
「日本てんかん学会 2026」で中心となるのは、第59回日本てんかん学会学術集会です。会期は2026年10月1日(木)から10月3日(土)までの3日間、会場は新潟県新潟市の朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンターです。日本てんかん学会の公式年次学術集会情報および大会公式サイトでは、本集会が現地開催として予定されていることが示されています。医師のみならず、看護師、薬剤師、臨床検査技師、心理職、リハビリテーション職、ソーシャルワーカー、研究者、学生など、てんかん診療に関わる多職種にとって重要な学術交流の機会となるでしょう。
参考)年次学術集会
学会のテーマは「一人ひとりが輝くてんかん医療」です。このテーマからは、発作抑制だけに限定せず、診断、治療、安全性、発達、認知、精神症状、就学・就労、妊娠・出産、移行期医療、地域連携といった患者本人の生活全体を見据える方向性が読み取れます。てんかんは病因、発作型、年齢、併存症、社会環境によって診療課題が異なるため、標準化と個別化をどのように両立するかが臨床現場の重要な論点です。大会プログラムでは小児から高齢者までを視野に入れ、基礎研究、診断学、薬物治療、外科治療、包括ケアを横断する構成が組まれています。
参考)https://shinsen-mc.co.jp/jes59/media/jes59_kaisaishuisho.pdf
参加を検討する医療従事者は、「自施設の診療課題に直接結び付くセッションは何か」という観点からプログラムを確認するとよいでしょう。例えば、初診時の診断精度を高めたい場合は発作症候、病歴聴取、脳波判読、非てんかん性イベントとの鑑別が候補になります。薬物療法を担当する場合は診療ガイドライン、カンナビジオール、妊娠関連の服薬支援、副作用や運転に関する情報整理が重要です。難治例を多く診る施設では、てんかん外科、SEEG、VNS、DBS、ニューロモデュレーション、画像診断に関する企画の優先度が上がります。
第59回日本てんかん学会学術集会 公式サイト
学術集会は、初日に指導医講習会、開会式・会長講演、各種講演・シンポジウムが配置され、2日目には社員総会・表彰式と懇親会、3日目には研修セミナーや技術講習会を含むプログラムが予定されています。大会期間中に複数会場で企画が並行するため、参加予定者は興味分野だけでなく、必修性がある講習会、専門医・指導医関連の要件、自施設で共有すべきテーマを踏まえて事前に動線を設計することが望まれます。
参考)日程表・プログラム|第59回日本てんかん学会学術集会
開催方式については、すべての発表を現地発表とし、ライブ配信は予定されていません。一方で、一部セッションは後日のオンデマンド配信が予定されています。現地参加が難しい場合であっても、オンデマンド対象となる企画、視聴条件、参加登録の扱い、単位取得可否などは今後の公式案内で必ず確認してください。ライブ配信がない前提であるため、現地でしか得られない質疑応答、症例提示、ポスター討論、多職種交流に価値を置く準備が重要です。
参考)演題募集のご案内|第59回日本てんかん学会学術集会
一般演題の募集は2026年3月24日正午に始まり、当初の締切後に延長されたものの、2026年5月19日17時をもって締め切られました。一般演題は日本語・英語の口演およびポスターに加え、公募シンポジウムの枠が設けられていました。今後は採否、発表形式、演題番号などの通知状況を確認し、採択者は抄録内容と発表資料の整合性、COI開示、倫理面の最終確認を早めに進める必要があります。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 学会名称 | 第59回日本てんかん学会学術集会 | 日本てんかん学会の年次学術集会 |
| 会期 | 2026年10月1日(木)~3日(土) | 3日間開催 |
| 会場 | 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター | 新潟県新潟市中央区万代島 |
| 開催形式 | 現地開催、全発表は現地発表予定 | ライブ配信は予定なし |
| オンデマンド | 一部セッションを後日配信予定 | 対象・視聴条件は公式案内を確認 |
| 一般演題募集 | 2026年5月19日17時で締切 | 一般演題の新規登録・修正は終了 |
日本てんかん学会2026でとくに注目したいのは、「てんかん診療ガイドライン2026」を扱う教育講演およびガイドライン作成委員会企画です。初日の教育講演では「てんかん診療ガイドライン2026 のすべて」、3日目にはガイドライン作成委員会企画として「てんかん診療ガイドライン 2026」が予定されています。これは、単なる改訂点の列挙にとどまらず、日常診療で疑問になりやすい診断、治療選択、特殊集団への対応、紹介判断などを整理する機会になると考えられます。正式な推奨内容は講演資料や公表されるガイドライン本文に基づいて確認し、現時点で先回りして個別患者の治療を変更しない姿勢が必要です。
診断領域では、分類・用語委員会企画として「てんかん発作分類 2025改訂」、教育講演では病歴聴取、脳波判読、Critical Care EEG、てんかん診療のための大脳皮質解剖、てんかん発作と非てんかん性イベントとの鑑別が予定されています。発作の動画、目撃者情報、発作前後の状態、意識・運動・自律神経症状、誘因、服薬状況、睡眠との関係を体系的に収集することは、検査結果の解釈と同じくらい重要です。特に救急や一般外来では、「発作らしく見える現象」をすべててんかん発作と判断しないこと、反対に短時間・非典型的な症候の背後にある発作を見逃さないことが求められます。
高齢者てんかん、発達性てんかん性脳症、知的発達症をもつ成人のてんかん、自己免疫性脳炎、機能性・解離性発作などもプログラムに含まれています。こうした構成は、てんかん診療が「発作を止める」単一の問題ではなく、年齢・病態・併存症・生活背景に応じた診療設計を要する領域であることを示しています。各施設では、診断困難例や再評価が必要な症例の紹介ルート、脳波・画像・心理評価へのアクセス、精神科や救急との連携手順を改めて点検すると実務につながります。
治療面では、薬物治療、カンナビジオールに関する臨床開発とリアルワールドエビデンス、てんかん外科、SEEG、VNS、DBS、ニューロモデュレーション治療など、薬物からデバイス・外科治療まで連続性のあるプログラムが予定されています。とくに「てんかんニューロモデュレーション治療:日本での現状と展望」、てんかん外科とSEEGの症例検討、VNS・DBS・SEEG講習会は、難治性てんかんの治療選択肢と紹介タイミングを再考するうえで重要です。
日常診療では、抗発作薬の追加・変更を検討する局面だけでなく、診断の妥当性、発作頻度と重症度、服薬アドヒアランス、有害事象、併用薬、妊娠希望、認知・精神症状、生活上の支障を包括的に評価する必要があります。薬剤抵抗性が疑われる場合には、漫然と同系統の治療を反復するのではなく、専門施設での精査や外科治療適応評価を含めた検討につなげることが大切です。ただし、個々の薬剤変更、デバイス導入、外科適応判断は、発作型・てんかん症候群・病変・年齢・併存症などに依存するため、専門的評価と患者・家族への十分な説明を前提に進めるべきです。
また、AIが拓くてんかん学の新時代を扱うシンポジウム、脳波を扱う海外招待講演、てんかんネットワークの解明に関するシンポジウムも予定されています。AIやデジタル技術は、脳波解析、動画評価、データ統合、教育支援、研究効率化に寄与する可能性がありますが、出力の妥当性確認、データ品質、説明可能性、個人情報保護、臨床責任の所在といった課題も同時に検討しなければなりません。臨床導入では「AIが診断する」という単純な発想ではなく、専門職の判断を補助し、見落とし低減や情報整理にどう役立てるかという視点が現実的です。
本学術集会の特色は、医学的テーマだけでなく、てんかんをもつ人の就労支援、妊娠に関する薬剤選択と生活指導、移行期医療、神経発達症との多職種支援、地域活動、法的問題など、社会生活に直結する論点が幅広く取り上げられている点です。ワークショップには、全国てんかんセンター協議会との合同企画として、コメディカルの視点からチーム医療を考える企画も予定されています。これは、医師主導の情報伝達だけではなく、職種ごとの専門性を診療計画に統合する必要性を示すものです。
例えば、就労や運転に関する相談では、医学的な発作評価だけで回答を完結させることは困難です。患者の職務内容、通勤手段、就業環境、発作の予測可能性、服薬による眠気や認知面への影響、職場との調整、法令・制度に関わる事項などを整理し、必要に応じて専門職や関係機関と連携します。説明時には、画一的な禁止や過度な安心を避け、個別リスクと安全対策を共有しながら意思決定を支援する姿勢が重要です。大会では自動車運転に関わる抗てんかん発作薬の添付文書改訂、てんかんと法的問題、就労支援などが取り上げられる予定であり、外来で遭遇しやすい説明課題を整理する契機になります。
妊娠・出産、思春期から成人診療への移行、知的発達症・神経発達症との併存、精神症状を伴う症例への対応でも、多職種・多機関連携は不可欠です。外来担当者は、患者本人と家族が何に困っているのかを発作回数だけで判断せず、服薬継続、学校・職場、睡眠、心理的負担、家族の支援力、地域資源へのアクセスを確認することが求められます。日本てんかん学会2026のプログラムを、単に最新知識を収集する場ではなく、自施設の診療フロー、紹介基準、患者教育資料、カンファレンス運用を更新するための材料として活用するとよいでしょう。