
高尿酸血症を引き起こす薬剤の中でも、特に頻用されるのが利尿薬です。サイアザイド系利尿薬やループ利尿薬(フロセミドなど)は、高血圧や心不全、浮腫の治療に広く用いられていますが、高尿酸血症を副作用として引き起こすことが知られています。
参考)https://hayase-kibou.jp/wp-content/uploads/2021/04/cba30eeef04a41a518545a49e29318a4.pdf
利尿薬による高尿酸血症の機序は多段的です。投与初期には尿量が増加し、尿酸の腎からの排泄が促進されるため尿酸値は一時的に低下します。しかし、継続使用によって細胞外液量、腎血流量、糸球体濾過量(GFR)が減少し、尿酸の再吸収が亢進します。
参考)薬剤・生活習慣と高尿酸血症について~特に利尿剤による副作用を…
さらに、近位尿細管において利尿薬が尿酸と競合的に排泄を阻害することで、尿酸排泄が低下します。具体的には、近位尿細管管腔側膜のNa+依存性リン酸トランスポーター(NPT4)が尿酸排泄に関与していますが、利尿薬によりこのトランスポーターが競合的に阻害され、結果として血清尿酸値が上昇します。
また、循環血漿量が低下することで原尿が減少し、URAT1(尿酸トランスポーター1)を介した尿酸の再吸収が亢進することも機序の一つです。
トリクロルメチアジド(フルイトラン)などのサイアザイド系利尿薬の添付文書には、「本人又は両親、兄弟に痛風、糖尿病のある患者では高尿酸血症、高血糖症を来し、痛風、血糖値の悪化や顕性化のおそれがある」と明記されています。
利尿薬と高尿酸血症の詳細な機序について解説した資料(院長コラム)
このリンク先では、利尿薬による尿酸値上昇の機序を細胞外液量減少、URAT1再吸収亢進、NPT4阻害の観点から詳しく説明しています。
シクロスポリンによる高尿酸血症の機序は、主に尿酸排泄低下型です。シクロスポリンは糸球体濾過率(GFR)を低下させることで尿酸の排泄を減少させます。また、ATP欠乏によるアデニン核酸分解の亢進や、高乳酸血症による尿酸再吸収促進も関与しています。
参考)https://www.j-athero.org/chart2025/chart2025_qr10.pdf
抗結核薬のピラジナミドやエタンブトール塩酸塩も、尿酸排泄低下型の二次性高尿酸血症を引き起こす代表的な薬剤です。これらは尿細管でのURAT1による尿酸再吸収を促進することで、血清尿酸値を上昇させます。
これらの薬剤を使用している患者では、定期的な血清尿酸値のモニタリングが不可欠です。高尿酸血症が持続すると、痛風発作だけでなく、腎障害や心血管イベントのリスクも高まります。
代表的な二次性高尿酸血症の原因薬剤と分類(日本動脈硬化学会)
この資料では、尿酸産生過剰型と尿酸排泄低下型の二次性高尿酸血症を引き起こす薬剤を詳細に分類しています。
アスピリン(サリチル酸)は、用量によって尿酸値に与える影響が異なるという、非常に興味深い特徴を持っています。
低用量のアスピリン(1日100mg以下の低用量)は、尿酸排泄を低下させ、高尿酸血症を引き起こす可能性があります。これは、低用量アスピリンが尿細管での尿酸分泌を阻害するためです。
一方、高用量のアスピリン(1日3g以上)は、逆に尿酸排泄を促進し、尿酸値を低下させる作用があります。ただし、高用量アスピリンは胃腸障害などの副作用リスクが高いため、高尿酸血症の治療目的で使用されることはほとんどありません。
この用量依存性は、アスピリンが尿酸トランスポーター(URAT1、OAT1、OAT3など)に対して異なる親和性を示すためと考えられています。低用量ではURAT1を介した再吸収促進が優勢となり、高用量ではOAT1/3を介した分泌促進が優勢となります。
参考)選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)としてのユリス®錠の作用機…
心血管疾患予防のために低用量アスピリンを服用している患者は多数存在するため、これらの患者では尿酸値のモニタリングが特に重要です。痛風や高尿酸血症の既往がある患者では、アスピリンの代替薬(例:クロピドグレル)の検討も必要となる場合があります。
高尿酸血症の治療薬は、大きく分けて「尿酸生成抑制薬」と「尿酸排泄促進薬」の2種類に分類されます。
参考)https://www.medisere.co.jp/mediserebook/pdf/pointbook20201202/read5.pdf
尿酸生成抑制薬
参考)https://jsn.or.jp/data/gl2024_ckd_ch05.pdf
尿酸排泄促進薬
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000143908.pdf
参考)ドチヌラド(ユリス)から学ぶ尿酸排泄の歴史。実習・国試〜臨床…
治療薬の選択基準
日本腎臓学会のCKDガイドラインでは、腎障害合併例や尿路結石保有例では、尿酸生成抑制薬の使用が推奨されています。アロプリノールは腎機能に応じた減量が必要ですが、フェブキソスタットやトピロキソスタットはCKD患者でも比較的安全に使用できます。
ベンズブロマロンは、重篤な肝障害(劇症肝炎)のリスクがあるため、2000年2月に緊急安全性情報が発出されており、投与開始後少なくとも6ヶ月間は必ず定期的に肝機能検査を行うことが添付文書で推奨されています。
参考)https://sakuragaoka.jcho.go.jp/wp-content/uploads/2024/06/kounyousan-tuuhutiryouzai202402.pdf
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版[2022年追補版]
このガイドラインでは、高尿酸血症の薬物治療の適応、薬剤の選択基準、目標尿酸値などが詳細に記載されています。
ここまでの解説では、従来の薬剤分類に基づいて高尿酸血症の機序と治療薬を説明してきましたが、実は「インスリン抵抗性」と「URAT1」の関係について、あまり知られていない重要な視点があります。
インスリン抵抗性は、高インスリン血症を招きます。この高インスリン血症が、間接的に近位尿細管においてURAT1を介した尿酸の再吸収を亢進させることが示唆されています。その結果、血中尿酸が増加し、高尿酸血症の病態をきたす可能性があると考えられています。
この機序は、メタボリックシンドロームや2型糖尿病患者で高尿酸血症の有病率が高い理由の一つを説明しています。肥満の場合には、混合型(尿酸産生過剰と排泄低下の両方)の高尿酸血症が多いとも報告されています。
参考)高尿酸血症
この視点から考えると、高尿酸血症の治療において、単に尿酸降下薬を使用するだけでなく、生活習慣改善によるインスリン感受性の改善(食事療法、運動療法)も重要な治療戦略となります。実際に、高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、まず生活習慣の改善を指導し、それでも血清尿酸値が低下しない場合に薬物治療を考慮することが推奨されています。
また、ドチヌラド(ユリス)のようなURAT1選択的阻害薬は、このインスリン抵抗性によるURAT1亢進を直接的にブロックできるため、メタボリックシンドローム合併例での有効性が期待されています。
参考)http://asunorinsho.aichi-hkn.jp/wp-content/uploads/2015/08/2004_1602_111.pdf
ユリスの作用機序とインスリン抵抗性の関係(持田製薬)
このページでは、URAT1選択的阻害薬の作用機序と、インスリン抵抗性による尿酸再吸収亢進の機序について詳しく解説しています。
最後に、高尿酸血症の原因となる薬剤を使用中の患者に対する臨床的な注意点を整理します。
CKDにおける高尿酸血症の治療(日本腎臓学会ガイドライン)
このガイドラインでは、腎障害合併例における高尿酸血症の治療方針、薬剤の選択、目標尿酸値などが詳細に記載されています。
医療従事者として、高尿酸血症の原因となる薬剤の機序を理解し、適切なモニタリングと治療を行うことで、患者の痛風発作や腎障害、心血管イベントのリスクを低減させることができます。
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