
炭酸リチウム(商品名:リーマス)は経口投与後、消化管から速やかに吸収されます。即放錠製剤では、血中濃度が最高値に達する時間(Tmax)は通常1.5~3時間と報告されています。徐放錠製剤では吸収が緩徐となり、Tmaxは2~6時間程度に遅延します。
参考)https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=c84cce95-cfcb-4426-aac6-d2f48f946ada&audience=consumer
吸収後の分布容積は0.7~0.9 L/kgであり、体内で広く分布します。特に重要なのは、リチウムが脳組織へ分布するまでに最大24時間を要する点です。この分布の遅延が、急性中毒症状の発現を遅らせる要因の一つとなっています。
治療薬物モニタリング(TDM)の採血タイミングは、次回投与直前のトラフ値(trough level)を評価するのが原則です。具体的には、前回投与から約12時間後に採血を行います。1日1回徐放錠投与の場合は24時間後での採血が推奨されます。
初期投与時や増量時は、原則として週1回の頻度で血中濃度を測定し、患者が安定するまで継続します。維持量が決定した後も、腎機能変動や併用薬の変更時に定期的な測定が必要です。
| 評価項目 | 基準・目安 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| 治療域(急性期) | 0.8~1.2 mEq/L | 躁病エピソードの急性治療目標 |
| 治療域(維持期) | 0.6~1.0 mEq/L | 再発予防のための維持目標 |
| 中毒域 | ≥1.5 mEq/L | 中毒症状発現リスクが急増 |
| 採血タイミング | 次回投与直前(12時間後) | トラフ値で正確な評価 |
| 定常状態到達 | 5~7日 | この期間後にTDM実施 |
参考:炭酸リチウム|作用機序・TDM・副作用・相互作用を完全ガイド
炭酸リチウムの抗躁効果の発現は、血中濃度の到達とは異なり、より緩徐な経過をたどります。臨床的な抗躁効果は、投与開始後1~3週間で出現し始めるとされています。
参考)https://biomedicus.gr/lithobid-side-effects-2/
十分な気分安定化効果を実感するには、さらに数週間から数か月を要する場合があります。これは、リチウムが神経伝達物質系や細胞内シグナル伝達系に漸進的な変化をもたらすためと考えられています。
双極性障害の維持療法においては、再発予防効果が投与継続とともに確立されます。自殺予防効果についても、長期投与により発現することが報告されており、即効性ではなく継続的投与が鍵となります。
参考)【精神科処方薬辞典💊】炭酸リチウム(リーマス)——「双極性障…
炭酸リチウムの最大の特徴かつ課題は、治療域と中毒域が極めて接近している点です。治療域が0.8~1.2 mEq/Lであるのに対し、中毒域は1.5 mEq/L以上と、わずか0.3~0.7 mEq/Lの差しかありません。
患者に対しては、効果発現に数週間を要することを事前に説明し、自己判断での中断を防ぐことが重要です。また、塩分摂取の急激な変動や脱水を避けるよう指導します。
【第2類医薬品】命の母A 840錠