
トラゼンタ錠(一般名:リナグリプチン)は、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社によって開発されたDPP-4阻害薬です。 2011年7月1日に「2型糖尿病(ただし、食事療法・運動療法のみでは十分な効果が得られない場合に限る)」を効能・効果として製造販売承認を取得し、同年7月に日本で発売されました。 発売とほぼ同時期に、アメリカでは2011年5月、ヨーロッパでは2011年8月にも承認されており、世界的に早期から使用されてきた薬剤です。
参考)血糖値の薬トラゼンタってどんな薬?1日1回で効くって本当?
2013年3月には効能・効果が「2型糖尿病」へと拡張され、より広範な患者層への使用が可能となりました。 1日1回1錠投与という簡便な用法と、腎機能に関わらず同一用量で投与可能という特徴から、臨床現場で広く普及している薬剤として位置づけられています。
参考)2026.02.09 「ベーリンガー インゲルハイム v. …
発売から15年が経過した2026年8月17日、厚生労働省は後発医薬品として17成分77品目を承認し、その中にトラゼンタの後発品が含まれました。 後発品として初めて承認される「初後発品」5成分の中にトラゼンタが含まれ、今回最多の8社が承認を取得しています。 承認を得たのは、沢井製薬、日新製薬、全星製薬、東和薬品、ニプロ、ダイト、日本ジェネリック、キョーリンリメディオの8社で、5mg錠の1規格です。
参考)https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=80710
トラゼンタ(リナグリプチン)の製品情報 - 糖尿病リソースガイド
このリンク先にトラゼンタの薬価、効能・効果、用法・用量、警告・禁忌などの基本情報が記載されています。
リナグリプチンの最大の特徴は、その排泄経路にあります。 多くのDPP-4阻害薬が腎排泄を主経路としているのに対し、リナグリプチンは胆汁を介して未変化のまま糞中へ排泄されるという独特の薬物動態を示します。 具体的には、投与量の約80%が腸肝循環を経て胆汁・腸管側から排泄され、腎臓からの排泄は約5%に留まります。
この特性により、腎機能が低下している患者でも用量調整が不要という臨床的に極めて重要な利点があります。 慢性腎臓病(CKD)患者や高齢者など、腎機能が変動しやすい集団において、処方変更の手間が省け、治療継続性が向上します。 eGFRが30ml/min/1.73m²未満の重症腎機能障害患者でも、通常用量(5mg/日)で使用可能です。
参考)治療法・薬剤比較ツール
ただし、注意すべき点として、腎臓から排泄されにくいという特徴は、腎保護作用を意味するものではありません。 リナグリプチン自体が腎機能を改善する効果があるわけではなく、あくまで「腎機能低下時でも安全に使用できる」という薬物動態上の利点に過ぎません。この点を混同して患者に説明しないよう注意が必要です。
参考)薬剤師向け|DPP-4阻害薬使い分け完全版|精神科薬剤師|パ…
治療法・薬剤比較ツール - 糖尿病とダイエットの治療選択肢
このリンク先にDPP-4阻害薬を含む糖尿病治療薬の分類、効果、副作用、特徴の一覧表が掲載されています。
国内試験(1,170例)では、11.5%に副作用(検査値の変化含む)が認められました。 よくある副作用として、低血糖が2.1%、便秘が1.7%、鼓腸(おなかにガスがたまる)が1.0%報告されています。 低血糖は特にスルホニルウレア剤(SU薬)やインスリン製剤との併用でリスクが増加し、SU薬との併用で重篤な低血糖があらわれ、意識消失を来たす例も報告されています。
重大な副作用(頻度不明含む)として、以下の4つが特に注意を要します。
🔴 低血糖(意識障害のおそれあり)
特にSU薬・インスリン併用で増加。低血糖症状が認められた場合には、糖質を含む食品を摂取するなど適切な処置を行う必要があります。
🔴 イレウス(腸閉塞)
高度の便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うことが添付文書で明記されています。 DPP-4阻害薬全体で腸管運動への影響が指摘されており、特に高齢者や術後患者では注意深い観察が必要です。
🔴 肝機能障害
定期的な肝機能検査(AST、ALT、ALP、ビリルビン等)のモニタリングが推奨されます。原因不明の倦怠感、食欲不振、黄疸などが出現した場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行います。
🔴 類天疱瘡(水ぶくれができる皮膚病)
DPP-4阻害薬に特有の皮膚障害として注目されています。 水疱、びらん、口腔内病変などが出現した場合には、皮膚科との連携を含めた早期対応が必要です。2025年のFAERSデータベース分析では、GLP-1受容体作動薬と比較してDPP-4阻害薬使用者の方が皮膚有害事象の報告割合が高いというデータも報告されています。
その他の副作用として、過敏症(じん麻疹、血管性浮腫、気管支収縮)、代謝及び栄養障害(高トリグリセリド血症、高脂血症)、神経系障害(浮動性めまい)、呼吸器症状(鼻咽頭炎、咳嗽)、胃腸障害(腹部膨満、便秘、鼓腸、胃腸炎、口内炎)などが0.3%以上または頻度不明で報告されています。
リナグリプチン錠5mg「ニプロ」の添付文書・薬価・薬剤評価 - m3.com
このリンク先にリナグリプチンの添付文書(副作用など)や薬価、医師による薬に関する評価や口コミが掲載されています。
2026年8月17日付で、トラゼンタの後発医薬品が初めて承認されました。 承認を取得したのは、沢井製薬、日新製薬、全星製薬、東和薬品、ニプロ、ダイト、日本ジェネリック、キョーリンリメディオの8社で、これは今回承認された後発品の中で最多の参入社数です。 東和薬品と日本ジェネリックはOD錠(口腔内崩壊錠)の承認も取得しています。
参考)2026年8月後発品承認 2026年12月発売予定:トラゼン…
薬価算定については、内用薬の品目数が7を超える場合に該当するルールが適用される見込みです。 トラゼンタのように8社が参入する場合、原則として先発品の薬価の0.4掛け(40%)という非常に低い価格が設定されることになります。 現在のトラゼンタ錠5mgの薬価は118.90円ですが、後発品収載後は約47.6円程度となる計算です。
意外な事実として、トラゼンタを巡っては2026年初頭から後発品各社が同剤に関連する特許(配合剤関係も含む)の無効審判を大量に起こしており、特許紛争が激化していました。 また、2026年2月9日には、知財高裁がリナグリプチンの「5mg・1日1回」という用量設定を容易想到と判断する審決を下しており、これが後発品参入の法的基盤整備につながったとみられています。
2026年8月後発品承認 2026年12月発売予定:トラゼンタ・インチュニブなど
このリンク先に2026年8月承認の後発品の詳細、薬価算定ルール、発売予定などの最新情報が記載されています。
医療従事者としての臨床現場におけるトラゼンタの位置づけを、独自視点から考察します。
📊 高齢者・腎機能変動例での優位性
リナグリプチンは、腎機能に応じた用量調整が不要という特性から、特に以下の患者層で価値が発揮されます。
⚠️ 注意すべき「意外な落とし穴」
1. 肝機能障害時の血中濃度上昇
胆汁排泄型であるため、重度の肝機能障害(Child-Pugh C)では血中濃度が2-3倍上昇する可能性があります。臨床試験データは限定的ですが、中度以上の肝機能障害例では慎重投与が推奨されます。
2. 心不全患者での注意
DPP-4阻害薬全体で、特にサキサグリプチンで心不全入院リスク増加が報告されています。リナグリプチンでは明確なエビデンスはありませんが、NYHA分類III-IVの重症心不全患者では、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬との併用を優先的に検討すべきです。
3. 皮膚障害の早期発見
💡 処方便の工夫
📈 2026年以降の処方戦略
後発品収載により、先発品薬価の40%という低価格設定が見込まれます。 医療機関としては、腎機能正常例では積極的に後発品へ切り替え、腎機能低下例ではトラゼンタ先発を継続する「ハイブリッド処方」が現実的でしょう。薬価差による患者負担軽減効果と、腎機能モニタリング負担軽減のバランスを考慮した処方が求められます。
薬剤師向け|DPP-4阻害薬使い分け完全版|パンナコッタアイス
このリンク先にDPP-4阻害薬9成分の服用回数、腎機能による用量調節、体外へ出る経路、心不全への注意点などの違いが詳しく解説されています。
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