桔梗湯(ききょうとう)は、桔梗と甘草からなる漢方製剤です。医療用のツムラ桔梗湯エキス顆粒では、「咽喉がはれて痛む」状態に対し、扁桃炎および扁桃周囲炎が効能又は効果として示されています。一般用医薬品のツムラ漢方桔梗湯エキス顆粒でも、体力にかかわらず、のどがはれて痛み、ときにせきが出る場合の扁桃炎・扁桃周囲炎に用いるとされています。咽頭痛を訴えるすべての患者に画一的に勧める薬ではなく、症状、全身状態、既往歴、併用薬を踏まえて適否を判断することが重要です。
参考)医療用医薬品 : 桔梗湯 (ツムラ桔梗湯エキス顆粒(医療用)…
検索語である「桔梗湯 飲み方 うがい」における「うがい」は、感染予防を目的として薬液を吐き出す一般的な含嗽とは意味合いが異なります。桔梗湯では、粉末または溶かした薬液を少量ずつ口に含み、喉の違和感や痛みがある部位へ届かせるように「ガラガラ」と含嗽した後、吐き出さずに飲み込むという局所的な接触を意識した服用方法を指します。一般用医薬品の添付文書にも「ひと息に飲まず、うがいしながら服用する」と記載されている製品があります。したがって、「うがい薬として使う」「何度も吐き出してよい」と誤解されないよう、内服薬であることを明確に伝える必要があります。
参考)https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/J0607000640_04_A.pdf
ただし、医療用医薬品の承認用法は経口投与です。うがいを伴う飲み方は、患者が無理なく内服でき、誤嚥リスクがなく、処方医・薬剤師の説明と矛盾しない範囲で行う補助的な服薬上の工夫として位置付けるのが安全です。疼痛が強く唾液も飲み込めない患者、むせ込みがある患者、認知機能低下などで手順の理解が難しい患者には、うがい動作を無理に促さず、個別に服用可否や受診の要否を検討します。
桔梗湯の服薬指導で最も避けたいのは、製品名や規格が異なるにもかかわらず、インターネット上の情報をそのまま流用してしまうことです。医療用ツムラ桔梗湯エキス顆粒の通常の成人用量は、1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与です。一方、ツムラ漢方桔梗湯エキス顆粒の一般用医薬品では、15歳以上は1回1包(1.875g)、1日2回とされています。処方薬を服用している患者には、処方箋、薬袋、薬剤情報提供書に記載された回数・一回量を優先するよう伝えてください。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 医療用ツムラ桔梗湯 | 通常、成人は1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与 | 年齢、体重、症状により医師が調整する |
| 市販のツムラ漢方桔梗湯 | 15歳以上は1回1包(1.875g)、1日2回 | 年齢別の用量があり、2歳未満は服用しない |
| 服用タイミング | 食前または食間が基本 | 食前は食事の約30分前、食間は食後約2時間以降が目安 |
| うがいの位置付け | 少量ずつ含み、喉へ当ててから飲み込む | 口から出す含嗽薬とは異なる |
食前・食間は一般に空腹時の服用を意味しますが、患者の生活リズムや胃部不快感の有無、医師の個別指示により対応が異なる場合があります。「食間」を食事中と誤解している例もあるため、「食事と食事の間で、食後おおむね2時間以上たった時点」という具体的な言い換えが有用です。服用忘れについては、気付いた時点で服用することが原則ですが、次回の服用時刻が近い場合は1回分を飛ばし、2回分を一度に服用しないよう説明します。
参考)ツムラ漢方桔梗湯エキス顆粒 - 一般用漢方製剤・一般用医薬品…
PMDA:ツムラ桔梗湯エキス顆粒(医療用)
患者に伝える際は、「熱い湯で一気に流し込む」「薬液を勢いよく喉の奥へ送る」といった不適切な自己流を避け、無理のない手順を示します。顆粒をそのまま少量ずつ口に含み、水または湯で徐々に溶かして服用する方法は、一般用医薬品の添付文書に示されています。粉末感が苦手な患者、喉の痛みで飲みにくい患者には、少量のぬるま湯に溶かして用いる方法が考えられますが、熱傷を避けるため必ず飲める温度であることを確認します。
「ガラガラうがい」の時間や回数、溶かす湯量を、すべての製剤・すべての患者に共通する正解として断定しないことも重要です。市販薬・医療用の別、製剤の形状、患者の年齢、嚥下機能、疼痛の程度により安全に実行できる方法は変わります。特に高齢者、脳血管疾患後、神経筋疾患、鎮静作用のある薬剤使用中などで嚥下機能が低下している可能性がある患者では、うがいからの飲み込みが誤嚥につながらないかを確認します。
また、桔梗湯を服用した直後に多量の水分を飲むことが絶対に禁じられているわけではありませんが、服用時には一気飲みを避け、少量ずつ喉へ薬液を行き渡らせるという目的を共有すると、患者は行動を理解しやすくなります。味やにおいによる服薬困難が強い場合に、自己判断で服用を中止したり、別の漢方薬を追加したりしないよう、服薬方法の調整を薬剤師や処方医に相談するよう案内します。
桔梗湯には甘草が含まれます。甘草由来のグリチルリチン酸の作用により、偽アルドステロン症が生じることがあり、低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液貯留、浮腫、体重増加などに注意が必要です。医療用添付文書では、これらの異常が認められた場合に投与中止と適切な処置を行うこと、血清カリウム値などの十分な観察を行うことが示されています。
患者への説明では、「漢方だから副作用はない」「短期間なら確認不要」といった表現を避けます。特に、尿量の減少、顔や手足のむくみ、まぶたが重い、手のこわばり、強い倦怠感、手足の脱力、筋肉のつっぱり・けいれん、しびれといった症状は、服用を中止して速やかに医療機関へ相談する目安になります。ツムラの患者向け資料にも、これらは偽アルドステロン症またはミオパチーを疑う症状として記載されています。
参考)https://www.tsumura.co.jp/products/item/138.pdf
服薬情報の確認では、甘草を含有する他の漢方製剤、グリチルリチン酸またはその塩類を含有する製剤、ループ系利尿薬、チアジド系利尿薬などに着目します。これらの併用により、偽アルドステロン症や低カリウム血症、低カリウム血症に伴うミオパチーのリスクが高まる可能性があります。処方箋医薬品だけでなく、市販の感冒薬、胃腸薬、サプリメント様製品、他院処方を含めた確認が必要です。
参考)ツムラ桔梗湯エキス顆粒(医療用)の添付文書 - 医薬情報QL…
なお、医療用ツムラ桔梗湯エキス顆粒は、アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症の患者には投与禁忌とされています。高血圧、心疾患、腎機能低下、浮腫の既往がある患者では、甘草含有製剤の追加や長期継続を自己判断で行わないよう、特に丁寧に説明してください。
桔梗湯は咽喉の腫れや痛みに対する治療選択肢の一つですが、細菌性扁桃炎、扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍、急性喉頭蓋炎、深頸部感染症など、緊急性を要する病態を自宅で見逃さないことが最優先です。呼吸が苦しい、吸気時に異常な音がする、唾液を飲み込めずよだれが増える、開口しにくい、声が著しくこもる、片側の強い咽頭痛・頸部腫脹、高熱や急速な悪化がある場合は、桔梗湯の服用方法を工夫して経過を見るのではなく、早急な診察につなげる必要があります。
医療従事者が患者へ伝える際は、「桔梗湯はうがい薬ではなく飲み薬です。少しずつ口に含み、喉へ当てるようにうがいをしてから、吐き出さずに飲んでください。ただし、薬袋の回数・量が最優先です」といった短い定型文が実用的です。その後に、「むせる場合は無理をしない」「ほかの甘草入りの薬を使っていないか確認する」「むくみ、手足の力が入りにくい、息苦しさ、高熱があれば連絡・受診する」という安全確認を加えると、誤用と重症化の両方を予防しやすくなります。
患者が市販薬を選択している場合には、対象年齢、添付文書記載の用法・用量、他の感冒薬・漢方薬との重複を確認します。市販のツムラ漢方桔梗湯エキス顆粒は2歳未満には服用させないこととされ、小児では保護者の指導監督下での服用が求められています。小児や高齢者では「うがいをしてから飲み込む」という手順そのものが難しいこともあるため、年齢のみで判断せず、実際に安全に飲み込める状態かを評価してください。