「厚生省 診療報酬改定 2026」で情報を探す際に、まず押さえたいのは、現在の制度所管が厚生省ではなく厚生労働省である点です。診療報酬改定は、保険診療で用いる点数、算定要件、施設基準、届出、請求に関する運用を見直す仕組みであり、原則として偶数年度に実施されます。現場では単なる点数表の差し替えではなく、診療体制、人員配置、患者説明、レセプト点検、システム設定、経営計画を同時に見直す契機になります。
2026年度改定では、物価・賃金上昇への対応、人材確保、医療DX、地域医療提供体制の維持、効率化と持続可能性の両立が大きな論点になります。2024年度改定でも、賃上げ、医療DX、地域包括ケア、入院医療の機能分化、在宅・介護との連携が主要テーマでした。2026年度改定は、この方向性を継続しつつ、医療機関の経営環境や人員不足、デジタル基盤の普及状況を踏まえて実務要件が具体化された改定と捉えると理解しやすいでしょう。2024年度改定では、医療DX、賃上げ、入院医療の機能分化、在宅医療・介護連携が重点的に扱われており、改定後も告示・通知を確認することが求められていました。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001252076.pdf
医療従事者が注意すべきなのは、「改定率がプラスだから自院の収入も一律に増える」という理解が正しくないことです。実際の影響は、病院か診療所か、無床か有床か、外来・在宅・入院の構成、職員数、届出済みの施設基準、患者数、算定実績、電子処方箋などのDX対応状況によって異なります。加算の新設・再編・廃止、既存施設基準の見直し、減算要件の追加によって、同じ診療科でも影響が変わるためです。
したがって、2026年度改定を読む順番は、最初に「自院に関係する診療行為と施設基準」を抽出し、次に「届出が必要な項目」と「届出なしで適用される点数変更」を分け、最後にレセコン・電子カルテ・勤怠給与・院内掲示・マニュアルまで落とし込む流れが実務的です。報道記事や解説記事は全体像の把握には有用ですが、請求判断は必ず厚生労働省の告示、通知、疑義解釈、地方厚生局の届出案内で確認してください。
厚生労働省公式サイト
2026年度診療報酬改定では、薬価・材料価格と診療報酬本体の施行日が分かれます。薬価改定と材料価格改定は2026年4月1日、診療報酬本体は2026年6月1日から施行されます。そのため、医療機関・薬局では4月請求と6月請求を同じ改定対応として一括で扱わず、対象となるマスタ更新、院内周知、患者説明、収支予測、レセプト検証の予定を二段階に分けて管理する必要があります。
参考)2026年診療報酬改定で何が変わる?基本方針や医療機関経営者…
本体改定率は2年平均でプラス3.09%、薬価等はマイナス0.87%、ネット改定率はプラス2.22%と整理されています。ただし、この数値は国全体の改定率であり、個別医療機関の増収率や利益率を示すものではありません。本体改定は2026年度プラス2.41%、2027年度プラス3.77%という段階的な考え方が示されており、自院の年度別予算を作る際は、単年度の算定見込み、患者数、届出状況、人件費・物価の上昇を分けて試算することが重要です。
参考)2026年度診療報酬改定とは?改定率や施行日、対応方法を解説…
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 薬価改定 | 2026年4月1日施行 | 薬価差益、在庫、調剤・院内処方の影響を確認 |
| 材料価格改定 | 2026年4月1日施行として案内 | 特定保険医療材料の使用実績とマスタを点検 |
| 診療報酬本体 | 2026年6月1日施行 | 点数、算定要件、施設基準、届出の確認が必要 |
| 本体改定率 | 2年平均でプラス3.09% | 2026年度プラス2.41%、2027年度プラス3.77%の整理 |
| ネット改定率 | プラス2.22% | 個別医療機関の収益増を保証する数値ではない |
二段階施行において見落としやすいのは、システムベンダーとの連携です。4月施行分は薬価・材料マスタ、6月施行分は診療行為、加算、施設基準関連の設定が中心となります。ベンダーが提供する改定プログラムの適用日、マスタ反映日、検証環境の有無、エラー時の連絡先を早期に確認しましょう。特に自院独自のセット、オーダー、テンプレート、算定チェック、文書作成支援を使っている場合は、標準マスタ更新だけで対応が完了しないことがあります。
また、6月1日以後の診療から改定後の点数や要件が適用されるため、月途中での切替に伴う受付・会計・請求の混乱を防ぐ必要があります。外来では初診・再診日、入院では入院日・算定日、訪問診療では訪問実施日を基準に適用関係を確認し、患者への窓口負担説明も準備しておくとよいでしょう。
2026年度改定の中心テーマの一つは、医療従事者の賃上げと、物価高騰による医療機関経営への対応です。診療報酬上の評価が設けられても、それを算定するには、対象職員、賃金改善の方法、施設基準、計画書・実績報告、届出期限などを満たす必要があります。評価料による収入を人件費以外へ安易に振り向けるのではなく、賃金改善と結び付けて管理するという発想が欠かせません。
2024年度改定では、外来・在宅ベースアップ評価料、入院ベースアップ評価料、訪問看護ベースアップ評価料が設けられ、届出、賃金改善、計画書・実績報告が算定の前提とされました。外来・在宅ベースアップ評価料では、対象職員の賃金改善を行う体制と地方厚生局への届出が必要であり、評価料収入は基本給等の改善やそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費などに用いる考え方が示されています。
2026年度についても、賃上げ関連の評価を確認する際は、経営者・事務部門だけで完結させず、看護部、リハビリ部門、薬剤部、検査部門、医事課、人事給与担当を含めた横断的な体制で確認することが有効です。医事部門は届出と算定要件、人事部門は対象職員と給与処理、管理部門は資金配分・実績報告、現場部門は勤務実態と人員配置をそれぞれ把握する必要があるためです。
物価対応についても、加算や基本料の増点だけを見て判断するのは危険です。食材料費、光熱費、医療材料、医薬品、人件費、保守費用、サイバーセキュリティ対策費、電子処方箋・電子カルテ関連費用などは、診療科や病棟機能によって影響が異なります。患者数が多い外来中心の診療所では、わずかな点数差でも年間では大きな差になり得る一方、患者負担増への説明や受付負担も増えます。病院では入院料、病床稼働率、看護配置、人材確保、物価上昇が複合的に影響するため、部門別収支だけでなく病棟別・機能別の分析が必要です。
外来では、初診料が291点、再診料が76点とされ、外来・在宅物価対応料やベースアップ評価料の届出状況に応じて患者負担額が変動し得ます。初診・再診の基本点数だけでなく、各種加算、診療科、届出区分、患者の負担割合により窓口負担は異なるため、「診察料が一律でいくら上がる」と単純化した説明は避けるべきです。
参考)【2026年6月1日施行】診療報酬改定で何が変わる?3割負担…
2026年度改定で注目度が高い領域が医療DXです。医療DXは、オンライン資格確認、マイナ保険証、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、電子的な診療情報連携、情報通信機器を用いた診療などを単独で導入する話ではありません。診療に必要な情報を安全に取得し、必要な職種が適切に閲覧・活用し、患者に説明し、掲示要件や記録要件を満たす運用まで構築することが求められます。
2024年度改定でも、医療DX推進体制整備加算ではオンライン請求、オンライン資格確認、診察室等での診療情報の閲覧・活用、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、マイナ保険証利用実績、院内・ウェブサイトでの掲示が要件として整理されていました。こうした構造を踏まえると、2026年度も「機器を置く」「契約する」だけでは不十分であり、利用実績と情報活用を伴う体制整備が重視されると考えるのが実務的です。
DX対応で特に重要なのは、診療報酬算定の担当者だけに業務を集中させないことです。院長・管理者、医師、看護師、医事課、システム担当、個人情報保護・情報セキュリティ担当、ホームページ担当、ベンダーが役割分担を明確にしなければ、要件の一部が抜け落ちやすくなります。たとえば掲示要件は院内掲示だけでなくウェブサイト掲載を求めるものがあり、レセコン対応済みでもホームページ更新が未完了なら運用上のリスクが残ります。
診療報酬改定に関する厚生労働省の公表資料
また、電子化が進むほどサイバーセキュリティと事業継続計画の重要性も高まります。2024年度改定では、診療録管理体制加算において、医療情報システムの安全管理、複数方式のバックアップ、ネットワークから切り離したオフライン保管、非常時対応のBCP、定期訓練・演習などが評価・要件見直しの対象となりました。2026年度改定のDX対応を進める際も、利便性だけではなく、障害時に診療を継続する手順、紙運用への切替、復旧後の記録整合、委託先との責任分界を確認しましょう。
診療報酬改定への対応は、情報収集、影響分析、届出、システム更新、職員教育、請求後の検証までを一つのプロジェクトとして進めることが大切です。改定直前に点数表だけを確認しても、必要書類の準備、施設基準の充足、人員配置の調整、掲示物の更新、レセコン検証が間に合わないことがあります。特に6月1日施行では、4月から5月の間に準備が集中しやすいため、改定公表後すぐに担当と期限を可視化してください。
最初の段階では、厚生労働省の基本方針、答申、告示、通知、疑義解釈、施設基準通知、届出様式を一次資料として収集します。次に自院の前月または前年同月のレセプトデータから、主要な診療行為、加算、入院料、在宅診療、リハビリ、検査、処方、材料使用を抽出し、改定対象と突合します。この際、「新設加算を取れるか」だけでなく、「既存の加算が維持できるか」「届出を更新しなければ失効するか」「新たな減算対象にならないか」を同時に確認してください。
次に、届出が必要な項目を一覧化します。項目名、適用開始日、届出期限、提出先、必要書類、施設基準、担当部署、確認責任者、レセコン設定日、院内掲示の要否、ウェブサイト掲載の要否、教育対象者を一つの管理表にまとめると、抜け漏れを減らせます。地方厚生局への届出期限は項目によって異なるため、過去改定のスケジュールを流用せず、必ず2026年度の案内を確認する必要があります。
レセプト対応では、改定日後の初回請求を「通常業務の延長」とせず、重点点検月として扱うことを推奨します。診療行為別に算定件数、返戻・査定、コメント付与、施設基準関連のエラー、患者負担金の差異、未収金、窓口問い合わせを確認し、前月・前年同月・改定前見込みと比較します。特に新設加算は、算定漏れだけでなく、要件を満たさないままの算定が返戻・指導リスクにつながるため、カルテ記載、同意、計画書、掲示、実績、連携記録まで確認します。
職員教育では、全職員に全点数を教える必要はありません。受付には患者負担やマイナ保険証・掲示の説明、医師には診療録記載と算定の起点、看護師・リハビリ職・薬剤師には実施記録と連携、医事課には算定ロジックと返戻対応、管理職には届出・人員配置・実績報告を中心に、職種別に教育内容を分けると定着しやすくなります。患者から「なぜ費用が変わったのか」と聞かれた場合に備え、受付用の短い説明文と、詳細説明が必要な場合の案内先も用意しておくとよいでしょう。
最後に、診療報酬改定は施行日で終わりません。告示・通知後に疑義解釈が公表され、届出様式や運用が補足されることがあります。改定後3か月、6か月、1年のタイミングで、算定件数、収益影響、届出維持要件、賃金改善状況、DX利用実績、返戻・査定傾向、職員からの運用上の課題を再点検してください。2026年度改定を単発の請求作業ではなく、医療の質、働きやすさ、経営の持続性、地域連携を見直す機会として活用することが重要です。

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