
感染性角膜炎の診断において、日本眼感染症学会の「感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)」は、塗抹検鏡と培養検査を強く推奨しています 。特に細菌性角膜炎では、Giemsa染色、Gram染色、ファンギフローラY染色などを駆使して、球菌・桿菌の形態やグラム染色性を迅速に判別することが治療の成否を分けます 。
参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/infectious_keratitis_3rd.pdf
意外なポイントとして、角膜擦過物と眼脂培養で異なる菌が検出された場合、眼表面の常在菌(コリネバクテリウム、アクネ菌など)を拾っている可能性があり、臨床所見との整合性を総合判断する必要があります 。また、真菌性角膜炎では糸状菌の薬剤感受性試験が確立しておらず、通常の施設では実施困難という現実的な課題があります 。
日本眼感染症学会 感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)PDF
このリンク先に、CQ(クリニカルクエスチョン)ごとの推奨グレードとエビデンスレベル、塗抹染色の具体手順、各病原体の臨床所見の詳細が記載されています。
細菌性角膜炎の治療では、起炎菌の推定に基づき初期治療薬を選択します。ガイドラインでは、軽症では1剤、重症では作用機序の異なる2剤(フルオロキノロン系+アミノグリコシド系、またはフルオロキノロン系+セフェム系)を推奨 。
あまり知られていない事実として、実際の臨床ではガイドライン推奨の「セファゾリン併用療法」はほとんど使われておらず、フルオロキノロン単剤(ベガモックス、クラビット、ガチフロキサシンなど)が圧倒的に選択されているという大規模データ分析結果があります 。これはアドヒアランス向上と薬剤調製の手間を考慮した現実的な判断と言えます。
参考)細菌性角膜炎に最も多く使われる抗生剤点眼のパターンは?
真菌性角膜炎は、糸状菌(Fusarium属、Aspergillus属など)と酵母様真菌(Candida属)に大別され、リスク因子と臨床所見が異なります 。
| 特徴 | 糸状菌 | 酵母様真菌 |
|---|---|---|
| リスク因子 | 植物による外傷、ステロイド点眼、CL装用 | ステロイド点眼、眼表面疾患、眼科手術既往 |
| 臨床所見 | 羽毛状潰瘍(hyphate ulcer)、角膜後面プラーク(endothelial plaque) | 境界明瞭な円形病巣、細菌性と類似 |
| 第一選択薬 | 5%ピマリシン点眼液 or 1%ピマリシン眼軟膏 | アゾール系(フルコナゾール0.2%、ボリコナゾール1%) |
| 注意点 | ボリコナゾールはFusarium属に効果弱い | フルコナゾール耐性株に注意 |
Candida albicansによる真菌性角膜潰瘍の治療例
この論文では、抗真菌薬の局所投与と病変部位の搔爬が標準治療とされている一方、全身投与の有効性についてのエビデンスは確立されていないと明記されています。
アカントアメーバ角膜炎は、2000年代以降CL関連感染が増加し、早期診断・早期治療が予後を左右する難治性疾患です 。
意外な落とし穴として、治療前にステロイド点眼薬を投与した場合、視力予後の不良因子となりうることが報告されており、ステロイド点眼は推奨されていません 。また、角膜上皮内にアカントアメーバが寄生している部位は接着が脆弱なため、一見健常にみえる角膜上皮も軽く擦過するだけで簡単に剝がれ、そのような上皮はすべて除去する必要があります 。
感染性角膜炎の治療で見過ごされがちな「混合感染」と「ウイルス再燃」のリスクについて、ガイドラインは明確に警告を発しています。
この独自視点が重要な理由は、初期治療が奏効しているように見えても、背後で別の病原体が増殖している可能性を早期に察知し、治療方針を切り替えることで、角膜穿孔や視力予後の悪化を防げるからです。
感染性角膜炎診療ガイドライン(第3版)CQ-5 ステロイド併用
このガイドラインのCQ-5では、「細菌性角膜炎の治療に副腎皮質ステロイド点眼は併用しないことを提案する」と弱く推奨されています。瘢痕形成抑制目的のステロイド併用は、感染増悪のリスクを考慮し慎重に判断すべきです。
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