国際疾病分類腫瘍学コード一覧の読み方と実務活用

国際疾病分類腫瘍学(ICD-O)の局在コード・形態コード・性状コードを体系的に解説します。院内がん登録や病理診断情報を扱う医療従事者が、コード一覧を適切に確認・選択するには何を押さえるべきでしょうか?

国際疾病分類腫瘍学コード一覧の基礎知識と核心ガイド

ICD-Oコード選択の基本手順
局在と形態を分けて確認する

ICD-Oでは発生部位を局在コード、組織型や悪性度を形態コードとして別々に記録します。

形態コードは性状まで読む

4桁の組織型だけで決めず、スラッシュ後の性状コードと分化度コードを含めて判定します。

最新版と登録ルールを照合する

ICD-Oの版、院内がん登録の収集項目、原発・多重がんの取扱いを組み合わせて確認します。


ICD-Oとは何か:ICD-10・ICD-11との役割の違い



国際疾病分類腫瘍学(International Classification of Diseases for Oncology:ICD-O)は、腫瘍を詳細に記録・集計するための国際分類です。一般的な疾病統計や診療情報で広く用いられるICD-10・ICD-11の新生物分類とは異なり、ICD-Oは腫瘍の発生部位と病理組織学的な特徴を分けて表現できることが大きな特徴です。
例えば、胃の悪性腫瘍を記録する場合、ICD-10では胃の部位を中心とした分類になります。一方、ICD-Oでは「胃のどの部位に発生したか」を局在コードで示し、さらに「腺癌なのか、印環細胞癌なのか、神経内分泌腫瘍なのか」といった組織型・細胞型を形態コードで表現します。腫瘍登録、がん罹患統計、病理情報の標準化、研究データの統合などでは、この二軸の情報が重要です。
ICD-Oは、腫瘍(新生物)のために作られたICDの関連分類であり、局在コードと形態コードを組み合わせて使用します。国内の院内がん登録実務では、国際疾病分類腫瘍学第3.2版に対応した形態リストやコーディング資料が利用されます。


参考)https://oici.jp/ocr/UP/pdf/zenkoku/zenkoku_11.pdf
なお、ICD-Oは傷病名マスターやレセプト請求に用いる傷病名コードそのものではありません。診療報酬請求や電子カルテ上の病名管理で使用されるコード体系と、がん登録・病理学的な腫瘍分類で使用するICD-Oを混同しないことが必要です。目的に応じて、ICD-10、標準病名、ICD-O、TNM分類、WHO分類などを使い分けます。


国際疾病分類腫瘍学コード一覧の構造

ICD-Oのコード一覧を読む際は、局在コード、形態コード、性状コード、分化度・異型度コードを切り分けると理解しやすくなります。局在コードは原発部位を示し、原則として英字Cに数字を組み合わせた形式です。形態コードは組織型・細胞型を示す4桁の数字に、性状を示すスラッシュ後の数字が続きます。
代表的な表記例として、「C16.0 M8140/3」を考えます。C16.0は胃噴門を、M8140は腺癌NOSを、/3は悪性・原発部位を示す性状を表します。ただし、実際のコーディングでは病理診断書、臨床所見、登録規則、形態索引、番号順リストを照合し、単語の一部だけから機械的に確定しないことが重要です。

項目 基準・内容 備考
局在コード 原発した臓器・組織・詳細部位を示すCコード 例:C16.0は胃噴門、C50.9は乳房・詳細不明
形態コード 組織型・細胞型を原則4桁の数字で表す 例:8140は腺癌NOS、8070は扁平上皮癌NOS
性状コード スラッシュ後の数字で腫瘍の生物学的性状を示す 例:/0良性、/1良悪性境界、/2上皮内、/3悪性原発、/6悪性転移
分化度コード 必要に応じて6桁目に分化度・異型度・表現型を追加する 組織型によって適用可否や意味が異なる

局在コードの例では、胃はC16.0からC16.9までに詳細部位が設定され、噴門、胃底部、胃体部、胃前庭部などを区別できます。局在不明の場合に詳細不明コードへ安易に落とすのではなく、内視鏡所見、手術記録、病理報告書、画像所見などから原発部位を確認することが実務上重要です。


形態コードは「M8140/3」のように表記されます。Mは形態コードであることを明示する接頭辞として用いられることがありますが、データ項目の仕様によっては数値部分のみを入力する場合もあります。システムごとに入力形式が異なるため、院内がん登録システム、地域がん登録、研究データベースの仕様書を確認してください。


頻用される局在コードと形態コードの一覧例

以下は、実務で参照されやすいコードの一部です。これは網羅的なICD-Oコード一覧ではなく、局在コードと形態コードの関係を理解するための例示です。実際の登録では、診断名に対応する最新の公式リスト、形態用語索引、院内がん登録実務書を優先してください。

分類 コード例 内容
局在コード C18.7 S状結腸
局在コード C20.9 直腸・詳細不明
局在コード C34.9 気管支及び肺・詳細不明
局在コード C50.9 乳房・詳細不明
局在コード C61.9 前立腺
局在コード C73.9 甲状腺
形態コード M8140/3 腺癌、NOS、悪性・原発部位
形態コード M8070/3 扁平上皮癌、NOS、悪性・原発部位
形態コード M8720/3 悪性黒色腫、NOS、悪性・原発部位
形態コード M8500/3 浸潤性乳管癌、NOS、悪性・原発部位
形態コード M9591/3 非ホジキンリンパ腫、NOS、悪性・原発部位

ここで注意したいのは、同じ形態コードでも発生部位により臨床的な解釈や登録上の確認事項が異なることです。例えば腺癌NOSのM8140/3は消化器、肺、膵胆道、婦人科など多くの臓器で使用され得ます。そのため、「腺癌だからM8140/3」と先に決めるのではなく、病理診断の修飾語、組織学的亜型、原発部位、免疫染色・分子所見、最終診断を確認します。
また、「NOS」はNot Otherwise Specified、すなわち他に特定されない場合を意味します。診療録または病理診断書により詳細な組織亜型が確認できるなら、NOSコードより特異的なコードを選択できる可能性があります。一方、文書化されていない情報を推測して詳細コードを付与することは避けるべきです。
院内がん登録支援サイト


性状コードと分化度コードで注意するポイント

ICD-Oの形態コードでは、スラッシュ後の性状コードが腫瘍の性質を示します。代表的な性状として、/0は良性、/1は良悪性の境界性・低悪性度または悪性か良性か不明、/2は上皮内癌・非浸潤性・非浸潤性腫瘍、/3は悪性・原発部位、/6は悪性・転移部位、/9は悪性・原発か転移か不明です。
ただし、/2を単純に「早期がん」と解釈することはできません。/2は腫瘍の浸潤性に関する病理学的な性状であり、臨床病期、TNM分類におけるT分類、治療適応、予後を直接示すコードではありません。上皮内癌、非浸潤性乳管癌、非浸潤性病変などの取扱いは、腫瘍の部位や登録制度により確認が必要です。
また、分化度・異型度コードは、形態コードの後ろに追加して表現されることがあります。一般に1は高分化、2は中分化、3は低分化、4は未分化・退形成を示す目的で使用されますが、すべての腫瘍に一律に適用できるわけではありません。リンパ腫、白血病、肉腫、神経内分泌腫瘍などでは、グレード、分化度、異型度、細胞表現型などの扱いが腫瘍ごとに異なる場合があります。

  • 病理診断名に「in situ」「非浸潤性」「微小浸潤」「境界悪性」「low grade」などの修飾語がある場合は、性状や形態を必ず再確認する
  • 転移巣の病理診断を見ても、原発部位として登録する局在コードがどこかを臨床情報と合わせて判断する
  • 組織型、悪性度、分化度、グレード、病期は同義ではないため、各データ項目を混同しない
  • 不明情報を補完的に推定するのではなく、診療録・病理報告書・登録規則に根拠を求める
  • 旧版の形態コード表だけで判定せず、運用中の登録基準に対応する版と改訂情報を確認する

形態コーディングでは、病理診断名を基本的な組織型、修飾語、分化度などに分け、形態用語索引から候補を探した後、番号順リストで最終確認する流れが示されています。索引の検索結果だけで確定せず、番号順リストまで確認することで、類似した診断名や除外規定の見落としを減らせます。


参考)https://oici.jp/ocr/UP/pdf/zenkoku/zenkoku_12.pdf


院内がん登録での確認手順とコード選択の実務

院内がん登録でICD-Oコードを選ぶ際は、診断書の一文だけを読んで処理するのではなく、原発部位、組織診断、悪性度、浸潤の有無、転移の有無、診断確定の根拠を時系列で確認します。病理診断が最終的な組織型の根拠となる場面は多いものの、原発部位の決定には内視鏡、画像、手術記録、術中所見、臨床診断が重要になることがあります。
実務の基本は、まず対象症例が登録対象であるかを確認し、次に原発部位を局在コードへ落とし込みます。その後、病理診断に基づいて組織型・細胞型を選択し、性状コードを確認します。複数の腫瘍、両側性腫瘍、多発病変、再発病変、転移病変がある場合は、単純に病変数だけを数えるのではなく、多重がんの判定規則や原発判定ルールに沿って処理します。
例えば、病理報告書に「S状結腸腺癌、tub2、浸潤癌」と記載され、臨床的にもS状結腸原発と確認できる場合、局在コードはC18.7を検討し、形態コードは病理組織型に対応するコードを形態リストで確認します。「tub2」は一般に中分化型腺癌を指す文脈で使われますが、施設の診断表記、病理記載、登録項目の定義を確認し、分化度の入力可否を別途判断します。
肺腫瘍では、原発性肺癌と他臓器癌の肺転移を取り違えないことが重要です。肺生検で腺癌と診断されても、患者に既往の大腸癌、乳癌、膵癌、婦人科癌などがあり、免疫組織化学的検討や臨床像から転移性腫瘍が示唆される場合があります。局在コードと形態コードは、単一の病理用語だけではなく、確定された原発情報に基づいて記録します。
ICD-O第3.2版はIARCにより公表された版で、院内がん登録では第3.2版に対応した形態の番号順リストが実務資料として提供されています。施設内で旧版の一覧、独自の略語表、過去の登録ルールが混在している場合は、参照資料の版管理と改訂履歴の共有が必要です。



コード一覧を安全に運用するための体制づくり

国際疾病分類腫瘍学コード一覧は、単なる対応表として使うよりも、診断情報を標準化するための判断基盤として扱うことが重要です。特に、がん登録担当者、診療情報管理士、病理医、臨床医、医師事務作業補助者、データマネジャーが関わる施設では、情報源と確定責任の所在を明確にすると、コードのばらつきや後日の修正を抑えやすくなります。
運用文書には、使用するICD-Oの版、局在コードの確認元、形態コードの優先情報、病理未実施例の扱い、原発不明例の扱い、再発・転移・多重がんの確認手順、疑義照会のルートを記載しておくと有用です。コードを入力する担当者が診断内容を独断で補完しない仕組みと、病理部門や担当医へ確認できる仕組みの両方が必要です。
また、検索性を高めるために院内でコード一覧をExcelやデータベースに整理する場合も、公式資料の表記を改変しないこと、更新日・版番号・出典を記録すること、略称検索と正式名称検索を区別することが大切です。特に、独自マスターを作成する場合は、旧コード・新コードの混在、文字種の揺れ、NOS表記、英語表記、日本語表記、病理診断の略語による検索漏れに注意します。
ICD-Oのコード選択は、統計の品質だけでなく、がん医療の実態把握、予後研究、地域比較、医療資源配分を支える基礎データに直結します。局在コード、形態コード、性状コードを個別に理解し、最新の公式資料と院内がん登録基準に照らして記録することが、再現性の高い腫瘍情報管理につながります。

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