二次利用 どこまで 医療情報 研究 倫理 法律

医療情報の二次利用はどこまで認められるのか、個人情報保護法や次世代医療基盤法、研究倫理指針の観点から解説します。匿名加工情報と仮名加工情報の違い、同意が不要となるケース、遺族の権利など、医療従事者が知っておくべき実務ポイントを網羅。あなたの施設でのデータ活用、本当に大丈夫?

二次利用 どこまで 医療情報 研究 倫理 法律

医療情報の二次利用 基礎知識
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一次利用と二次利用の違い

診療や介護のために患者情報を用いるのが一次利用、研究開発や統計作成など診療以外の目的で用いるのが二次利用です

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主な根拠法令

個人情報保護法、次世代医療基盤法、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針が適用されます

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加工情報の3段階

個人情報、仮名加工情報、匿名加工情報の3段階があり、それぞれ法的地位と取り扱いルールが異なります


二次利用 どこまで 同意が不要となるケース



医療情報の二次利用において、最も重要な論点の一つが「本人の同意は本当に必要か」という点です。2026年(令和8年)の個人情報保護法改正により、統計作成やAI開発を目的とする場合、一定の条件下で本人同意が不要となる特例が新設されました。


参考)【2028年7月までに施行】個人情報保護法改正とは?データ利…


具体的には、公開済みの要配慮個人情報(病歴・犯罪歴等)について、統計の作成やAI開発といった特定の個人に対する判断に直結しない目的に限り、本人の同意なく取得し、または第三者に提供できる規制緩和が導入されています。 ただし、この特例はあくまで限定的であり、採用選考や与信審査など特定の個人に対する判断への利用は対象外で、従来どおり原則として同意が必要です。


参考)令和8年(2026年)改正個人情報保護法の実務対応 — 統計…


また、次世代医療基盤法に基づく認定事業者へ医療情報を提供する場合、患者・利用者への通知(オプトアウト機会の提供)が法定要件として求められます。 これは「丁寧なオプトアウト運用」と呼ばれ、本人への事前通知と提供停止機会の付与を前提としています。


参考)医療機関のリアルワールドデータ(RWD)利活用 完全ガイド【…


さらに、匿名加工情報については、特定の個人を識別できず、かつ元の個人情報を復元できないように加工した情報であれば、第三者提供にあたり本人の同意は不要となります。 ただし、作成時等に含まれる情報の項目を公表することと、本人を再識別しないことが条件です。


参考)【G検定】データ利用の法的留意点覚えうた|法律暗記AI曲


情報区分 同意の要否 第三者提供 主な用途
個人情報 原則必要 原則禁止 診療・ケア
仮名加工情報 不要(内部利用) 原則禁止 社内分析・AI学習
匿名加工情報 不要 可能(公表義務あり) 研究・統計・外部提供


二次利用 どこまで 匿名加工情報と仮名加工情報の違い

匿名加工情報は、特定の個人を識別することができず、かつ元の個人情報を復元できないように加工した情報です。 通常の方法では元となった個人情報に戻すことができない状態を目指しており、第三者提供が可能になる代わりに、加工基準・安全管理措置・公表義務など複数の要件を満たす必要があります。 ビッグデータ分析や研究機関へのデータセット提供など、外部とのデータ共有に適した形式です。


参考)【571補講編】情報通信・個人情報保護100/令和8年度行政…


一方、仮名加工情報は、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように加工した情報です。 「他の情報と照合すれば識別できる余地」を残す軽めの加工であり、漏えい時の報告義務や本人への開示・利用停止請求への対応が免除される代わりに、第三者提供は原則禁止(内部分析用)となります。 社内での分析や機械学習など内部利用に向いています。



ざっくり言えば、匿名加工情報は「外に出すための徹底加工」、仮名加工情報は「中で使うための軽めの加工」と理解すると分かりやすいでしょう。 医療機関で生成AIを活用する場合、提供者がそのデータを自らの目的(典型的にはモデルの学習・品質改善)に利用する場合は、委託の枠を超え、要配慮個人情報の第三者提供として原則本人の事前同意が必要になります。


参考)【G検定】匿名加工情報とは?復元不可の要件と仮名加工情報との…


二次利用 どこまで 死者の医療情報と遺族の権利

医療情報の二次利用において、あまり知られていない意外な論点が「死者の医療情報」の扱いです。2026年2月20日の最高裁判決や、医療・介護ガイダンス、生命科学・医学系研究倫理指針を踏まえて整理すると、重要な実務的示唆が得られます。


参考)死者の医療情報の二次利用—個人情報保護法の対象外と最高裁令和…


個人情報保護法上、「個人情報」は生存する個人の情報に限られ、死者の情報は原則として含まれません。 しかし、次世代医療基盤法は死者の医療情報を明文で対象に含めており、法律によって扱いが異なります。



さらに、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年3月23日文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)は、個人情報保護法とは別に、「個人情報等」という独自の概念を設けています。 これは「個人情報」に死者について特定の個人を識別することができる情報を加えた概念であり、「研究に用いられる試料」及び「研究に用いられる情報」は、いずれも死者に係るものを含むと定義され、「研究対象者」にも死者が含まれます。



つまり、研究目的で死者の医療情報を二次利用する場合は、個人情報保護法の対象外であっても、倫理指針の適用を受ける可能性があります。 遺族が持つ権利の範囲と限界についても、現在内閣府「医療等情報の利活用の推進に関する検討会」で検討が進められており、2026年1月23日の中間まとめでは、死亡者情報の利活用範囲についての結論は示されていません。



この点は、医療従事者が二次利用を検討する際、盲点になりやすい部分です。患者が亡くなった後でも、研究倫理指針の観点から適切な手続きが必要となるケースがあることを認識しておくべきでしょう。


二次利用 どこまで 研究倫理指針とIRB審査の必要性

医療情報を研究に用いる場合には、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針が適用されます。 この指針は、個人情報保護法とは独立した枠組みであり、研究機関や医療機関が二次利用を行う際に遵守すべき倫理的基準を定めています。



具体的には、以下の手順で二次利用の可否を判断するのが一般的です。


参考)https://casrai.org/guides/secondary-use-of-identifiable-data-and-biospecimens


1. 識別可能性の判定: サンプルや記録が識別可能か、コード化されていてキーで復元可能か、完全に非識別化されているかを判断します
2. 完全非識別化の場合: 再識別化が現実的に不可能であれば、Common Rule(米国)やIRB(倫理審査委員会)の管轄外となる場合がありますが、機関のポリシーやHIPAA(米国)が適用される場合は別途検討が必要です
3. 識別可能な場合: 46.104(d)(4)の免除基準(公開済み、再識別化・接触なし、HIPAA規制のみ)を満たすか確認し、IRBで文書化します
4. 免除されない場合: IRB審査を申請し、46.116(f)に基づき同意の免除を請求します(最小リスク、対象者への悪影響なし、再同意の実施不可能性を証明)
5. 広範な同意がある場合: 元の同意書に将来の二次研究へのCommon Rule準拠の広範な同意が含まれているか確認し、限定IRB審査を完了します


日本国内では、2025年8月にバイオバンクにおけるデータ管理システムの移行作業で、文書による同意取得日と採血実施日との整合性確認の過程で問題が発覚し、倫理指針第6章第11の3の「必要なインフォームド・コンセントの手続きを行わずに研究を実施した場合」に該当するとされ、重大な倫理指針不適合事案として公表された事例があります。 この事例は、検体がバイオバンク内で保管されたままで他の研究への提供・利用は行われていなかったものの、同意手続きの不備が重大と判断された点で注目されます。


参考)https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=80712


このように、二次利用においては、データを実際に外部提供しなくても、同意手続きの不備が重大な不適合とみなされる可能性があります。医療従事者は、研究倫理指針の最新の改正内容を常に把握し、IRB審査の必要性を適切に判断する能力が求められます。


二次利用 どこまで 欧州EHDSとの比較と日本版の課題

医療データの二次利用に関する国際的な動向として、欧州のEuropean Health Data Space(EHDS)規則が注目されています。 内閣府「医療等情報の利活用の推進に関する検討会」は、2025年9月3日に設置され、森田朗・東京大学名誉教授を座長として、EUのEHDS規則を参考にしつつ、医療データ利活用の包括的な制度枠組みを検討しています。


参考)医療情報は同意なく使われるようになるのか——次世代医療基盤法…


EHDSでは、二次利用(研究、イノベーション、公共政策目的)に対して、ORAD(医療データへのアクセス機関)とHealthData@EUを介したデータ共有が義務付けられています。 患者には二次利用に対する反対権(オプトアウト)が認められており、いつでも、理由なく、取り消し可能で、アクセス可能かつ理解可能な形で行使できる必要があります。 さらに、二次利用で臨床的に有意な情報が判明した場合、識別可能な個人にその情報を通知する権利(通知を拒否する権利も含む)が認められています。


参考)Espace europ辿en des donn辿es de…


一方、日本の次世代医療基盤法に基づくデータ利活用では、NDB(国民健康保険データベース)ではカバーしきれない電子カルテ由来の医療等情報の他、画像情報等まで網羅しており、民間企業における研究開発を中心に利活用が広がっています。 しかし、本法律内における利活用では、データ収集時に本人への事前通知と提供停止機会の付与を前提とする「丁寧なオプトアウト運用」が求められており、負担とメリットのバランス観点からも、限られた医療機関のみが協力機関として参画しており、悉皆性に大きな課題が残っています。


参考)https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/japans-future-and-global-health/ehds-japan.html


また、実際には大病院に限られていることもあり、追跡性や代表性の点でも課題が存在します。 2026年7月の規制改革実施計画では、本人同意不要の医療等データの範囲・利用主体・利用目的のあり方について、国のデータベースだけでなく、電子カルテのデータ、ゲノム(遺伝情報)や医療画像のような特別な加工が難しいデータ、介護のデータ、健康アプリのデータまで、14種類が列挙されました。



このように、日本では欧州に比べて二次利用の範囲が限定的であり、医療機関の負担が大きいという課題があります。今後の制度改正の動向を注視し、自施設のデータ活用戦略を適切に立案することが重要です。


二次利用 どこまで 実務で注意すべき安全管理措置

医療情報の二次利用において、法的な根拠だけでなく、実務上の安全管理措置も重要です。医療DXの案件では「機微かどうか」がエンジニアの感覚ではなく法律上の区分で決まります。 要配慮個人情報という区分と、委託と第三者提供で責任の扱いが変わる点を、厚生労働省のガイドラインQ&Aから整理する必要があります。


参考)医療DXの案件で扱う要配慮個人情報|境界の見分け方と取り扱い…


具体的な注意点として、以下の点が挙げられます。


  • 委託と第三者提供の区別: 委託の場合は委託先が自らの目的でデータを利用しないことが前提ですが、第三者提供の場合は利用目的が異なるため、原則として本人の事前同意が必要です
  • 越境移転: 海外へのデータ移転については、移転先の国の個人情報保護制度が日本の水準と同等であるか、または移転先の事業者が日本の個人情報保護法に準拠した措置を講じているかを確認する必要があります
  • 責任共有モデル: クラウドサービスを利用する場合、サービス提供者と利用者で責任を共有するモデルとなるため、それぞれの責任範囲を明確に契約で定める必要があります
  • プロンプトインジェクション対策: 生成AIを利用する場合、プロンプトに個人情報が含まれないよう注意し、入力データのフィルタリングや出力データの監視を行う必要があります


匿名加工された情報は動かしやすいですが、加工の方法と復元可能性を確認することが重要です。 仮名加工情報・匿名加工情報ともに、特定の個人に対する働きかけが可能となる情報の不適正な取扱いの禁止規定が準用されます。



対策項目 具体例
アクセス制御 役割に基づくアクセス権限の設定、多要素認証の導入
ログ管理 データアクセス履歴の記録、定期的な監査
暗号化 保存データの暗号化、通信経路の暗号化(TLS)
教育訓練 従業員への個人情報保護研修、インシデント対応訓練
物理的セキュリティ サーバールームの施錠管理、入退室記録


これらの安全管理措置は、個人情報保護法や次世代医療基盤法、研究倫理指針のいずれにおいても求められる基本的な要件です。 医療機関は、二次利用の目的や規模に応じて、適切な安全管理措置を講じ、定期的にその有効性を評価・改善することが求められます。


参考)医療DX入門講座16:医療情報プライバシーとセキュリティ(前…


参考: 厚生労働省「医療デジタルデータのAI研究開発等への利活用に係るガイドライン」の留意点について https://www.jshem.or.jp/medical/related-information


参考: 個人情報保護委員会「匿名加工情報」 https://www.ppc.go.jp/kojinjoho-hogo/kojinjoho-hogosha-sonota/anonkakoujouhou/


参考: 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針 https://www.mhlw.go.jp/file/0000217861.pdf

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