
アンダーム軟膏は、帝國製薬が製造し日医工が販売していた非ステロイド性抗炎症外用剤です。一般名はブフェキサマクで、湿疹や皮膚炎などの炎症性皮膚疾患に対して使用されていました。
参考)http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se26/se2649725.html
ステロイドを避けたい患者への処方選択肢として、一時期は皮膚科臨床の現場でよく使われていた薬剤です。
つまり非ステロイド系の抗炎症薬ということですね。
しかし現在、この薬は国内で入手できません。カルテや古い処方歴に名前が残っていても、実際に調剤できない点に注意が必要です。
2010年、欧州医薬品庁がブフェキサマク配合外用剤について、接触皮膚炎(アレルギー性皮膚炎)のリスクを理由に製造販売承認の取り消しを勧告しました。この勧告を受け、日本国内の専門家の意見も踏まえたうえで、帝國製薬と日医工は自主的に販売中止を決定しています。
参考)https://www.nichiiko.co.jp/medicine/files/10_051.pdf
これは法的な販売禁止措置ではなく、あくまで企業側の自主判断による中止でした。
厳しいところですね。
接触皮膚炎のリスクという副作用面での懸念が、結果的に長期使用されてきた薬剤の市場撤退につながった事例です。同様の経緯をたどった外用薬は他にもあり、添付文書の改訂履歴やPMDAの医薬品安全性情報を定期的に確認する習慣が、こうした変更を見逃さないための一つの対策になります。
ここで注意したいのが、名称や見た目が似ている「フェノール・亜鉛華リニメント」との違いです。こちらは酸化亜鉛と液状フェノールを配合した収斂・消炎・保護剤で、アンダーム軟膏とは成分も薬理分類もまったく異なります。
参考)医療用医薬品 : フェノール・亜鉛華リニメント (フェノール…
適応疾患は皮膚瘙痒症、汗疹、じん麻疹、小児ストロフルスや虫さされなどです。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071153.pdf
意外ですね。
こちらは現在も製造販売されている薬剤で、通常1日1〜数回、適量を患部に塗布する用法用量が定められています。ただし損傷した皮膚や粘膜への使用は、成分の吸収による中毒症状のおそれがあるため避ける必要があります。名称の響きが似ているだけで別物という点は、若手スタッフへの引き継ぎ時にも伝えておきたいポイントです。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00011584.pdf
さらに紛らわしいのが「亜鉛華単軟膏」です。こちらはフェノールを含まず、酸化亜鉛のみを基剤とした収斂・消炎・保護・緩和な防腐を目的とした軟膏です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00000708.pdf
外傷、熱傷、凍傷、湿疹・皮膚炎、肛門そう痒症、白癬、面皰など幅広い皮膚疾患に用いられます。
刺激性が比較的少ないというのが特徴です。
フェノールを含む製剤に比べて刺激性が低いため、粘膜に近い部位やデリケートな皮膚にはこちらが選択されやすい傾向があります。眼への使用は禁忌とされている点は、亜鉛華リニメントと共通する注意事項です。処方箋を確認する際は、成分名が「酸化亜鉛」のみか「酸化亜鉛+液状フェノール」かをチェックするひと手間が、取り違え防止につながります。
現在、非ステロイド性抗炎症外用剤としての代替を検討する場合、他のNSAIDs外用剤やステロイド外用剤との使い分けが実務上のポイントになります。湿疹・皮膚炎群に対しては、ビスダーム軟膏のようなステロイド外用剤が幅広い適応を持つ選択肢として使われています。
参考)ビスダーム軟膏0.1%の基本情報・添付文書情報 - データイ…
皮膚感染を伴う場合は、抗菌剤や抗真菌剤との併用、あるいは先行治療が原則です。
これが基本です。
痒みを抑える目的であれば、フェノール・亜鉛華リニメントのような非ステロイド性の外用剤も一つの選択肢になり得ます。患者の年齢や皮疹の範囲、感染の有無に応じて処方を組み立てる流れは、アンダーム軟膏があった時代と大きくは変わっていません。過去の処方歴からアンダーム軟膏の記載を見つけた場合は、現行の代替薬へ速やかに切り替える確認作業が必要です。
参考)https://medical.itp.ne.jp/kusuri/shohou-20091026005418/