あなたが「常用量なら安全」と思うと危険です。

マグミットをはじめとする酸化マグネシウム製剤は、便秘薬として国内で年間約4,500万人規模に使用されている歴史ある薬剤です。長期の実績があるため、「安全性の高い薬」というイメージを持つ医療従事者も多いでしょう。
参考)https://www.mhlw.go.jp/www1/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/252-1.pdf
しかし厚労省の安全性情報では、2005年4月から2008年8月までの間に高マグネシウム血症15例(うち死亡2例)が報告され、その多くが認知症合併や長期漫然投与の症例でした。
数字で見ると、報告例のうち6例以上が「長期投与」の記載がある処方でした。
これは目立たない副作用が積み重なって重大な転帰につながることを示すデータです。
つまり長期処方の見直しが基本です。
高マグネシウム血症の初期症状は、吐き気、嘔吐、立ちくらみ、めまい、徐脈、皮膚の紅潮、脱力、傾眠などが中心です。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000208517.pdf
これらは加齢による体調不良や他の慢性疾患の症状とよく似ています。
そのため「年のせい」と判断され、発見が遅れるケースが少なくありません。
血清Mg濃度が4.9mg/dL程度から悪心・徐脈などの症状が出始め、9.7mg/dL以上では腱反射消失や嚥下障害、18.2mg/dL以上になると昏睡や心停止に至ることが報告されています。
イメージとしては、正常値が1.7〜2.6mg/dL程度なので、10mg/dLはその約4〜6倍に相当する数値です。
これはかなり大きな異常値と言えます。
見逃しを防ぐには、定期処方患者のバイタルチェック時に「傾眠・脱力・徐脈」の3点をルーティンで確認するチェックリスト運用が実務的な対策になります。
一般的には「腎機能が正常なら高マグネシウム血症は起きにくい」と考えられがちです。
しかしPMDAの症例報告では、腎機能が正常、かつ通常用量以下の投与であっても重篤な転帰をたどった便秘症患者の例が示されています。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000235889.pdf
70歳代男性の症例では、慢性腎臓病はあったものの、660mg×2回/日という一般的な用量域で血清Mg値が4.2mg/dLまで上昇し、食欲不振や悪心が続いた末に投与中止でようやく改善しています。
これは「用量が少なければ安心」という前提が崩れる典型例です。
どういうことでしょうか?
答えは、便秘症という基礎疾患自体が腸管での吸収リスクを高めている可能性がある、という点にあります。
つまり用量だけでなく基礎疾患の確認が原則です。
こうしたケースを防ぐには、便秘症で酸化マグネシウム製剤を処方する際、腎機能に加えて排便状況・食欲・意識レベルの変化を診察時に一言確認する運用が有効です。
高齢者で高マグネシウム血症のリスクが気になる場合、酸化マグネシウム以外の便秘薬に切り替える選択肢も検討されます。
ルビプロストンやポリエチレングリコール製剤など、マグネシウムを含まない便秘薬は腎機能への影響を受けにくい特徴があります。
これは処方の幅を広げる一つの手段です。
また、酸化マグネシウム製剤を継続する場合は、添付文書上も長期投与時の定期的な血清マグネシウム測定が明記されています。
院内の電子カルテで「長期処方3ヵ月ごとに採血アラート」を設定しておくと、確認漏れを防ぎやすくなります。
高マグネシウム血症の重篤例では、複数の併用薬を服用している高齢者が目立ちます。
実際の症例では、アミオダロン、ドネペジル、カルベジロール、ワルファリン、フロセミドなど心疾患・腎疾患に関わる薬剤を併用していたケースが報告されています。
多剤併用は代謝や排泄に影響を与えやすいという特徴があります。
これは意外なポイントですね。
併用薬が多い患者ほど、マグミットの投与量そのものより「全体の薬物バランス」を見る視点が重要になります。
薬歴を一覧で確認できるお薬手帳やお薬管理アプリを活用し、多剤併用患者を優先的にマークしておく運用が実践的です。
酸化マグネシウム製剤の適正使用に関する留意点と実際の重篤化症例の詳細が確認できます
厚労省による高マグネシウム血症の発現状況と使用上の注意改訂の経緯がまとめられています
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