
脳梗塞は、脳血管疾患の中で最も頻度が高く、全体の約75%以上を占める疾患です。 脳の血管が何らかの原因で閉塞し、その先の脳組織に酸素や栄養が供給されなくなることで、脳細胞が壊死に陥る病態を指します。
参考)脳神経外科の病気:脳卒中
脳梗塞は、閉塞する動脈の部位や閉塞の機序によって、主に3つの病型に分類されます。
参考)https://med2.daiichisankyo-ep.co.jp/cardiology/knowledge/files/cva/cva2.pdf
参考)脳梗塞
参考)脳卒中シリーズ② 脳梗塞|一之瀬脳神経外科病院(長野県松本…
参考: 脳梗塞の分類や原因について、第一三共エスファの循環器情報サイトAssistで詳しく解説されています。
出血性脳血管疾患は、脳血管が破裂して出血する病態で、脳出血とくも膜下出血の2つに大別されます。 脳卒中全体に占める割合は、脳出血が約18%、くも膜下出血が約7%です。
脳出血は、脳の細い血管(主に穿通枝動脈)が高血圧によって障害され、弱くなった血管壁が破綻して脳実質内に出血する病態です。 出血部位によって、被殻出血、視床出血、脳幹出血、小脳出血などに分類され、それぞれ特徴的な症状を呈します。
参考)脳出血・くも膜下出血
くも膜下出血は、脳の表面にある「くも膜下腔」と呼ばれる空間で出血が起こる病気です。 主な原因は、脳を養う動脈の分岐部にできる瘤(脳動脈瘤)の破裂で、突然の激しい頭痛(「バットで殴られたような頭痛」と表現される)が特徴的な症状です。
参考)脳出血と脳梗塞の違いは?原因や症状、重症度をわかりやすく解説…
出血性脳血管疾患は、虚血性脳血管疾患に比べて発症頻度は低いものの、一旦発症すると重症化しやすく、死亡率や後遺症のリスクが高いことが知られています。
参考: 脳出血・くも膜下出血の分類や原因、急性期の治療について、循環器情報サイトAssistで詳細に解説されています。
一過性脳虚血発作(TIA)は、「脳、脊髄または網膜の局所的虚血による一時的な神経学的機能障害で急性梗塞を伴わないもの」と定義されています。 脳梗塞のような症状(片麻痺、言語障害、視覚障害など)が突然現れますが、通常は数分〜数時間以内に完全に回復し、MRIの拡散強調画像でも梗塞が確認されないことが特徴です。
TIAは、脳梗塞の前兆として極めて重要です。TIAを発症した患者さんの約10〜15%が、その後3ヶ月以内に脳梗塞を発症すると報告されており、特に発症後48時間以内の再発リスクが高いことが知られています。
参考)https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_02.pdf
TIAを疑った場合は、可及的速やかに発症機序を確定し、脳梗塞発症予防のための治療を直ちに開始する必要があります。 急性期の再発防止には、アスピリン160〜300mg/日の投与が推奨されています(グレードA)。
TIAは「警告発作」とも呼ばれ、この段階で適切な治療介入を行うことで、重篤な脳梗塞の発症を防ぐことができるため、医療従事者はTIAの症状を見逃さないことが重要です。
参考: 一過性脳虚血発作(TIA)の病因、病理生理学、症状、診断および予後について、MSDマニュアル プロフェッショナル版で詳しく解説されています。
慢性硬膜下血腫は、頭部の軽微な外傷により、通常2週間から3カ月の期間を経て硬膜の下に徐々に血腫ができる病態です。 高齢者に多く、頭痛、歩行障害、認知症の急激な進行などで気付かれることがあります。
急性硬膜外血腫は、頭蓋骨と硬膜との隙間に出血が起こり血腫がたまる病気で、頭蓋骨の骨折を伴うことがほとんどです。 急性硬膜下血腫は、脳表面の静脈が損傷して硬膜下に出血する病態で、重度の頭部外傷後に発症することが多いです。
参考)頭部外傷
これら外傷性脳血管疾患は、脳血管疾患の分類では「その他」に分類されますが、高齢化社会において慢性硬膜下血腫の患者さんが増加しており、神経内科や脳神経外科で日常的に診察する機会が増えています。
慢性硬膜下血腫は、脳萎縮が進んだ高齢者では、軽微な頭部外傷(転倒や衝突など)でも発症することがあり、症状が認知症や脳梗塞と類似しているため、鑑別診断が重要です。
参考: 急性硬膜外血腫・硬膜下血腫・慢性硬膜下血腫について、社会医療法人禎心会のサイトで詳しく解説されています。
脳動脈解離は、脳血管の内膜が裂けて血管壁内に血腫が形成され、血管が狭窄または閉塞する病態です。頸動脈や椎骨動脈に好発し、若年者の脳梗塞の原因として重要です。頭痛や頸部痛を伴うことが多く、外傷や激しい咳嗽、くしゃみなどが誘因となる場合があります。
脳静脈洞血栓症は、脳静脈または静脈洞に血栓が形成され、静脈還流が障害される稀な脳血管疾患です。 頭痛、けいれん、局所神経症状を呈し、妊娠・産褥期、経口避妊薬の使用、脱水、感染症などがリスク因子として知られています。
これらの疾患は、一般的な脳血管疾患の種類一覧ではあまり取り上げられないことが多いですが、鑑別診断として知っておくべき重要な病態です。特に脳静脈洞血栓症は、CTやMRIで診断が難しく、造影MRIやMRV(磁気共鳴静脈造影)が必要な場合があり、見逃されやすい疾患の一つです。
脳動脈解離は、TOAST分類では「その他の確定された病因による脳梗塞」に分類され、脳血管疾患全体の約2%を占めると報告されています。若年者脳梗塞の原因として、心原性脳塞栓症やアテローム血栓性脳梗塞と並んで重要な鑑別疾患です。
参考: 脳血管疾患の分類と脳血栓症、脳塞栓症について、日本脳卒中学会の資料で詳しく解説されています。
脳血管疾患は、虚血性(脳梗塞、TIA)と出血性(脳出血、くも膜下出血)に大別され、それぞれさらに細かな病型に分類されます。 医療従事者は、これらの病型の特徴を理解し、適切な診断・治療を行うことが重要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000650621.pdf
脳卒中全体に占める割合は、脳梗塞が約75%、脳出血が約18%、くも膜下出血が約7%です。 近年は脳梗塞の割合が増加傾向にあり、脳出血やくも膜下出血は減少または横ばいの状態です。
脳血管疾患の診断には、CT、MRI、MRA、頸動脈超音波検査、心電図、心エコー検査などが用いられ、病型の確定と再発予防のための治療方針の決定に役立てられます。
参考: 脳血管障害・脳卒中について、厚生労働省のe-ヘルスネットで高血圧との関連を含めて解説されています。