
急性喉頭蓋炎の最も一般的な原因は細菌感染です。特に重要な病原菌として、ヘモフィルスインフルエンザ菌(Hib)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、溶連菌(Streptococcus pyogenes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などが挙げられます。
参考)Epiglottitis - StatPearls - NC…
ワクチン普及前の時代、小児の急性喉頭蓋炎の90%以上はHibが原因でした。しかし、Hibワクチンの定期接種化により、現在では非Hib型のヘモフィルス菌や他の細菌が主要な原因となっています。
感染経路は主に飛沫感染です。感染者の咳やくしゃみ、鼻水に含まれる細菌を吸い込むことで、喉頭蓋に感染が成立します。また、上気道のウイルス感染後に細菌の二次感染を起こすケースも少なくありません。
成人における原因菌の頻度は、Hibが約25%、次いでH. parainfluenzae、肺炎球菌、A群溶連菌の順となっています。免疫不全患者では、カンジダやアスペルギルスなどの真菌感染も稀に報告されています。
細菌感染が主因ですが、ウイルスや真菌、非感染性要因も急性喉頭蓋炎を引き起こすことがあります。
参考)Epiglottitis: Causes, Symptoms…
ウイルス単独での急性喉頭蓋炎発症は稀ですが、単純ヘルペスウイルス(HSV)や水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)などが関与した症例が報告されています。これらのウイルス感染は、喉頭蓋粘膜の防御機能を低下させ、細菌の二次感染を誘発する可能性があります。
免疫不全状態にある患者では、カンジダ(Candida albicans)やアスペルギルス(Aspergillus)などの真菌感染による急性喉頭蓋炎が発生することがあります。特にHIV感染者や化学療法中の患者、長期ステロイド使用者では注意が必要です。
非感染性要因としては、以下のものが挙げられます。
急性喉頭蓋炎の発症や重症化には、いくつかの危険因子が関与しています。これらの危険因子を理解することは、早期診断と適切な治療方針の決定に重要です。
成人の急性喉頭蓋炎患者における主要な危険因子は以下の通りです。
参考)急性喉頭蓋炎について
糖尿病患者在院中は、ステロイド治療による血糖値変動にも注意が必要です。高血糖状態は免疫機能をさらに低下させ、感染制御を困難にします。
急性喉頭蓋炎は、急速に進行する気道閉塞と全身性合併症のリスクを伴う重篤な疾患です。適切な初期対応が遅れると、致命的な転帰を招く可能性があります。
参考)https://www.miyoshi-central-hospital.jp/upload/save/page/5e7009745f3c43980ae2536de6d72b15.pdf
主要な合併症は以下の通りです。
糖尿病患者では、これらの合併症発生率が約10%と報告されており、特に注意を要します。糖尿病患者在院中は、ステロイド投与による血糖コントロールの悪化も懸念され、インスリン調整などの併用治療が不可欠です。
急性喉頭蓋炎は、紀元前400年頃のヒポクラテスによって既に記述されていた、極めて古い疾患です。ヒポクラテスは「発熱、悪寒、頭痛、顎下部の腫脹、嚥下困難、唾液を吐き出せない、臥位不耐性、この体位で窒息する」という症状を詳細に記録しています。この記述は、現代の急性喉頭蓋炎の臨床像と驚くほど一致しています。
現代の疫学では、Hibワクチンの普及により小児の発症率は激減しましたが、成人の発症数は相対的に増加しています。成人例では、原因菌の多様化と危険因子の複雑化が特徴で、特に糖尿病や喫煙歴を有する中年男性での発症が目立ちます。
また、COVID-19パンデミック中に、SARS-CoV-2感染に伴う喉頭蓋炎の症例が1例報告されています。これは、ウイルス感染が喉頭蓋粘膜の炎症を直接引き起こす可能性を示唆する稀な事例です。
StatPearls: Epiglottitis - 病因、疫学、危険因子の詳細な総説