
高尿酸血症を引き起こす可能性のある薬剤は多岐にわたります。医療現場で頻繁に使用される薬の中にも、尿酸値を上昇させる副作用を持つものが数多く存在します。
参考)薬剤・生活習慣と高尿酸血症について~特に利尿剤による副作用を…
主な薬剤性高尿酸血症の原因となる薬剤は以下の通りです。
参考)薬の副作用で尿酸値上昇?
特に注目すべきは、ピラジナミドによる高尿酸血症の発症頻度の高さです。同薬を処方された結核患者の約4割が発症したとの報告もあります。 また、低用量アスピリンは尿酸値を上昇させますが、大量投与(3g以上)では逆に尿酸値を低下させるという用量依存性の逆転現象を示すことも知られています。
参考)DIクイズ6:(A)高尿酸血症患者に出されたチラーヂンS:日…
薬剤が尿酸値を上昇させるメカニズムは、主に2つの経路に分類できます。一つは尿酸の産生が亢進する経路、もう一つは尿酸の排泄が妨げられる経路です。
参考)高尿酸血症
尿酸産生亢進の機序。
プリン体異化亢進により尿酸の産生が増加する薬剤がこれに該当します。特に以下の薬剤が代表的です。
がん化学療法に伴う腫瘍崩壊症候群(TLS)では、抗がん剤治療によりがん細胞が急速に大量に細胞死することで、細胞内物質が大量放出されます。その結果、高カリウム血症、高リン血症、高尿酸血症を呈し、さらに腎障害、不整脈、痙攣を引き起こし、突然死をも引き起こす重篤な合併症となります。
参考)がんにおける高尿酸血症 | 公益財団法人 痛風・尿酸財団
腫瘍崩壊症候群での尿酸値は40 mg/dLといった一般には見られないような高値となることがあり、急性腎不全を生じ致死的となるため、極めて迅速な対応が必要になります。
尿酸排泄低下の機序は、腎尿細管での尿酸再吸収を促進することにより生じます。この機序を理解するためには、腎尿細管における尿酸輸送の仕組みを知る必要があります。
参考)https://www.medisere.co.jp/mediserebook/pdf/pointbook20201202/read5.pdf
主な機序。
腎臓の近位尿細管において、尿酸トランスポーター(URAT1)が尿酸の再吸収を担っています。薬剤性高尿酸血症の多くは、このURAT1を介した機序で尿酸排泄を低下させます。
参考)https://hayase-kibou.jp/wp-content/uploads/2021/04/cba30eeef04a41a518545a49e29318a4.pdf
利尿薬による高尿酸血症の発現には、二段階のメカニズムが関与しています。初期には尿量、尿中ナトリウム排泄が増加し、尿酸の腎からの排出は促進され、尿酸値は低下します。しかし、継続使用すると、細胞外液量、腎血流量、糸球体濾過量の減少により、尿酸の再吸収は亢進することに加え、近位尿細管において、利尿薬が競合的に排泄低下を起こし血清尿酸値を上昇させます。
すなわち、近位尿細管管腔側膜のNa+依存性リン酸トランスポーター(NPT4)が尿酸を排泄する役割を果たしているのですが、利尿薬により競合的阻害を受けて尿酸排泄低下という結果になるわけです。
臨床現場で見落とされがちな意外な要因として、甲状腺機能異常が挙げられます。甲状腺と高尿酸血症の関係は、医療従事者でも十分に認識されていないことが多い重要なポイントです。
参考)甲状腺と尿酸/痛風・高尿酸血症[橋本病 バセドウ病エコー検査…
甲状腺機能低下症と高尿酸血症。
甲状腺機能低下症は高尿酸血症になりやすいことが知られています。高尿酸血症そのものが動脈硬化の危険因子であるため、甲状腺機能低下症の患者では心血管リスクが二重に高まることになります。
日本痛風・核酸代謝学会の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版」によると、高尿酸血症とは、性別や年齢を問わず血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるものと定義されています。また、原発性に加え、基礎疾患や薬剤による二次性高尿酸血症の可能性も念頭に置く必要があります。高尿酸血症を生じ得る疾患としては癌や腎障害、甲状腺機能異常などがあります。
臨床ケースの教訓。
例えば、高尿酸血症の患者にチラーヂンS(一般名レボチロキシンナトリウム水和物)が処方された場合、その患者の高尿酸血症は、甲状腺機能低下症に伴う二次性の高尿酸血症と推測されます。この場合、甲状腺ホルモンの補充療法により甲状腺機能低下症を改善することで、高尿酸血症も改善する可能性があります。
その他の意外な要因。
薬剤性高尿酸血症の治療では、原因薬剤の中止または減量が第一選択ですが、継続投与が必要な場合には適切な尿酸降下薬の選択が重要になります。
参考)https://jsn.or.jp/data/gl2024_ckd_ch05.pdf
尿酸生成抑制薬の比較。
| 薬剤名 | 作用機序 | 腎機能への影響 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| アロプリノール | キサンチンオキシダーゼ阻害 | 腎排泄型、用量調節必須 | 長年のエビデンス、相互作用多 |
| フェブキソスタット | 非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害 | 軽度〜中等度腎機能低下で用量調節不要 | がん化学療法に伴う高尿酸血症にも適応 |
| トピロキソスタット | 非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害 | 腎機能に応じて用量調節 | 比較的新規薬剤 |
参考)【高尿酸血症】アロプリノールやフェブキソスタットなどの尿酸生…
腎機能に応じた選択。
がん化学療法に伴う高尿酸血症。
フェブキソスタットは、アロプリノールと比して尿酸値AUCが優位に低下していることが示され、本邦でのTLS予防を目的とした臨床試験でアロプリノールに対する非劣勢が示されています。
参考)https://www.nejm.jp/abstract/vol353.p2450
臨床的注意点。
薬剤性高尿酸血症の予防には、適切な薬剤選択に加え、生活習慣の改善が不可欠です。過食、高プリン・高脂肪・高たんぱく質食嗜好、常習飲酒、運動不足などの生活習慣は、高尿酸血症の発症リスクを高めます。
参考)高尿酸血症
具体的な予防策。
利尿薬による高尿酸血症への対応。
利尿薬によってもたらされた高尿酸血症に対しても、積極的に尿酸値を下げるべきとされています。利尿薬の中でカリウム保持性利尿薬は尿酸代謝への影響が少ないため、高尿酸血症リスクのある患者ではこの系統の利尿薬を選択肢として考慮することも有効です。
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版[2022年追補版]
このガイドラインには、高尿酸血症の定義、治療基準、薬剤選択のアルゴリズムが詳細に記載されています。
薬剤性高尿酸血症の機序と臨床的対応について、症例を交えて解説されています。
CKD における高尿酸血症の治療
腎機能障害を合併した高尿酸血症患者への治療アプローチについて、最新の知見がまとめられています。
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