寄与危険度は、疫学における「曝露によって増えた疾病発生の絶対量」を表す指標である。寄与リスク、リスク差、絶対リスク増加と呼ばれることもある。基本式は非常にシンプルで、曝露群の罹患率から非曝露群の罹患率を引く。
寄与危険度(AR)=曝露群の罹患率(Ie)−非曝露群の罹患率(I0)
ここで大切なのは、「患者数の差」ではなく「疾病頻度の差」を求める点である。したがって、問題文に曝露群・非曝露群の発症者数と人数が示されている場合、最初に各群の罹患率を作る。観察期間が同一で累積発生割合を扱うなら、次の式でよい。
例えば、ある薬剤への曝露群1,000人中40人が有害事象を発症し、非曝露群1,000人中10人が発症したとする。曝露群の罹患率は4%、非曝露群は1%であるため、寄与危険度は3%、すなわち0.03となる。臨床的には、「この集団条件下では、曝露に関連する発症増加は1,000人当たり30人、または100人当たり3人」と読める。
寄与リスクは、ばく露群と非ばく露群の疾病頻度の差として定義される。曝露群において増えた絶対的な疾病頻度を扱えるため、相対リスクだけでは見えにくい医療上・公衆衛生上の影響を評価しやすい。
食品安全委員会「疫学−用語集」
食品安全委員会の用語集では、寄与リスク、相対リスク、交絡、罹患率、症例対照研究およびコホート研究の定義を確認できる。
食品安全委員会:疫学−用語集
寄与危険度の計算問題では、2×2表を自分で書き直すと、分母の取り違えを大幅に減らせる。行に曝露の有無、列に疾病発生の有無を置く構造が基本である。
| 区分 | 疾病あり | 疾病なし | 合計 |
|---|---|---|---|
| 曝露群 | A | B | A+B |
| 非曝露群 | C | D | C+D |
この表から、曝露群の罹患率はA÷(A+B)、非曝露群の罹患率はC÷(C+D)となる。したがって、寄与危険度は次式で表せる。
寄与危険度=A÷(A+B)−C÷(C+D)
例として、喫煙者3,000人中84人、非喫煙者5,000人中87人に虚血性心疾患が発生したとする。喫煙者の罹患率は84÷3,000=0.028、すなわち年間1,000人当たり28.0人である。非喫煙者は87÷5,000=0.0174、すなわち年間1,000人当たり17.4人となる。
よって寄与危険度は、28.0−17.4=10.6/1,000人年である。この値は、「喫煙者では、非喫煙者と比べて年間1,000人当たり10.6人分の虚血性心疾患発生が多い」という意味になる。単に「喫煙で危険」と述べるよりも、介入によって減らせる可能性がある絶対的な発症数を伝えられる点が重要である。
なお、分子に疾病ありの人数を使う点は共通していても、分母は必ず各行の合計である。A+Cを分母にしたり、全体人数A+B+C+Dを分母にしたりすると、寄与危険度ではなく別の値になってしまう。
医学教育における寄与危険度の例では、曝露群28.0/1,000人年、非曝露群17.4/1,000人年から、寄与危険度10.6/1,000人年を算出している。
医学教育コンテンツ:疫学概論「寄与危険度」
寄与危険度と相対リスクは、同じ表から計算できるが、答えている問いが異なる。寄与危険度は「どれだけ増えたか」という差を、相対リスクは「何倍になったか」という比を示す。設問で「増加分」「何人当たり増えるか」「曝露を除けばどの程度減少するか」と問われれば、寄与危険度を選ぶ。
| 指標 | 計算式 | 主な解釈 |
|---|---|---|
| 寄与危険度 | Ie−I0 | 曝露で増えた絶対的な発生頻度 |
| 相対リスク | Ie÷I0 | 曝露群のリスクは何倍か |
| 寄与危険割合 | (Ie−I0)÷Ie | 曝露群の発生のうち曝露に関連する割合 |
先ほどの例では、相対リスクは28.0÷17.4=約1.61である。一方、寄与危険度は10.6/1,000人年である。相対リスク1.61倍は関連の強さを直感的に伝えやすいが、実際に予防できる患者数の見積もりには、寄与危険度のほうが直接的である。
意外に見落とされやすいのは、相対リスクが大きくても、もともとの発生頻度が極めて低ければ寄与危険度は小さくなりうる点である。たとえば、100万人当たり2人から3人への増加では、相対リスクは1.5だが、寄与危険度は100万人当たり1人、すなわち10−6である。リスク説明では、倍率だけを強調せず、絶対的な増加量を併記する姿勢が不可欠となる。
環境省は、100万人当たり2人から3人へ増える例で、相対リスクは1.5倍、寄与リスクは100万人当たり1人の増加として区別している。
環境省:相対リスクと寄与リスク
寄与危険度の問題では、寄与危険割合と人口寄与危険度を混同しないことも重要である。まず寄与危険割合は、曝露群だけに注目し、その疾病発生のうちどの程度が曝露に関連すると考えられるかを示す。
寄与危険割合=寄与危険度÷曝露群の罹患率
=(Ie−I0)÷Ie
喫煙者の罹患率28.0/1,000人年、非喫煙者の罹患率17.4/1,000人年であれば、寄与危険割合は10.6÷28.0=0.379、すなわち37.9%である。これは「喫煙者に生じた虚血性心疾患の発生頻度のうち、37.9%が喫煙に関連する超過分として表現される」という意味であり、喫煙者全体の37.9%が必ず発症するという意味ではない。
一方、人口寄与危険度は、曝露者だけでなく地域住民・患者集団などの全人口を対象とする。曝露をなくした場合に、集団全体でどれほど疾病頻度を減らせるかを考える指標である。
人口寄与危険度=全人口の罹患率−非曝露群の罹患率
全人口の罹患率が直接与えられない場合は、曝露群の割合をPeとして次のように求められる。
全人口の罹患率=Ie×Pe+I0×(1−Pe)
ここでの独自の着眼点は、個人リスクが高い要因と、集団対策として優先すべき要因が一致しない場合があることである。相対リスクが中程度でも、曝露者が非常に多ければ人口寄与危険度は大きくなりうる。医療現場では高リスク患者への個別介入が重要だが、保健事業や予防政策では、曝露頻度を含めた人口寄与危険度の視点が、限られた資源の配分に役立つ。
寄与危険度を算出できるかどうかは、研究デザインと得られるデータに依存する。コホート研究では、曝露群・非曝露群を追跡して罹患率や累積発生率を求められるため、寄与危険度を直接計算できる。介入研究でも、比較群の疾病頻度が得られれば同様に計算できる。
対して、典型的な症例対照研究では、研究者が疾病の有無を基準に症例群と対照群を選ぶ。そのため、元の曝露群・非曝露群における罹患率を直接は求められない。2×2表があっても、A÷(A+B)とC÷(C+D)を罹患率として扱うことはできない。ここで計算する代表指標はオッズ比であり、寄与危険度をそのまま出す設問ではない。
さらに、寄与危険度が正の値でも、ただちに「曝露が原因」とは断定できない。観察研究では、年齢、性別、基礎疾患、社会経済的要因、生活習慣などの交絡が結果を歪めることがある。たとえば飲酒と肺がんの関連を検討する際、飲酒者に喫煙者が多ければ、喫煙が交絡因子となる可能性がある。寄与危険度を因果効果として扱うには、研究設計、層別解析、多変量解析、標準化、感度分析などを通じた慎重な検討が必要である。
計算問題であっても、最終答案では単位を残す習慣をつけたい。「0.03」とだけ書くより、「3%」「100人当たり3人」「1,000人当たり30人」のように、観察期間を添えて表現するほうが臨床・保健医療の意思決定に接続しやすい。寄与危険度は単なる引き算ではなく、予防可能な疾病負担を数量化するための指標である。