体ろ過値が35mL/分以下の場合、投与間隔を延長するなど慎重に投与するよう記載されている。処方監査では、単に「腎障害あり」と把握するのではなく、直近のeGFR、血清クレアチニン、年齢、体格、透析の有無、脈拍および血圧を確認し、蓄積による過度のβ遮断が疑われないかを評価する。
透析患者では、一般的な成人用量をそのまま当てはめることはできない。腎機能別投与量の資料には、血液透析後にアテノロール25mgを週3回投与する提案などが掲載されているが、これは一律の自己適用を目的とした数値ではない。透析条件、残腎機能、心拍数、適応疾患、他の降圧薬・抗不整脈薬との併用を踏まえ、処方医と連携して個別に設計する必要がある。
参考)https://www.gobyou.com/wp-content/uploads/2021/01/406e320cba4f1311c0b0c29aff287e76.pdf
この腎機能確認は、後発品への変更時にも変わらない。銘柄変更が処方箋上の主題に見えても、実際には「アテノロール50mgを継続して安全に使える腎機能か」を再評価する好機となる。患者が高齢で、食欲低下、下痢、発熱、利尿薬増量などによって一時的に腎機能が悪化している場合、従来どおりの用量でも徐脈・低血圧が顕在化することがある。
腎機能低下時の薬物投与設計に関する専門的な資料では、アテノロールを含む腎排泄型薬剤の注意点が整理されている。添付文書の記載と併せ、患者ごとの臨床所見を用いて判断する際の参考になる。