
タフルプロストを有効成分とする点眼剤の先発医薬品は、参天製薬が製造販売する「タプロス点眼液0.0015%」および「タプロスミニ点眼液0.0015%」です。 タフルプロストはプロスタグランジンF2αのフッ素原子含有誘導体であり、プロスタノイドFP受容体に対する極めて強力で選択的な作動薬として作用します。 活性代謝物であるタフルプロストカルボン酸は、ヒトのFP受容体に対しラタノプロストの約12倍高い親和性(Ki=0.40nM)を示すことが確認されています。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2008/P200800044/300237000_22000AMX02366_B102_2.pdf
タフルプロストはプロドラッグとして設計されており、角膜中のエステラーゼでイソプロピルエステルが加水分解されて生成したカルボン酸がFP受容体に結合して作用を発揮します。 この高い受容体親和性により、0.0015%という低濃度でも強力かつ安定した眼圧下降作用を発揮することが臨床試験で確認されています。
参考)https://www.agc.com/innovation/library/pdf/64-02.pdf
先発品の薬価は、タプロス点眼液0.0015%(1mL)で541.7円/mL、タプロスミニ点眼液0.0015%(0.3mL×1個)で54.6円/個となっています。 参天製薬と旭硝子株式会社が共同開発した本剤は、2008年に承認取得以来、緑内障・高眼圧症治療の第一選択肢として広く使用されてきました。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2008/P200800044/300237000_22000AMX02366_B100_2.pdf
タフルプロストの後発医薬品(ジェネリック)は、2023年2月15日付で複数の製薬会社から承認取得され、市場に登場しました。 主な後発品としては、東亜薬品の「タフルプロスト点眼液0.0015%『NIT』」、テイカ製薬の「タフルプロスト点眼液0.0015%『TS』」、千寿製薬の「タフルプロスト点眼液0.0015%『センジュ』」、ロートニッテンの「タフルプロスト点眼液0.0015%『日点』」、わかもと製薬の「タフルプロスト点眼液0.0015%『わかもと』」などがあります。
後発品の薬価はメーカーによって若干の差異がありますが、おおむね242.2円〜308円/mLの範囲に設定されています。 具体的には、東亜薬品品が279.1円/mL、テイカ製薬・千寿製薬・ロートニッテン・わかもと製薬品が308円/mL、一部の加算対象品で242.2円/mLとなっています。 先発品(541.7円/mL)と比較すると、後発品は約43〜57%の薬価水準となり、医療経済的なメリットが大きいことがわかります。
参考)テイカ製薬
| 製品名 | メーカー | 薬価(円/mL) | 先発後発区分 |
|---|---|---|---|
| タプロス点眼液0.0015% | 参天製薬 | 541.7 | 先発品 |
| タプロスミニ点眼液0.0015% | 参天製薬 | 54.6/個 | 先発品 |
| タフルプロスト点眼液0.0015%「NIT」 | 東亜薬品 | 279.1 | 後発品 |
| タフルプロスト点眼液0.0015%「TS」 | テイカ製薬 | 308 | 後発品 |
| タフルプロスト点眼液0.0015%「センジュ」 | 千寿製薬 | 308 | 後発品 |
| タフルプロスト点眼液0.0015%「日点」 | ロートニッテン | 308 | 後発品 |
| タフルプロスト点眼液0.0015%「わかもと」 | わかもと製薬 | 308 | 後発品 |
後発医薬品は、先発品と同等の有効性・安全性を有することが生物学的同等性試験で確認された上で承認されています。 診療報酬上の後発医薬品加算の対象となるため、処方箋医薬品としての経済的負担軽減が期待できます。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00006177.pdf
タフルプロストの作用機序は、プロスタノイドFP受容体を刺激し、ぶどう膜強膜経路による房水流出を促進することによる眼圧下降作用です。 タフルプロストカルボン酸体は、プロスタノイドFP受容体に対して高い親和性(Ki=0.40nM)を示し、ラタノプロストのカルボン酸の約12倍、ウノプロストンの約1700倍の強力なヒトFP受容体親和性を示します。
サルを用いた薬理試験では、タフルプロストはラタノプロストの約1/10の低濃度においても強力な眼圧下降作用を発揮し、点眼24時間後まで眼圧下降作用が持続することが明らかとなりました。 この強力かつ持続的な眼圧下降作用は、原発開放隅角緑内障や高眼圧症だけでなく、日本人に多い正常眼圧緑内障を対象にした臨床試験においても確認されています。
正常眼圧緑内障患者95例(有効性解析対象90例)を対象とした無作為化盲検比較試験において、タフルプロスト点眼液を1日1回、4週間点眼した結果、投与後4週の眼圧変化値は−4.0±1.7mmHgであり、プラセボ対照薬に比し有意な眼圧下降を認めました。 また、原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者109例(有効性解析対象97例)を対象としたラタノプロストとの非劣性比較試験では、タフルプロスト投与後4週の眼圧変化値は-6.6±2.5mmHgであり、対照薬に対する非劣性が検証されています。
参考)医療用医薬品 : タプロス (タプロス点眼液0.0015% …
タフルプロストの注目すべき特徴の一つに、眼血流増加作用があります。 健康成人に0.0015%タフルプロスト点眼液を単回点眼したとき、傍視神経乳頭網膜動脈の血流速度及び傍視神経乳頭網膜の組織血流量の有意な増加が認められました。
ウサギに本剤を1日1回28日間反復点眼し、レーザースペックル法で測定したところ、視神経乳頭部組織血流量の有意な増加が認められました。 さらに、正常眼圧緑内障患者を対象とした臨床試験でも、タフルプロストの点眼により14日目及び28日目のトラフ眼血流が、基剤点眼群に比し有意に増加することが確認されています。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2008/P200800044/300237000_22000AMX02366_B101_2.pdf
眼血流増加作用は、緑内障治療において視神経保護の観点から重要な意味を持ちます。 特に関動脈灌流圧が低い正常眼圧緑内障患者において、眼圧下降だけでなく眼血流改善効果も期待できる点は、タフルプロストの臨床的優位性を示すエビデンスと言えます。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2008/P200800044/300237000_22000AMX02366_F100_2.pdf
タフルプロストの副作用として、プロスタグランジン系点眼剤に特徴的なものが報告されています。 0.0015%タフルプロスト点眼液において、睫毛の成長(睫毛が長くなる、太くなる、多くなる等)は19.0%(92/483例)、眼瞼色素沈着は6.6%(32/483例)、虹彩色素沈着は8.1%に認められました。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2008/P200800044/300237000_22000AMX02366_G100_2.pdf
これらの事象は点眼期間に依存し、長期試験でのみ認められる傾向があります。 虹彩色調変化については投与中止後も消失しないことが報告されており、特に混合色虹彩の患者では色調変化が明確に認められます。 一方、眼瞼色調変化及び眼周囲の多毛化については、投与中止後徐々に消失、あるいは軽減する可能性があります。
参考)タフルプロスト点眼液0.0015%「NIT」の基本情報(薬効…
その他の副作用として、結膜充血(31.3%)、眼そう痒感、眼刺激、眼異物感、点状表層角膜炎等の角膜上皮障害、眼異常感などが5%以上に認められています。 1〜5%未満では眼痛、眼瞼部多毛、眼脂、羞明、眼重感、流涙増加、霧視、結膜浮腫、眼瞼炎などが報告されています。
頻度不明の副作用として、上眼瞼溝深化、黄斑浮腫が挙げられています。 黄斑浮腫は、特に水晶体後嚢が破綻している患者や人工水晶体挿入眼でリスクが高いため、これらの患者では慎重な投与が必要です。
タフルプロスト点眼液の先発医薬品と後発医薬品の製剤学的比較試験が実施され、生物学的同等性が確認されています。 後発医薬品は、先発品と同等の有効成分(タフルプロスト0.0015%)を含有し、規格及び試験方法を設定した上で、加速試験、生物学的同等性試験を実施して承認を取得しています。
生物学的同等性試験では、先発品(タプロス点眼液0.0015%、参天製薬)と後発品(タフルプロスト点眼液0.0015%「NIT」、日東メディック)を比較し、血中濃度推移や薬物動態パラメータに有意差がないことが確認されています。 これにより、後発品は先発品と同等の治療効果が期待できることが科学的に裏付けられています。
ただし、添加物や容器の形状、点眼のしやすさなど、製剤としての使いやすさには若干の差異がある可能性があります。 患者によっては、先発品の方が点眼しやすい、または後発品の方が経済的負担が少ないといった個別の事情も考慮し、医師と患者が相談の上で適切な製剤を選択することが推奨されます。
参考)https://socu.repo.nii.ac.jp/record/2000114/files/SU10008000004.pdf
PMDA タプロス点眼液0.0015% 添付文書
この添付文書には、タフルプロストの薬理作用、臨床試験データ、副作用情報などが詳細に記載されており、医療従事者向けの重要な情報源です。
タフルプロストを含む配合剤として、「タプコム配合点眼液」(参天製薬)およびその後発品「タフチモTM配合点眼液『NIT』」があります。 本剤の配合成分であるタフルプロストの活性代謝物(タフルプロストカルボン酸体)は、プロスタノイドFP受容体作動薬であり、一方の配合成分であるチモロールマレイン酸塩は、非選択的β-受容体遮断剤です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00063640.pdf
両剤は異なる作用機序により眼圧下降作用を示し、単剤では十分な眼圧下降が得られない場合や、複数剤の併用を簡素化したい場合に有用な選択肢となります。 タプコム配合点眼液も、先発品として承認され、後発品が2023年2月15日付で承認取得されています。
参考)https://yakuzaishi.love/entry/generic-drugs-approval-20230215
配合剤の利点として、点眼回数の削減による患者のアドヒアランス向上、防腐剤(ベンザルコニウム塩化物)の曝露量低減、薬価の経済的メリットなどが挙げられます。 一方、β遮断薬の禁忌(気管支喘息、高度な徐脈、心ブロック等)がある患者では使用できないため、患者の基礎疾患を十分に評価した上で処方する必要があります。
タフルプロスト単剤と配合剤の選択は、患者の眼圧コントロール状況、併用薬の有無、基礎疾患、経済的負担などを総合的に判断して決定することが重要です。