クロム親和性細胞はどこにある?副腎髄質と傍神経節を解説

クロム親和性細胞は主に副腎髄質に存在し、一部は交感神経系に沿う傍神経節にも分布します。カテコールアミン分泌、褐色細胞腫・パラガングリオーマとの関係を、解剖・病理・臨床の視点からどのように理解すればよいでしょうか?

クロム親和性細胞はどこにある?基礎知識と核心ガイド

副腎髄質と傍神経節の分布
主な局在は副腎髄質

クロム親和性細胞の大部分は左右の腎上極にある副腎の中心部、すなわち副腎髄質を構成している。

副腎外にも少数が存在

一部は交感神経系に関連する傍神経節へ分布し、大動脈周囲、胸腹部、骨盤内などで確認される。

腫瘍の発生部位を理解する

副腎髄質由来は褐色細胞腫、副腎外の交感神経性傍神経節由来はパラガングリオーマとして扱う。


クロム親和性細胞の主な場所は副腎髄質



クロム親和性細胞(chromaffin cell、pheochromocyte)は、主として副腎髄質に存在する神経内分泌細胞である。「どこにあるか」という問いへの最も簡潔で正確な回答は、副腎の中心部である髄質である。副腎は左右の腎臓上極に位置する内分泌臓器で、外側の副腎皮質と内側の副腎髄質に大別される。皮質がアルドステロン、コルチゾール、アンドロゲンなどのステロイドホルモンを産生するのに対し、髄質ではクロム親和性細胞がエピネフリン、ノルエピネフリン、少量のドパミンなどのカテコールアミンを合成・貯蔵・分泌する。


副腎外では交感神経系の傍神経節に分布する

クロム親和性細胞は副腎髄質だけに限定されない。発生過程で神経堤由来細胞の一部は副腎髄質へ移動する一方、少数は副腎外に残存または移動して、交感神経系に関連する傍神経節(paraganglia)を形成する。傍神経節は自律神経系と関連する神経内分泌細胞の小集団であり、交感神経系に沿って分布するクロム親和性傍神経節と、頭頸部に多い副交感神経系関連の傍神経節とを区別して捉える必要がある。
カテコールアミン産生能を示しやすいクロム親和性細胞は、主に交感神経性傍神経節に存在する。臨床的に重要な部位には、大動脈周囲、後腹膜、腹部、骨盤内、膀胱周囲、胸部などがある。とくに下腸間膜動脈起始部付近から大動脈分岐部付近にみられるツッカーカンドル器官(organ of Zuckerkandl)は、代表的な副腎外クロム親和性組織として知られる。画像診断で副腎外のカテコールアミン産生腫瘍を評価するとき、この解剖学的分布を理解しておくことは病変検索の出発点となる。

項目 基準・内容 備考
主な局在 副腎髄質 クロム親和性細胞の最も主要な分布部位
副腎外の局在 交感神経性傍神経節 大動脈周囲、後腹膜、胸部、腹部、骨盤など
代表的な副腎外部位 ツッカーカンドル器官 下腸間膜動脈起始部から大動脈分岐部付近
頭頸部傍神経節 頸動脈小体、頸静脈球周囲、迷走神経周囲など 多くは副交感神経系関連で、非クロム親和性として区別される


名称の由来と組織学的な見え方

クロム親和性細胞という名称は、細胞内に豊富なカテコールアミン含有分泌顆粒がクロム塩、古典的には重クロム酸塩によって褐色調に変化する性質に由来する。この反応は「クロム親和性」と呼ばれ、褐色細胞腫の英語名である pheochromocytoma にも反映されている。pheo は暗色、chromo は色、cytoma は細胞性腫瘍を意味し、歴史的にはクロム塩で褐色に変化する腫瘍細胞の形態学的特徴を表した名称である。
通常の副腎髄質組織では、クロム親和性細胞は血管周囲に索状、胞巣状、あるいは集塊状に配列する。細胞は比較的大型で多角形、細胞質にはカテコールアミン分泌顆粒を有する。副腎髄質にはクロム親和性細胞のほか、支持細胞、散在する神経節細胞、神経線維などもみられる。病理組織では、褐色細胞腫・パラガングリオーマにおいて主細胞が胞巣状に増殖し、その周囲を支持細胞が取り囲む「zellballen pattern」が典型像として重要である。

  • クロム親和性細胞は神経堤由来の神経内分泌細胞である
  • 細胞内のカテコールアミン含有顆粒がクロム塩に反応して褐色を呈する
  • 副腎髄質では血管に富む環境で索状または胞巣状に分布する
  • 腫瘍では主細胞の胞巣と支持細胞から成るzellballen patternが診断上の手掛かりとなる


褐色細胞腫とパラガングリオーマの部位別の整理

クロム親和性細胞の「どこにあるか」を臨床へ結び付ける際、最も重要なのは腫瘍名称と発生部位の対応である。副腎髄質に発生する腫瘍は褐色細胞腫(pheochromocytoma)と定義される。これに対し、副腎外の傍神経節に発生する同系統の腫瘍はパラガングリオーマ(paraganglioma)と呼ばれる。過去には「副腎外褐色細胞腫」という用語も広く使われたが、現在の分類・診療では、副腎内を褐色細胞腫、副腎外をパラガングリオーマと明確に使い分けることが基本である。
褐色細胞腫・パラガングリオーマは、カテコールアミン過剰により発作性または持続性の高血圧、頭痛、動悸、発汗、振戦、顔面蒼白、不安感などを生じ得る。しかし、症状は非特異的であり、無症候性の偶発腫瘍として発見される例もある。また、頭頸部の副交感神経系関連パラガングリオーマは非機能性であることが多く、局所圧迫症状、頸部腫瘤、嗄声、嚥下障害、耳鳴りなどを契機に診断される場合がある。部位と分泌能を別々に整理することが、検査選択や周術期リスク評価で欠かせない。
副腎腫瘤または副腎外病変で褐色細胞腫・パラガングリオーマを疑う場合、一般に血漿遊離メタネフリンまたは尿中分画メタネフリンによる生化学的評価を行い、その後にCT、MRI、必要時の機能画像を組み合わせる。カテコールアミン過剰が疑われる患者に侵襲的処置や腫瘍生検を安易に行うと、血圧急上昇などの危険を伴う可能性がある。実臨床では内分泌内科、泌尿器科、外科、放射線科、麻酔科、病理部門などの連携下で評価することが望ましい。


参考)Paraganglioma - StatPearls - N…
NCBI Bookshelf:Paraganglioma


医療従事者が押さえるべき分布と臨床判断

クロム親和性細胞の局在を問われたときは、「主に副腎髄質、一部は副腎外の交感神経性傍神経節」と答えるのが基本である。ただし、教育、病理報告、画像読影、内分泌評価では、その後に「頭頸部の副交感神経系関連傍神経節は非クロム親和性・非機能性のことが多い」という補足を加えると、解剖と疾患概念の混同を防ぎやすい。副腎髄質という主座と、副腎外の交感神経性傍神経節という例外的だが重要な分布を、セットで記憶することが実用的である。
特に副腎偶発腫、若年発症または家族歴を伴う褐色細胞腫・パラガングリオーマ、多発病変、再発病変、頭頸部傍神経節腫瘍、転移性病変では、遺伝性腫瘍症候群との関連を考慮する。SDHx関連、VHL関連、RET関連などを含む遺伝学的背景は、患者本人の治療計画だけでなく、病変の多発性、再発性、転移リスク、家族へのカウンセリングにも影響する。したがって、病理でクロム親和性細胞系腫瘍が疑われた時点から、部位・機能性・組織所見・免疫表現型・遺伝学的評価を統合する視点が必要である。

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