ガーゼをそのまま当てると、ビーズが残って感染源になります。
カデックス軟膏(一般名:カデキソマー・ヨウ素)は、スミス・アンド・ネフューが製造する褥瘡・皮膚潰瘍治療剤です。 デンプンを原料としたポリマービーズ「カデキソマー150」の内部にヨウ素0.9%を担持させた、独自の構造を持つ軟膏です。 水溶性基剤(マクロゴール)を使用しているため、洗い流しやすいという利便性もあります。
参考)医療用医薬品 : カデックス (カデックス軟膏0.9%)
主な作用は2つです。
参考)カデックス軟膏 の特徴について~ガイドライン上の位置づけも~…
この2つの相乗効果により、黄色期(壊死組織+滲出液が多い状態)の褥瘡に対して高い効果を示します。 つまり「感染制御+創面清浄化」が基本です。
参考)【薬剤師向け】褥瘡治療におけるカデックス軟膏の臨床的役割|て…
日本褥瘡診療ガイドライン2017では、深い褥瘡の感染・壊死組織除去・黄色期での多量滲出液に対して推奨度「1A(最も高い推奨)」が与えられています。 また日本皮膚科学会ガイドライン(2023年版)でも、ステージIII以上の褥瘡に対して使用が提案されています。

添付文書に明記されている用法用量は、「潰瘍面を清拭後、通常1日1回、患部に約3mmの厚さに塗布する(直径4cmあたり3gを目安に)。滲出液の量が多い場合は1日2回塗布する」です。 この量が「目安」ではなく「最低基準」であることを意識してください。
参考)カデックス軟膏0.9%の基本情報・添付文書情報 - データイ…
処置の手順は以下の通りです。
1. 洗浄:生理食塩水またはぬるま湯で創面を十分に洗い流す。前回のカデキソマービーズが残っていないか必ず確認する
2. 清拭:清潔なガーゼで創面の水分を軽くふき取る
3. 塗布:創面に約3mmの厚さで均一に塗布。直径4cm(はがきの幅の約1/4)に対して3gが目安
4. 被覆:湿った状態を保ちながら、非固着性ガーゼや吸収性ガーゼで覆う
5. 固定:ガーゼがずれないようにテープで固定する
滲出液が「1日何度もガーゼを交換しなければならないほど多い」場合は1日2回に増やします。 逆に、量が少ないのに1日2回塗り重ねるのは乾燥を招き逆効果です。量の判断が条件です。
カデックス軟膏0.9%の添付文書・詳細情報(KEGG MEDICUS)

ガーゼの選択はカデックス軟膏の効果を左右します。意外ですね。カデックス軟膏は創面への固着を起こしやすい素材との相性が悪く、剥がす際に肉芽を傷つけるリスクがあります。
参考)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/clinical_practice_of_geriatrics_50_5_597.pdf
ガーゼ選択のポイントは以下の通りです。
| ガーゼの種類 | 適否 | 理由 |
|---|---|---|
| 非固着性ガーゼ(メロリン等) | ✅ 推奨 | 肉芽に固着しにくく剥離時の損傷を最小化 |
| 吸収性ドレッシング(アルギネート等) | ✅ 推奨 | 多量滲出液をしっかり吸収 |
| 通常の綿ガーゼ | ⚠️ 注意 | 固着すると剥離時に出血・肉芽損傷のリスク |
| ポリウレタンフィルム単体 | ❌ 不適 | 透湿性が低く滲出液がこもる |
交換のタイミングは、滲出液の量を基準にします。 ガーゼが飽和していたら即交換が原則です。飽和したまま放置すると、吸収した壊死組織や細菌が逆流(リーク)して周囲皮膚に刺激を与えます。1日1回の交換が基本ですが、滲出液が多い時は1日2回まで増やせます。
参考)https://smc-kanwa.jp/carenet/images/201601110_03.pdf

適切な創面の見極めは、カデックス軟膏が「薬」になるか「毒」になるかを決めます。これは使えそうです。
使うべき創面の特徴:
使うべきでない創面の特徴。
乾燥した創面に使い続けると、カデキソマービーズが逆に水分を奪い、治癒を遅延させます。創面の状態を毎回アセスメントすることが前提です。
また、ヨウ素過敏症の患者や甲状腺疾患を持つ患者への長期・広範囲使用は禁忌に準じた扱いが必要です。 長期使用では甲状腺機能の定期モニタリングも推奨されます。
カデックス軟膏のガイドライン上の位置づけと注意点(未病薬剤師.com)- 推奨度1Aの根拠と禁忌の詳細

深いポケット形成を伴う褥瘡は、カデックス軟膏の使いにくい場面のひとつです。ポケット内部にカデキソマービーズが入り込むと、洗浄で完全に洗い流すことが難しくなります。 残ったビーズは感染源になる可能性があり、これは大きなリスクです。
この場合の対応として、以下を検討します。
代替薬として、浸出液が少ない場合はゲーベンクリーム(スルファジアジン銀)、浸出液が多い別の選択肢としてユーパスタコーワ軟膏が挙げられます。 創面の「今の状態」に合わせて薬剤を変えることが、治癒を最短にする条件です。
なお、カデックス軟膏は薬価52.6円/gです。 直径4cm・3g塗布の場合1回約158円。感染延長による入院期間の延長コストと比較すると、適切に使えば非常にコストパフォーマンスの高い薬剤といえます。
日本老年医学会:褥瘡治療の実際②外用薬・医療材料の使い方 - 薬剤の選択基準と使い分けの根拠
| 対象 | ポイント |
|---|---|
| 小児・乳児 | 大人より強く効く。ODT状態(おむつ)に注意 |
| 顔(一般) | Ⅳ群以下が推奨範囲。長期連用は眼科副作用に注意 |
| 眼瞼・目周囲 | 医師指示がない限り原則使用禁止 |
| 陰部・陰嚢 | 吸収率42倍。長期使用は全身副作用リスクあり |
| 感染皮疹 | ステロイド単剤での使用は悪化リスクあり |
| 副作用カテゴリ | 具体的な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 皮膚局所反応 | そう痒・発赤・発疹(5%未満)、かぶれ・ヒリヒリ感(0.1%未満)e-pharma | 貼付中止・皮膚科受診 |
| 重大な副作用 | ショック・アナフィラキシー・喘息発作・呼吸困難 e-pharma | 即座に救急対応 |
| 腎機能影響 | 尿量減少・浮腫 e-pharma | 腎機能モニタリング、中止検討 |
| 光線過敏症 | 貼付部位の発赤・強い痒み・水疱 kirishima-mc | 日光回避・皮膚科受診 |