
シスプラチンの場合、顕著な吐き気と嘔吐は治療を受けたほとんどすべての患者に発生し、投与後1-4時間以内に始まり、最大で24時間続くことが報告されています。 悪心・嘔吐の発現頻度は、悪心が70-80%、嘔吐が60-70%と非常に高頻度です。
参考)シスプラチン(シスプラチン注射液)の副作用、警告、用途
急性期CINVの発現機序としては、抗がん剤によって腸管のクロム親和性細胞からセロトニンが遊離し、消化管内の知覚神経を刺激して求心性に刺激が伝わり、化学受容器引金帯(CTZ)や延髄の嘔吐中枢を刺激することで吐き気が引き起こされます。 この機序を踏まえ、5-HT3受容体拮抗薬(オndanセトロン、グラニセトロンなど)が急性期CINVの予防に有効とされています。
参考)急性嘔吐と遅発性嘔吐の違い(抗がん剤副作用) - つねぴーb…
遅発性CINVの発現機序は急性期とは異なり、抗がん剤によって知覚神経からサブスタンスPが遊離し、NK1受容体を直接刺激することにより吐き気が誘発されます。 この機序の違いから、遅発性CINVの予防にはNK1受容体拮抗薬(アプレピタント、ホラピタントなど)やデキサメタゾンの継続投与が推奨されています。
シスプラチン投与後は、24時間以内に起こる急性の悪心・嘔吐がかなりひどく、いったん治まった後、24時間を過ぎてから再び緩やかな波が来る傾向にあります。 遅延性の悪心・嘔吐を抑えるには、2日目から4日目ぐらいまでデキサメタゾンを1日2回、計8mg服用するのがよいとされています。
日本臨床腫瘍学会のガイドラインでは、催吐性が高度の化学療法を受けている患者における悪心・嘔吐リスクは、化学療法最終投与後最低3日間持続するとされています。 シスプラチンは高度催吐性リスクに分類されるため、投与後5日間程度の制吐対策が必要となります。
参考)https://www.hos.akita-u.ac.jp/onco/files/antiemetic-drug-guidelines-3rd-dec-2017.pdf
シスプラチンによる骨髄抑制は、総症例における副作用発現率85.6%の中で、白血球減少36.5%、貧血28.0%、血小板減少17.0%と報告されています。 骨髄抑制の発現時期は、抗がん剤を投与してから7-14日目くらいで最も減少すると考えられています。
参考)シスプラチンが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧
好中球減少の発現時期の目安はday7-14で、グレード3以上の有害事象として好中球減少74%、白血球減少46%が報告されています。 血小板や白血球の減少は、18日目から23日目(範囲7.5から45)の間に起こり、ほとんどの患者は39日目(範囲13から62)までに回復します。
シスプラチン+ドセタキセル療法のエキスパート編では、悪心・嘔吐の発現時期の目安をday1-7、好中球減少をday7-14、皮膚障害をday7-14、脱毛をday14-と具体的に示しています。 このタイミングを踏まえて、適切な血液検査のスケジュールを組むことが重要です。
一般的には約2-4週間で回復してきますが、減少する程度によって治療を休むことや投与量を減量することがあります。 また、放射線療法を併用している方は、骨髄抑制が強く出ることがあるため、より頻回なモニタリングが必要です。
シスプラチンの腎毒性は、投与後2週間目に初めて認められ、BUN、クレアチニン、血清尿酸の上昇および/またはクレアチニンクリアランスの低下によって示されます。 シスプラチン投与後の急性腎障害(AKI)は3割程度の症例で起こり、血清Cr値は投与3日後ころから上昇し、6-10日後にピークとなります。
実際のAKI診断基準としては、シスプラチン投与前から投与3日後または4日後の血清Cr値の50%以上上昇がしばしば用いられています。 腎機能障害の発現時期の目安は2-4週間とされています。
参考)シスプラチン(CDDP)(ランダ) – 呼吸器治…
シスプラチンの腎毒性は尿細管障害が主体であり、特に近位尿細管での蓄積が問題となります。この機序を踏まえ、十分な水分投与(術前・術後2000-3000mL/日)と利尿薬の併用が推奨されています。また、マンニトールやフロセミドによる強制利尿が腎毒性軽減に有効とされています。
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法開始前にみられる腎障害ガイドライン - シスプラチン投与後のAKI診断基準とモニタリング方法が詳しく記載されています。
シスプラチンによる末梢神経障害は、投与中に発症することが一般的ですが、最終投与から3-8週間後に神経障害の症状が始まることもまれに報告されています。 神経毒性の発現時期の目安は症状改善までとされ、投与間隔の延長が必要な場合があります。
シスプラチンの副作用として手足のしびれがあり、頻度としては高くありませんが、投与を重ねるごとに強くなる場合があります。 ボタンがかけづらい、物を落としやすい、つまづきやすいなど日常生活に支障がある場合は担当医への相談が必要です。
聴力障害については、シスプラチンの副作用として高音域での難聴が知られています。 頻度は高くありませんが、進行してしまうと回復しづらく有効な治療法もありません。 高い音が聞き取りづらい、耳の中でベルが鳴っているような音が聞こえるなどの症状がありましたら、早期発見が重要な対策になります。
シスプラチン神経障害は用量依存性であり、累積投与量が増えるほど発現頻度と重症度が増加します。このため、累積投与量の管理と定期的な神経学的評価が重要です。
PMDA シスプラチン注「マルコ」添付文書 - 副作用発現頻度と臨床検査値異常の詳細なデータが記載されています。
医療従事者としての独自視点ですが、シスプラチンの副作用管理において重要なのは、各副作用の発現時期を踏まえた「個別化モニタリングスケジュール」の作成です。標準的なガイドラインに加えて、患者の年齢、腎機能、併用薬、累積投与量を考慮したカスタマイズが必要です。
特に注意すべきは、高齢患者や基礎腎機能低下患者では、クレアチニンクリアランスが50mL/分未満の場合、シスプラチンの投与量を25-50%減量することが推奨されます。また、累積投与量が300mg/m²を超えると、神経毒性と聴力障害のリスクが顕著に増加するため、これらの患者では定期的な神経学的評価と聴力検査の実施が不可欠です。
このように、標準的な副作用だけでなく、比較的低頻度だが臨床的に問題となる副作用についても、発現時期を把握しておくことが早期発見・早期対応につながります。各医療機関では、シスプラチン投与患者向けの副作用モニタリングチェックリストを作成し、投与日からの経過日数に応じてチェックすべき項目を明確化することが推奨されます。
【第3類医薬品】チョコラBBプラス 180錠