
リドカインの抗不整脈作用は、心筋細胞膜にあるナトリウム(Na+)チャネルを遮断することによって発現します。特に不活性化状態のチャネルに対して強く結合し、チャネルとの結合・解離速度が速いという特徴を持っています。
参考)【コラム】リドカインの行方 (INTENSIVIST 1巻4…
心周期において、収縮期と拡張期の割合は心房筋で1:7、心室筋で2:3となっており、拡張期のほうが長く存在します。頻脈時には収縮期・拡張期ともに短縮しますが、短縮する割合は拡張期のほうが大きくなります。このため、Na+チャネルの閉鎖時間が短くなることで、リドカインによりブロックされるチャネルの割合が高まり、抗不整脈効果が発揮されます。
また、高カリウム血症や心筋虚血時にはNa+チャネル遮断からの解離速度が遅くなるため、正常心筋よりも虚血などの病的心筋で遮断作用が強く認められます。この特性により、リドカインは単発の心室性期外収縮(PVC)が散発している場合よりも、持続する心室頻拍(VT)やインセサント型心室頻拍で使用するほうが理論的に効果的であるとされています。
心電図上では、リドカイン投与によりQRS幅の延長がみられることがあります。これは心室内伝導が遅延することを示しており、過度の延長は中毒の兆候となるため注意深いモニタリングが必要です。PR間隔やQT間隔への影響は比較的少ないとされていますが、個々の患者の反応を継続的に観察することが重要です。
参考)https://new.jhrs.or.jp/pdf/book/shoseki_jobun04.pdf
リドカインの投与方法には、静注(ショット)と持続点滴(オリベス)の2種類があります。急変対応の場面では、まず静注により迅速に血中濃度を上昇させ、その後に持続点滴で有効濃度を維持するというアプローチが一般的です。
参考)VT・VFで登場!リドカイン静注vsオリベス!看護師が押さえ…
肝機能障害や心不全、高齢者ではリドカインの代謝・排泄が低下するため、用量の減量や投与間隔の延長が必要となります。特に肝血流の減少はリドカインのクリアランスに直接影響するため、肝機能検査値(AST、ALT、ビリルビンなど)を定期的に確認しながら投与計画を立案することが重要です。
参考)https://jstdm.jp/content/files/guidelines/JCS2015_Original.pdf
意外な点として、リドカインは局所麻酔薬としても使用されるため、皮膚科や歯科など他科での使用歴がある患者では、すでに一定量のリドカインが体内に存在する可能性があります。既往歴の確認時に、局所麻酔の使用の有無も含めて詳しく聴取することが、過量投与のリスクを低減させるために重要です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00000339.pdf
リドカインの副作用は、主に中枢神経系と循環器系に現れます。血中濃度の上昇に伴い、以下のような症状が段階的に出現します:
参考)302 Found
循環器系の副作用としては、低血圧、徐脈、心伝導障害、心室性不整脈の悪化などが報告されています。特に心不全やショック状態の患者では、リドカインの心筋抑制作用が増強されるため、より慎重な観察が必要です。
参考)リドカイン静注液2%「タカタ」の基本情報(薬効分類・副作用・…
リドカイン中毒が発生した場合の治療法として、米国局所麻酔学会は20%脂肪乳剤の投与を推奨しています。具体的には、0.5ml/kgを1分以上かけて静注し、その後0.25ml/kg/分で持続静注を行います。循環虚脱が持続する場合は、bolus静注を2回まで追加可能です。
中毒の予防策として、以下の点を確認することが重要です。
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00052270.pdf
リドカイン投与中の心電図モニタリングは、治療効果と安全性の両面から不可欠です。観察すべき主なポイントは以下の通りです:
参考)看護師のための心電図の読み方【不整脈編】|カンゴノート
不整脈のアセスメントでは、単に心電図波形を読むだけでなく、「患者さんにどのような影響が出ているか」を評価することが重要です。自覚症状(動悸、胸痛、呼吸困難、めまいなど)の有無、バイタルサインの変動(血圧低下、SpO2低下)、そして直接脈に触れてリズムを確認する触知も重要な手段です。
参考)【新人ナース&学生必見】「不整脈」の基本とアセスメント!頻脈…
看護ノートが提供する不整脈評価の順序を参考にすると:
1. 病状は安定しているのか、不安定なのか
2. 脈は速いのか、遅いのか
3. RR間隔は一定なのか、不整なのか
4. P波とQRS波の関係はどうなのか
5. 他覚的な症状(喘鳴、低血圧、経静脈怒張、浮腫、ST-T変化など)
6. 自覚症状(呼吸困難、眩暈、胸痛、意識障害など)
これらの評価を定期的に実施し、変化を早期に発見することで、適切な介入につなげることができます。
リドカインは心室性不整脈の第一選択薬として長年使用されてきましたが、近年のガイドラインではその位置付けが変化しています。2020年改訂版の不整脈薬物治療ガイドラインでは、心室頻拍・心室細動に対する第一選択薬としてアミオダロンが推奨されるようになり、リドカインは代替薬としての位置付けとなっています。
参考)https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf
意外な事実として、リドカインは消化器内視鏡検査時の鎮静・不整脈予防としても使用されることがあります。特に高齢者や心疾患の既往がある患者では、内視鏡処置中の不整脈発生リスクを低減させるために、予防的にリドカインが投与されるケースがあります。この用途では、抗不整脈としての用量よりも低用量で投与されることが一般的です。
参考)https://anesth.or.jp/files/pdf/4_local_anesthetic.pdf?var=20250721033955
また、リドカインは局所麻酔薬としても広く使用されているため、麻酔科や歯科、皮膚科など他科での使用と重複する可能性があります。患者の既往歴や現用薬を確認する際に、局所麻酔の使用歴も含めて詳しく聴取することが、過量投与や中毒のリスクを低減させるために重要です。
参考)http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-kameda-20240408.pdf
https://new.jhrs.or.jp/pdf/book/shoseki_jobun04.pdf
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf
https://knowledge.nurse-senka.jp/226988
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