
糸球体濾過量(Glomerular Filtration Rate:GFR)とは、腎臓に存在する糸球体が1分間に濾過する血漿の量を指します 。この数値は、腎臓が血液中の老廃物や余分な水分をどの程度除去できるかを示す、腎機能評価の中心的な指標となります 。
参考)糸球体濾過量,クレアチニンクリアランス (検査と技術 54巻…
GFRの単位は「mL/分」で表され、体表面積で補正した場合は「mL/分/1.73m²」となります 。体表面積補正を行うことで、体格の異なる患者間での腎機能比較が可能になります。
参考)eGFRをもう少し詳しく 体表面積による補正・未補正|ジジネ…
正常な成人におけるGFRの基準値は、約90〜120 mL/min/1.73m²の範囲にあります 。ただし、この値は加齢とともに緩やかに低下する生理的変化を示すため、年齢に応じた解釈が臨床現場では重要となります 。
臨床現場で頻用されるeGFR(estimated GFR:推算糸球体濾過量)は、実際のGFRを直接測定するのではなく、血清クレアチニン値、年齢、性別などのデータから計算式を用いて推定した値です 。
参考)腎機能・eGFRが低い、クレアチニンが高い|慢性腎臓病(CK…
GFRとeGFRの決定的な違いは、測定方法にあります。真のGFRを測定するには、イオヘキソールやイヌリンなどの外来物質を用いたクリアランス試験が必要であり、時間とコストがかかるため日常診療では実施されません 。
参考)【慢性腎臓病】クレアチニン+シスタチンCで腎臓を守る、CKD…
一方、eGFRは血液検査の結果から即座に算出可能で、慢性腎臓病(CKD)のスクリーニングや重症度分類に広く活用されています 。ただし、eGFRは推算値であるため、筋肉量の極端な増減や食事の影響を受けるクレアチニン値の特性を考慮した解釈が求められます 。
クレアチニンクリアランス(CCr)は、尿中クレアチニン濃度、血中クレアチニン濃度、尿量を用いて計算される腎機能指標です 。
参考)腎臓の役割は?クレアチニン、GFRについて【医学生解説】|K…
理論的には、クレアチニンは糸球体でほぼ100%濾過され、尿細管からの再吸収や分泌がほとんど起こらないため、「クレアチニンクリアランス=GFR」とみなすことができます 。この関係式は以下の通りです:
GFR = (尿中Cr濃度 ÷ 血中Cr濃度) × 尿量
しかし実際には、クレアチニンは尿細管からわずかに分泌されるため、クレアチニンクリアランスは真のGFRを10〜20%程度過大評価する傾向があります 。
参考)生化学検査(腎機能・電解質) (臨床検査 70巻1号)
クレアチニンクリアランスの測定には、24時間蓄尿法と短時間法の2種類があり、患者の状態に応じて使い分けられます 。24時間蓄尿法はより正確ですが、患者の負担が大きく、採尿の誤りによる誤差が生じやすいという課題があります。
参考)クレアチニンクリアランスとは?計算方法や異常値を示す場合の原…
慢性腎臓病(CKD)の診断基準には、eGFR 60 mL/min/1.73m²未満の状態が3か月以上持続することが含まれます 。CKDの重症度は、GFRに基づいてG1からG5の5段階に分類されます 。
| ステージ | eGFR (mL/min/1.73m²) | 腎機能の状態 |
|---|---|---|
| G1 | ≥90 | 正常または高値 |
| G2 | 60〜89 | 軽度低下 |
| G3a | 45〜59 | 軽度〜中等度低下 |
| G3b | 30〜44 | 中等度〜高度低下 |
| G4 | 15〜29 | 高度低下 |
| G5 | <15 | 腎不全 |
G3a(eGFR 45〜59)以降から心血管イベントのリスクが有意に上昇し、G4・G5では透析導入や腎移植の検討が必要となります 。eGFR 30未満の場合は、腎臓専門医療機関との連携を含めた早めの評価が強く推奨されます 。
参考)腎臓を守るために今できること|食事・減塩・血圧|尾張旭市
医療従事者でも見落としがちな重要な点として、eGFRの「体表面積補正」と「非補正」の使い分けがあります。薬剤投与量の調整には、体表面積未補正のeGFR(単位:mL/min)を使用する必要があります 。
体表面積未補正eGFRの計算式は以下の通りです。
体表面積未補正eGFR = 体表面積補正eGFR ÷ 1.73 × 体表面積
細身の高齢者や筋肉量の少ない患者では、クレアチニン産生量が低下するため、eGFRが実際よりも高く算出される「偽正常」のリスクがあります 。このような症例では、シスタチンCを用いたeGFR(eGFRcys)の併用が推奨されます 。
また、SGLT2阻害薬投与開始後には、糸球体への血流動態変化によりeGFRが一時的に5〜10%低下することがありますが、これは薬理作用によるものであり、投与継続により長期的な腎保護効果が期待できます 。
日本腎臓学会 慢性腎臓病(CKD)診療ガイドライン 2023年版
eGFR計算ツール(協和キリン)
eCCRとeGFRの計算式と臨床的意義