腎機能が正常でも、サンリズムの1回目の点滴投与で心室細動が起きた報告がある。
参考)https://medical.itp.ne.jp/kusuri/shohou-20091026001049/

サンリズム注射液(一般名:ピルシカイニド塩酸塩水和物)は、第一三共が製造する不整脈治療剤で、Naチャネル遮断作用(Ic群)を持ちます。 心房細動を含む緊急治療を要する頻脈性不整脈(上室性・心室性)に適応があります。 点滴静注(正確には静脈内緩徐投与)で使用されるのが注射剤であり、経口薬のカプセル剤とは用途が明確に異なります。
参考)医療用医薬品 : サンリズム (サンリズム注射液50)
サンリズムのIc群としての特徴は「純粋なNaチャネル遮断」です。β遮断やCaチャネル遮断作用を持たないため、心拍数低下効果は弱い一方、心房内の伝導速度を落とすことで心房細動の停止に働きます。 臨床試験では発作性上室性頻拍に対する有効率89.3%が報告されており、心室性期外収縮でも76.6%の有効率が確認されています。 これは使えそうです。
適応となる心房細動は「緊急治療を要する頻脈性」のケースです。つまり、慢性心房細動の維持管理には用いません。 発作性心房細動で除細動目的に使用する場面が中心となります。
参考)サンリズム注射液50の基本情報・添付文書情報 - データイン…
| 剤形 | 適応 | 用法 |
|---|---|---|
| 注射液(点滴・静注) | 緊急性のある頻脈性不整脈 | 体重あたり静注10分 |
| カプセル25mg/50mg | 維持療法(他薬無効時) | 1日150mg、3回分割 |
投与量は症状によって明確に区別されています。
「10分間で静注」という規定には理由があります。短時間(たとえば2〜3分)で大量のNaチャネル遮断薬を投与すると、Cmaxが急激に上昇し催不整脈作用や血圧低下が出現しやすくなります。 体重60kgの患者に頻拍の適応で投与する場合、1.0mg/kg×60kg=60mgを10分間で投与する計算になります。
参考)http://di-pedia.com:808/DIC_GOOCO%5CAttach%5C2129408A1020_3_04.html
体重計算を誤るケースが現場では起きやすい点に注意です。たとえば理想体重ではなく実体重を使う、または計算の単位をmg/kgでなくmL/kgと混同するミスが起こりやすいです。 計算が基本です。
希釈方法も押さえておきましょう。生理食塩液または5%ブドウ糖注射液で「必要に応じて」希釈とされており、原液のまま投与も可能ですが、希釈した方が投与速度の調節がしやすくなります。
サンリズムの禁忌として最重要なのがうっ血性心不全です。 Ic群抗不整脈薬全般に言えることですが、心収縮力の低下した患者に強力なNaチャネル遮断薬を使用すると、心機能をさらに悪化させる可能性があります。
慎重投与が必要な状況は以下のとおりです。
心房細動患者へのサンリズム投与前に、直近のエコーや胸部レントゲンでLVEFや肺うっ血の有無を確認する習慣が事故防止につながります。
参考:PMDAによるサンリズム注射液50添付文書(禁忌・慎重投与の詳細)
サンリズム注射液50 添付文書(PMDA)
投与中に必ず監視すべき2項目は「血圧」と「心電図」です。 これは添付文書に明記されている義務的モニタリングであり、ベッドサイドを離れた状態での投与は許容されません。
心電図上でまず注意すべきはQRS幅の増大です。 Naチャネル遮断が効いている指標でもありますが、幅が広がりすぎると心室性不整脈誘発のリスクが高まります。臨床上の目安として、QRS幅が投与前の150%以上に広がった場合には投与を中止する判断が求められます。
主な副作用として知っておくべき症状をまとめます。
催不整脈(proarrhythmia)は意外に見落とされやすい副作用です。抗不整脈薬が不整脈を悪化させるというパラドックスですが、Ic群ではCASTスタディ以来このリスクが広く知られています。 「投与後に新しい不整脈が出た」という状況を見たら、まずサンリズムの影響を疑うことが原則です。
副作用出現時の対応フローとして、徐脈・高度ブロック出現時にはアトロピン静注や一時的ペーシングの準備も念頭に置いておく必要があります。
サンリズム(ピルシカイニド)の最大の薬物動態学的特徴は腎排泄率がほぼ100%という点です。 これは抗不整脈薬の中でも際立った特性であり、腎機能が低下した患者では薬物が体内に蓄積し、通常用量でも過量投与と同様の副作用が出現します。
高齢者(75歳以上)では腎機能が生理的に低下しているため、副作用リスクが著しく高まります。 実際に75歳以上での投与量を減量することが推奨されており、画一的な「1.0mg/kg」投与は避けるべきです。
透析患者への投与は特に慎重な対応が必要です。 経口薬では透析患者に対して1日25mgから開始するよう規定されており、注射薬においても同等の注意が求められます。投与量の半量以下での開始を基本として考えるべきでしょう。 サンリズムカプセル50mgの基本情報(副作用・効果効能・電子…
腎機能評価のポイントを整理します。
「緊急だから腎機能を確認する余裕がない」という場面もあります。そのような状況では初回投与を標準より少なめ(たとえば0.5mg/kg程度)にしてから効果と副作用をみる、という現実的なアプローチも考慮に値します。 一発目の投与時は最低限観察を徹底することが条件です。
参考:drugwiki(ピルシカイニド詳細薬物動態・有効率データ)
サンリズム注射液50 薬物動態・臨床成績(drugwiki)
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