
脳血管疾患は、脳の血管に生じる障害の総称であり、臨床的に「虚血性脳血管疾患」と「出血性脳血管疾患」の2つに大別されます 。虚血性は血管が閉塞することで脳への血流が不足し、脳細胞が酸素・栄養不足に陥る病態です。一方、出血性は血管が破裂することで脳実質やくも膜下腔に出血が生じます 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000708078.pdf
この分類は、治療方針や予後を決定する上で極めて重要です。虚血性では血栓溶解や血管内治療が、出血性では血腫除去や動脈瘤クリッピングがそれぞれ選択されます 。
参考)脳血管障害とは
脳梗塞(虚血性脳卒中)は、発生機序と臨床病型からさらに細分類されます。NINDS(米国国立神経疾患・脳卒中研究所)のCVD-III分類では、脳梗塞を発症機序から「血栓性」「塞栓性」「血行力学性」の3つに、臨床病型から「アテローム血栓性」「心原性」「ラクナ梗塞」の3つに分類しています 。
参考)脳血管疾患
出血性脳血管疾患には「脳出血」と「くも膜下出血」があります。脳出血の約60%以上は高血圧が原因で、穿通枝動脈の血管壁が障害され破裂します 。高血圧の管理が予防の鍵となります。
くも膜下出血の原因の約75〜90%は脳動脈瘤の破裂です 。脳動脈瘤は血管の分岐部に生じやすく、高血圧・喫煙・過度の飲酒が破裂リスクを数倍高めます 。40歳以降の女性に多く、家歴がある場合も発生頻度が高まります 。
厚生労働省 脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書(脳血管障害の分類表)
一過性脳虚血発作(TIA)は、神経症状が24時間以内に完全に消失し、MRIでも病巣を認めない病態です 。脳梗塞の前駆症状として重要で、早期対応が脳梗塞予防に直結します。
慢性脳循環不全症は、脳への血流が慢性的に不足した状態で、めまい・ふらつき・認知機能低下などを呈します。高血圧性脳症とともに、CVD-III分類では「その他」のカテゴリに位置づけられています 。
医療従事者にとって、脳血管疾患の分類を理解するだけでなく、各病型の「発症機序と症状進行のパターン」を関連付けて把握することが臨床現場で役立ちます。例えば、心原性塞栓症は「突然・重症・皮質症状」、ラクナ梗塞は「段階的・軽症・運動障害中心」、アテローム血栓性は「段階的・中等症・皮質症状あり」といった特徴があります 。
この機序と症状の関連性を理解することで、初診時の病型推定が迅速になり、画像診断や治療選択の優先順位を適切に設定できます。特に救急対応では、この視点が時間的ロスなく治療を開始する鍵となります。
第一三共エスファ 循環器情報サイトAssist(脳血管障害の分類)
協会けんぽ 脳血管疾患 突然死を招く恐ろしい病気
日本成人病予防協会 脳血管疾患