
右脚ブロック(Right Bundle Branch Block:RBBB)とは、心臓の刺激伝導系において右脚の興奮伝導時間が延長、あるいは伝導が途絶した状態を指します。心臓の電気信号は洞結節から始まり、房室結節、ヒス束を経て左右の脚に分かれて心室に伝わりますが、この右脚の伝導が障害されることで右心室の興奮が左心室より遅れて生じます。
参考)右脚ブロック - Wikipedia
右脚が遅れて興奮するため、右室の興奮は左室の興奮に遅れて生じ、その結果として心電図上ではQRS波が幅広く変形した所見を示します。右脚の障害の程度により、QRS波の幅が0.12秒以上(記録幅3mm以上)のものを完全右脚ブロック、0.10秒以上0.12秒未満のものを不完全右脚ブロックと呼びます。
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_26246
右脚ブロックの心電図所見には明確な特徴があり、特に胸部誘導での波形変化が診断の鍵となります。V1誘導ではrsR'型またはrSR'型と呼ばれる上向きの二峰性波形を示し、これが右脚ブロックの最も特徴的な所見です。一方、V6誘導では幅広いS波が出現し、左側胸部誘導(V5、V6)でS波が深くなるのが典型的です。
参考)右脚ブロック(RBBB)
| 誘導 | 特徴的所見 | 備考 |
|---|---|---|
| V1誘導 | rsR'型またはrSR'型(上向き二峰性) | 最も特徴的な所見 |
| V6誘導 | 幅広いS波、深いS波 | 左側胸部誘導でも同様の所見 |
| QRS幅 | 完全型:0.12秒以上、不完全型:0.10〜0.12秒未満 | 正常時は0.10秒未満 |
| T波 | V1で陰性、V5・V6で陽性 | 二次的ST-T変化として出現 |
右脚ブロックはQRS幅によって不完全型と完全型に分類され、それぞれ臨床的意義が異なります。不完全右脚ブロックは右脚の末梢のブロックであり、完全右脚ブロックはより中枢側のブロックを示唆します。わが国の報告では1〜2%の頻度で認められるとされていますが、加齢により頻度は4〜8%に上昇することが知られています。
右脚ブロックは左脚ブロックに比べ心臓に基礎疾患がないことが多く、無症状である場合がほとんどです。肺性心、先天性心疾患、Brugada症候群、不整脈原性右室心筋症の除外が行われれば、一般的に予後良好であり精査・治療は不要とされています。
右脚ブロックの診断にあたっては、他の心疾患や症候群との鑑別が重要です。特にBrugada症候群や不整脈原性右室心筋症(ARVC)は右脚ブロック様の心電図所見を示すことがあり、これらの除外診断は臨床的に極めて重要です。また、右脚ブロックが新規に出現した場合や、他の伝導障害(左脚前枝ブロック、左脚後枝ブロック、房室ブロック)を合併する場合は、より慎重な評価が必要となります。
2枝ブロックとは右脚ブロックに左脚前枝ブロックまたは左脚後枝ブロックを合併した状態、3枝ブロックとは右脚ブロックに左脚前枝ブロックと1度房室ブロックを合併した状態を指します。これらの多枝ブロックはより高度な伝導系障害を示唆し、ペースメーカー植え込みの適応を検討する必要がある場合があります。
参考)「脚ブロック」の心電図のポイントは?診断と治療の基本もあわせ…
詳細な脚ブロックの心電図特徴と診断の落とし穴については、脚ブロック 心電図 特徴と診断の落とし穴を整理も参考になります。
右脚ブロックの診断は主に心電図検査で行われ、定期健康診断や他の目的で行われた心電図検査で偶然発見されることが多くなります。大多数の右脚ブロックは無症状で経過し、特別な治療を必要としませんが、定期的な経過観察は欠かせません。
一部の方では息切れや疲労感などの症状が現れることがあり、重度の右脚ブロックでは顕著な息切れ(特に労作時)、持続的な胸痛、胸部圧迫感、めまい、失神、浮腫(むくみ)、頻脈、疲労感の著しい増加などの症状が現れる可能性があります。これらの症状を認める場合は、心エコー検査やホルター心電図検査などの追加検査を考慮し、基礎心疾患の有無を評価する必要があります。
治療は原因疾患の管理が中心となり、症状や合併症の有無に応じて薬物療法や非薬物療法を実施します。無症状のRBBBでは特別な治療を必要としませんが、定期的な経過観察は欠かせません。
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