あなたの1日の増量ミスが患者を死なせることも。

ラミクタール(一般名ラモトリギン)の販売開始から2015年1月末までに、重篤な皮膚障害による死亡例が16例報告されています。うち4例は、わずか4カ月の間に立て続けに発生しました。これを受けて厚生労働省は安全性速報、いわゆるブルーレターを配布しています。
16例という数字だけ見ると多くないと感じるかもしれません。しかし、死亡した4例はいずれも用法・用量が守られていなかったという共通点があります。つまり、規定通りに使えば防げた可能性が高いということですね。
推定使用患者数は約37万6000人にのぼります。東京ドームの観客数(約5万人)で例えると、その7個分以上の人がこの薬を使ってきた計算になります。それでも死亡例が限られているのは、多くの処方が適切に行われてきた証拠とも言えます。
ラミクタールの重篤な皮膚障害には、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死融解症(TEN)があります。ある判決では、これらの発現率は0.5%、国内でも非常に稀な副作用とされています。つまり、頻度自体は決して高くないということです。
参考)https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-89823.pdf
しかし油断は禁物です。添付文書には、投与開始時の用量を超えないこと、増量時期を早めないことなどが明記されています。用法用量さえ守れば問題ありません。
発疹に加え、発熱(38℃以上)、眼の充血、口唇や口腔粘膜のびれん、咽頭痛、全身倦怠感、リンパ節の腫れなどが現れた場合は、直ちに投与を中止する必要があります。処置が遅れると重篤な転帰をたどることがあるため、早い段階で皮膚科専門医に相談することが原則です。
参考)抗てんかん薬、双極性障害治療薬「ラミクタール錠」投与患者にお…
こうした初期症状の把握には、院内の皮膚障害チェックリストやGSKが提供する医療関係者向けQ&Aページの活用も有効です。患者向けの説明資材と合わせて確認する習慣をつけておくと安心です。
死亡例の多くが用法用量違反に起因するという事実は、裏を返せば対策が明確だということでもあります。増量スケジュールの管理には、電子カルテのアラート機能や投与量チェックツールを組み込んでおくことが有効です。
具体的には、初回投与量、バルプロ酸併用の有無、増量間隔の3点を処方時に自動チェックする仕組みを整えている施設もあります。こうした仕組みがあれば、うっかりミスによる過量投与を未然に防げます。人的ミスをシステムでカバーする発想が重要です。
患者・家族への説明資材としては、GSKが公開している添付文書や適正使用のお願い文書をそのまま活用するのも一つの方法です。これらは無料で入手でき、院内説明時にそのまま使えます。あなたの施設でも、こうした資料を処方時のチェックフローに組み込んでおくと安心です。
参考)https://www.jshp.or.jp/content/2015/0115-2-1.pdf
過量投与による死亡は、医療訴訟にも発展しています。2021年に報告された事例解説では、添付文書の用法・用量に従わない処方が、致死率の高いTENやSJSを引き起こしたと指摘されました。医師の注意義務違反が争点になったということですね。
参考)薬剤処方時の医師の注意義務|医師の求人・転職・アルバイト情報…
裁判所の判決文でも、TENやSJSは非常に稀な副作用であること、添付文書上の発現率が明記されていることが繰り返し確認されています。稀だからこそ見逃されやすい、という側面もあります。これは意外ですね。
こうした訴訟リスクを回避するためには、処方内容と添付文書の整合性を定期的に見直す社内監査の仕組みが役立ちます。カルテ記載だけでなく、患者への説明内容を記録に残しておくことも欠かせません。記録が自分自身を守る証拠にもなります。