
世界保健機関(WHO)が策定した国際疾病分類第11版(ICD-11)は、2027年1月より日本国内での全面適用が予定されています。 第6章「精神・行動・神経発達の疾患」では、従来のICD-10から大幅な構造変更がなされ、17の章に細分化されています。
ICD-11の主要な特徴として、以下の点が挙げられます。
参考)ICD-11で精神症と気分症はどう変わるか——2027年1月…
参考)ICD-11「精神 ・ 行動 ・ 神経発達の疾患」の新診断サ…
特に注目すべきは、統合失調感情症の診断基準が「気分エピソード期間内に精神症症状が同時に存在する場合のみ」と横断的・エピソード診断に厳格化された点です。 これはDSM-5-TRの縦断的・生涯診断とは正反対の立場であり、臨床的には該当例の減少が予想されます。
また、ICD-11では物質使用症群または嗜癖行動症群に「ギャンブル障害」が正式に分類され、行動依存の医学的認識が進展しています。
参考)https://cbtcenter.jp/shared/include/icdfooter.php
米国精神医学会(APA)が刊行する「精神疾患の診断・統計マニュアル」第5版テキスト改訂版(DSM-5-TR)は、2022年に公開され、現在も継続的に更新されています。 2025年9月には診断基準およびテキストの更新が実施され、2026年4月30日までは自閉症スペクトラム障害の重症度特定用語の明確化に関するパブリックコメントが募集されています。
DSM-5-TRの主要な改訂ポイント。
DSM-5-TRでは、ICD-11との整合性を高めるため、ICD-10-CMコードとの対応が強化されています。 また、自閉症スペクトラム障害の診断基準AおよびBの重症度特定用語について、2026年4月までに明確化が提案されており、臨床現場での診断精度向上が期待されています。
ICD-10のFコード分類(F0-F9)に基づき、精神疾患は10の主要分類に整理されます。 各分類の代表的な疾患と症状特徴を以下に示します:
参考)精神疾患の分類10種類【精神科医が15分で説明】ICD10|…
F0 器質性精神障害
認知症、せん妄などが含まれます。アルツハイマー型認知症では、脳神経の変性・萎縮により物忘れなどの中核症状と、不安・抑うつなどの周辺症状が現れます。
F1 精神作用物質使用による精神・行動の障害
アルコール依存症、薬物依存症、カフェイン中毒などが該当します。アルコール依存症では、慢性的な摂取により身体的依存が形成され、断酒時に離脱症状が出現します。
F2 統合失調症・妄想性障害
幻覚、妄想、思考障害が特徴です。脳内ドーパミンの過剰が背景にあると考えられ、抗精神病薬による治療と再発予防が基本となります。
F3 気分障害
うつ病、双極性障害(躁うつ病)が含まれます。うつ病ではセロトニンの不足が背景にあり、休養・薬物療法・精神療法の三本柱で治療します。
F4 神経症性・ストレス関連障害
不安障害(パニック障害、社交不安障害、全般性不安障害、強迫性障害)、PTSD、適応障害などが含まれます。抗うつ薬と不安への脱感作が治療の中心です。
F5 生理的障害・身体的要因関連行動症候群
摂食障害(神経性やせ症、神経性過食症)、不眠症などが該当します。拒食による身体影響が強い場合、入院治療が必要になることもあります。
F6 成人の人格・行動の障害
パーソナリティ障害(境界性、自己愛性、回避性など10種類)が中心です。薬物療法は効果限定で、内省と行動的アプローチが治療の主軸となります。
F7 知的障害
IQによって重症度が分類され、福祉的サポートが中心となります。
F8 心理的発達の障害
自閉症スペクトラム(ASD)、学習障害(LD)などが含まれます。ASDでは社会性の障害とこだわりが特徴で、特性理解と環境調整が重要です。
F9 小児期・青年期発症の行動・情緒の障害
注意欠如・多動症(ADHD)、行為障害、チック障害などが該当します。ADHDでは不注意・多動・衝動性が特徴で、薬物療法と生活工夫の併用が効果的です。
医療現場では、診断コードと認定基準の整合性が重要です。厚生労働省は、ICD-11の国内適用に伴い、「精神障害の認定基準の対象疾病名に関する検討会」を2026年1月より開催しています。
参考)ICD−11の適用に伴う精神障害の認定基準の対象疾病名に関す…
認定基準の主な疾病名。
精神障害者保健福祉手帳や障害年金の認定においては、診断名だけでなく、日常生活・社会生活の制限度(就労状況、対人関係、身辺自立など)が総合的に評価されます。 特に、ICD-11移行に伴い、診断コードの変更が認定基準に与える影響について、2026年内に整理が進められています。
参考)精神障害とは?種類・症状や支援についてわかりやすく解説 &#…
この変更により。
性別不合の診断基準は、以下の通りです。
この分類変更は、WHOの「精神疾患のスティグマ軽減」と「LGBTQ+の健康権保障」の観点から、国際的に評価されています。
参考リンク。