
アルサルミン(一般名スクラルファート水和物)は、中外製薬が創製し1968年に国内販売を開始した胃炎・消化性潰瘍治療薬で、世界30か国以上で承認されてきた長期収載品です。 国内では胃潰瘍・十二指腸潰瘍や急性胃炎・慢性胃炎急性増悪期の胃粘膜病変改善を効能・効果として位置づけており、長年にわたり「アルサルミン錠」「アルサルミン細粒90%」などの剤形で供給されてきました。
参考)2019年04月01日|胃炎・消化性潰瘍治療剤「アルサルミン…
2019年、中外製薬と富士化学工業の事業譲渡契約により、アルサルミンの国内製造販売承認に係る権利は富士化学工業へ承継されることが合意され、海外向け原薬供給の権利も富士化学が担う体制に移行しています。 事業承継後しばらくの間は安定供給の観点から中外製薬製品を流通させ、製品消尽をもって富士化学工業製品に順次切り替える方針が示されており、供給途絶を避けるための経過措置が取られてきました。
日本国内では、アルサルミンは富士化学工業が製造し日医工が長期収載品として独占販売する体制が構築されており、アルサルミン細粒90%は先発品として位置づけられています。 一方で、医療機関ごとの薬事委員会やフォーミュラリーでは、使用頻度や同種同効薬の存在を踏まえた採用継続・採用中止の判断が進んでおり、「製造中止」と「院内採用中止」の情報が混在しやすくなっている点に注意が必要です。
参考)https://kure-kyosai.kkr.or.jp/item/outpatient_medicalpersonnel_yakujiiinkai20250716.pdf
アルサルミン錠そのものについては、公開情報上「製造中止告知」と明示された公的資料は現時点で限定的ですが、アルサルミン細粒90%に関しては販売中止告知情報がDrug Shortageデータベースなどに掲載されており、剤形単位での供給終了が進んでいます。 「アルサルミン錠 製造中止」という検索ニーズの背景には、こうした事業承継・長期収載品整理・剤形ごとの販売中止といった複数の動きが重なり、「いつまで手配できるのか」「代替薬は何か」といった現場の不安が反映されていると考えられます。
参考)https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=67832
アルサルミンのスクラルファートとしての薬理作用は、胃酸の存在下で粘稠なゲルを形成し胃粘膜に付着することで、潰瘍部を機械的に保護しペプシンや胆汁酸の攻撃から粘膜を遮断する点にあります。これにより潰瘍部位の血流改善や粘液分泌の促進が報告されており、他の酸分泌抑制薬とは異なる機序で粘膜保護に寄与してきました。アルサルミンのインタビューフォームや基礎・臨床研究では、この付着性と局所作用が特長として繰り返し言及されています。
アルサルミン インタビューフォーム(薬理・臨床データ)
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=2329008C1097
アルサルミン細粒90%については、Drug Shortage情報などで「販売中止」のステータスが明示されており、バラ500g包装などの供給終了が告知されています。 告知日が2026年3月5日、実施日も2026年3月とされており、在庫消尽をもって市場から順次姿を消す形で流通が整理されていると解釈できます。 こうした販売中止情報は、医療機関側では「製造中止」とほぼ同義に扱われることが多く、処方変更や代替薬選択が急務となるケースが増えています。
参考)https://drugshortage.jp/list-sub.php?sub=2329008C1135
一方、細粒と液剤の位置づけに関して、院内フォーミュラリーではスクラルファート(アルサルミン)を粘膜保護剤の院内標準薬として扱いつつ、「アルミニウム脳症・骨症のリスク」や「他剤の吸収阻害・遅延」の可能性に注意を促している事例が見られます。 同フォーミュラリーでは、「顆粒1g→液10mL」など剤形間の換算も示されており、ESD検査セットにおけるアルサルミン内用液の使い分けなど、細粒と液剤の臨床的な役割分担が具体的に提示されています。
薬事委員会資料では、ある共済病院でアルサルミン細粒が「採用中止薬品名」として掲げられており、理由として「使用頻度が低いため」が明記されています。 同じ資料には、スクラルファート内用液や他の胃炎・消化性潰瘍治療薬についても採用中止・継続の判断が記載されており、PPIやH2ブロッカー、レバミピド、プラプレジンク、マーズレンSなどのラインナップ再編とあわせてアルサルミンが整理対象となっている様子がわかります。
こうした院内採用中止の動きは、企業側の「販売中止」「製造中止」と必ずしも同時期には起こらず、例えば企業が在庫消尽を進めている段階で、病院側が先行して採用中止を決めるケースや、逆に企業の販売終了後も院内在庫が残る間は継続扱いとするケースなど、タイミングに差が生じます。 このため、「アルサルミン錠 製造中止」という表現で検索しても、実際には細粒90%や院内採用中止の情報がヒットし、剤形やレベル(企業・院内)の違いを丁寧に読み解く必要があります。
参考)https://www.nichiiko.co.jp/medicine/files/o-BL1812-03.pdf
長期収載品全体としては、薬価制度の見直しや後発医薬品の普及を背景に、企業が採算性の低い長期収載品のラインアップを見直す傾向が強まっており、アルサルミンのような古典的な抗潰瘍薬も例外ではありません。日医工は長期収載品の独占販売権を取得しつつも、製品仕様変更や中止を含めたポートフォリオ再編を公表しており、その一環としてアルサルミン細粒に関する包装変更や販売中止情報が告知されています。 医療従事者としては「錠剤は継続だが細粒は販売中止」「外来では別剤へ切替」「入院ではフォーミュラリーに沿ってスクラルファート内用液に置き換える」など、施設ごとの運用方針を薬剤部と共有しつつ、患者への説明に反映する姿勢が求められます。
アルサルミン錠 製造中止の話題は、現場では「スクラルファート製剤が使えなくなるのなら、どの粘膜保護薬を選ぶべきか」という実務的な問いにつながります。胃粘膜保護薬としては、スクラルファート系以外にもレバミピド(ムコスタ)、プラプレジンク(プロマック)、マーズレンS配合顆粒などが広く用いられており、フォーミュラリーではこれらを同じ治療カテゴリーで整理したうえで「標準薬」を決める動きが進んでいます。
ある市民病院のフォーミュラリーでは、消化性潰瘍治療薬の粘膜保護剤カテゴリーにおいて、レバミピドとプラプレジンク、スクラルファート(アルサルミン)を基本ラインアップとし、マーズレンS配合顆粒を補助的な選択肢として位置づけています。 同資料では、アルサルミンに対して「アルミニウム脳症・骨症等のリスク」や「他剤の吸収阻害・遅延の可能性」への注意喚起が加えられており、腎機能低下患者や多剤併用患者ではレバミピドやプラプレジンクへの切り替えが選択肢となりうることが示唆されています。
Drug Shortageデータベースでは、アルサルミン細粒90%の代替品検索機能が提供されており、スクラルファートを含む同系統薬剤や他社のスクラルファート細粒などが候補に挙げられています。 ケモインフォマティクスベースの医薬品データベース(KEGG MEDICUSなど)でも、アルサルミン細粒90%を先発品とした類似製品一覧が公開されており、スクラルファート細粒90%「ツルハラ」など他社製品との価格比較や剤形一覧が確認可能です。 これらの情報は、院内採用の見直しや個別症例での代替薬選択にあたり、同成分製剤へのスイッチングや別機序の粘膜保護薬への切替を検討する際の参考になります。
代替薬選択においては、以下のような観点が重要になります。
興味深い点として、アルサルミンの一部剤形(細粒・包装形態など)はすでに販売中止が告知されている一方で、スクラルファート内用液や他社スクラルファート製剤は継続採用・代替薬として運用されており、「アルサルミン錠のみが完全に市場から消える」という状況とは異なる複雑な景色が見えてきます。 医療従事者が患者説明を行う際には、「企業としての製造・販売中止」「院内としての採用中止」「同成分・同効薬による代替」などのレイヤーを分けて説明し、「今後もスクラルファート系薬は別ブランドで利用できる可能性がある」ことを丁寧に伝える配慮が求められます。
胃粘膜保護薬全般についての薬理・臨床的な比較は、日本語の総説論文や解説記事も複数存在し、レバミピドによる粘膜防御因子増強作用やプラプレジンクの抗酸化作用、スクラルファートの物理的保護作用など、機序を踏まえた使い分けが議論されています。こうした文献を参照することで、「アルサルミン錠 製造中止」を単なる供給問題として捉えるのではなく、「粘膜保護戦略をどう再設計するか」という臨床的な問いに昇華させることが可能です。
消化性潰瘍治療薬フォーミュラリー(横浜市民病院)
アルサルミン錠 製造中止をめぐる情報は、院内薬事委員会やフォーミュラリーの動きと密接に関連しています。ある共済病院の薬事審議委員会資料では、複数の医薬品が「製造中止のため」「使用頻度が少ないため」といった理由で採用中止となっており、その中にアルサルミン細粒やスクラルファート内用液も含まれています。 同資料では、他の薬効分類の薬剤についても「同種同効薬が多く整理のため」「後発医薬品への切替」などの理由で再編が進んでいることから、アルサルミンもこうした全体的な薬効ラインナップ整理の一環として扱われていることがわかります。
横浜市民病院のフォーミュラリーでは、消化性潰瘍治療薬(H2ブロッカー・PPI・粘膜保護剤)を体系的に整理し、「院内標準薬」を設定することで欠薬時の代替や持参薬への対応方針を統一しています。 粘膜保護剤に関しては、レバミピド、プラプレジンク、スクラルファート、マーズレンSがリストアップされ、アルサルミン(スクラルファート)は標準薬として位置づけつつ、アルミニウム関連リスクと相互作用への注意が強調されています。 こうしたフォーミュラリーの整備は、「製造中止・販売中止」が出た際にも代替薬選択の判断を透明化し、医師・薬剤師間でのコミュニケーションを円滑にするうえで有用です。
実務対応としては、以下のようなステップが考えられます。
あまり知られていない意外な情報として、アルサルミンは消化性潰瘍治療薬としてだけでなく、一部施設ではESD後や放射線治療後の粘膜障害対策など、ガイドライン外の場面で経験的に用いられてきた歴史があります。フォーミュラリー資料にはESD用セットにおけるスクラルファート内用液の割合や組み合わせが記載されている例もあり、「製造中止・販売中止」がこうしたニッチな使われ方に影響を与えうることは、一般的な解説記事にはあまり触れられていません。 こうした現場固有の使い方を把握しておくと、代替薬選択の際に「単に同系統薬に置き換える」だけでなく、「プロトコール全体の見直し」が必要なケースを見逃さずに済みます。
製造・販売中止情報については、企業のプレスリリースや医薬品供給状況データベース、院内薬事委員会資料など複数の情報源が存在するため、医療従事者としては「1つのサイトだけで判断しない」ことが重要です。企業サイトの日医工「製品仕様変更・新発売・中止等のお知らせ」では、アルサルミン細粒90%の包装変更や中止情報が更新されている一方で、Drug Shortageデータベースでは販売中止ステータスと告知日・実施日が整理されており、両者を組み合わせることで時系列や影響範囲をより正確に把握できます。 また、学会誌・総説論文ではスクラルファートの薬理・臨床データが蓄積されているため、「なぜこの薬が長期収載品となり、なぜ見直しの対象に入っているのか」という背景を理解するうえでも役立ちます。
中外製薬・富士化学工業 アルサルミン事業譲渡リリース
アルサルミン錠 製造中止をきっかけに、スクラルファートを中心とした胃粘膜保護戦略を改めて見直すことは、単なる薬剤供給問題以上の意味を持ちます。PPIやボノプラザンなど強力な酸分泌抑制薬が普及した現在でも、スクラルファートの機械的粘膜保護作用や局所的な潰瘍保護効果は、特定の症例では依然として価値を持ち続けています。例えば、腎機能低下患者や高齢者でPPI長期投与による骨折リスク・感染リスクが懸念される場合、スクラルファートやレバミピドなどを組み合わせた粘膜防御因子重視の戦略を検討する余地があります。
製造中止・販売中止が視野に入るタイミングで、このような治療戦略を再考し、単に「別の薬に置き換える」だけでなく「酸分泌抑制一辺倒の治療から、粘膜防御と併用戦略へのシフト」を意識することは、患者安全と長期予後の両面で重要です。スクラルファートは薬物相互作用やアルミニウム負荷などの課題を抱えるものの、局所作用型の薬理特性ゆえに全身的な副作用プロファイルが比較的限定的であることは、特に多剤併用・高齢患者では利点となり得ます。アルサルミンのインタビューフォームには、長期投与症例や高齢者における安全性データも整理されており、こうした情報を読み解くことで「残すべき症例」「切り替えるべき症例」を見極める手がかりになります。
アルサルミン インタビューフォーム(安全性・使用成績)
また、スクラルファートは胃以外にも、放射線食道炎・放射線腸炎などに対して局所的な粘膜保護を目的としたオフラベル使用が報告されてきましたが、こうしたニッチな適応での経験的知見は長期収載品整理の波の中で失われやすい情報でもあります。製造中止・販売中止が進む前に、こうしたオフラベルの経験やプロトコールを学会レベルで共有・更新しておくことは、今後の粘膜保護戦略を構築するうえで重要なステップです。 例えば、ESD後出血予防におけるスクラルファート内用液の位置づけや、PPI・ボノプラザンとの併用戦略に関する施設間のノウハウは、今後代替薬へ切替が進んだ際にも参考となるでしょう。
独自視点として強調したいのは、「アルサルミン錠 製造中止」というニュースを、単なる『使っていた薬がなくなる』というネガティブな出来事として捉えるのではなく、『古典的な抗潰瘍薬の役割を再評価し、新しい治療戦略へと更新する契機』として活用する姿勢です。フォーミュラリー整備、薬事委員会の議論、企業側の事業再編、Drug Shortageデータベースの情報といった複数のレイヤーを俯瞰しつつ、患者個々のリスクプロファイルに応じた粘膜保護戦略を再設計していくことが、医療従事者に求められる役割だといえます。
最後に、アルサルミン錠や細粒の供給状況は今後も変動する可能性があるため、最新情報の確認が不可欠です。製造・販売会社の公式サイトにおける「製品仕様変更・新発売・中止等のお知らせ」や、Drug Shortageデータベース、院内薬事委員会資料を定期的にチェックし、「供給途絶の前に切替戦略を決めておく」ことが、現場負担を減らすうえでも重要です。
日医工 製品仕様変更・新発売・中止等のお知らせ
このような視点から、あなたの施設ではアルサルミン錠・細粒やスクラルファート製剤をどのような症例に位置づけ、今後どのタイミングで治療戦略の見直しを図るべきだと考えますか?
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