
医療従事者と患者の間に成立する診療契約は、民法656条により準委任契約として扱われます 。準委任契約とは、法律行為以外の事務処理を委任する契約形態を指し、医療行為のような事実行為の提供を内容とする契約に適用されます 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/06/dl/s0625-8a-09.pdf
この準委任契約の重要な特徴として、以下の点が挙げられます。
この契約構造を理解することは、医療従事者が法的にどのような責任を負うかを把握する上で不可欠です。結果保証ではないため、万が一治療が期待通りに進まなかった場合でも、医療従事者が最善の注意を払って診療を行っていれば、直ちに責任を問われるわけではありません。
厚生労働省の資料で診療契約が準委任契約であることが明記されています
準委任契約の受任者である医療従事者には、民法644条に規定される「善良な管理者の注意義務」(善管注意義務)が課されます 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001rp69-att/2r9852000001rpbh.pdf
民法第644条の規定。
「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」
参考)善管注意義務とは?各分野の範囲例や違反と判断される4つのポイ…
この善管注意義務は、以下のような性質を持ちます。
参考)https://www2.kobe-u.ac.jp/~emaruyam/medical/Lecture/slides/190928funsou.pdf
参考)「善管注意義務」の意味や使い方 わかりやすく解説 Webli…
善管注意義務の具体的内容として、以下の2つの義務が含まれます :
参考)[4~6年生向け]医師国家試験出題基準に加わった新ワード(そ…
1. 結果予見義務:診療行為により、死亡や後遺症などの有害危険な結果が生じうることを予見する義務
2. 結果回避義務:診療行為により、死亡や後遺症などの結果が起きないようにする義務
これらを総合して、「危険な結果の発生を予見し、回避することを怠った場合」に、過失(注意義務違反)があったと認定されます 。
医療従事者の注意義務違反、すなわち過失の有無を判断する基準として、「医療水準」が確立されています。この基準は、最高裁判所の判例によって明確に示されています。
最高裁昭和57年3月30日判決(未熟児網膜症高山日赤事件)。
「右注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である」
参考)https://www.meiji.ac.jp/laws/centers/med/6t5h7p00003cggcy-att/med20190426houkoku5.pdf.pdf
この判決は、医師の過失判断における基本的な基準を確立したリーディングケースとして、現在も医療訴訟の場で判断に用いられています 。
参考)医療ミスの判断基準とは?どのような場合に責任が認められるか?…
さらに、最高裁平成7年6月9日判決(姫路日赤事件)では、この基準を具体化し、以下の要素を考慮すべきであると示しました :
参考)医師の過失とは?医療水準や注意義務の判例から解説 - Med…
この「医療水準論」の重要なポイントは。
参考)https://www2.kobe-u.ac.jp/~emaruyam/medical/Lecture/slides/230716funsou.pdf
参考)https://da.lib.kobe-u.ac.jp/da/kernel/81007210/81007210.pdf
参考)https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/2800498/p160.pdf
医療従事者が負う注意義務には、診療行為そのものに関する義務だけでなく、患者に対する説明義務も含まれます。この説明義務は、インフォームドコンセントの実施として具体化されます。
説明義務の法的根拠。