看護評価の書き方と実践例を解説

看護評価は、実施した看護ケアが患者の目標達成や状態改善にどの程度つながったかを、主観情報・客観情報・根拠をもとに判断し、継続や修正へつなげる記録です。具体例を通じて、伝わる評価を書けているでしょうか?

看護評価の書き方例と実践の核心ガイド

根拠が伝わる看護評価の基本
目標との比較を最初に行う

評価では看護目標を基準に、達成・部分達成・未達成を明確にし、判断の根拠となる患者の変化を示します。

事実と解釈を分けて書く

患者の発言、観察所見、数値などの事実を示したうえで、ケアの効果や問題が残る要因を論理的に判断します。

次の看護行動まで記載する

評価は結果の記録だけではなく、計画を継続・修正・追加・終了する判断と、次回確認する内容までつなげます。


看護評価とは何かを目標と結び付けて理解する


看護評価とは、立案した看護計画を実施した後に、患者の状態や反応がどのように変化したかを確認し、看護目標の達成度とケアの妥当性を判断する過程です。単に「状態は良好」「改善した」と記載するものではなく、設定した目標に対して何が変化し、どの看護介入がどの程度有効だったのかを根拠とともに示します。
看護過程では、情報収集、アセスメント、看護問題の明確化、計画立案、実施、評価が相互に循環します。評価によって「このままケアを続けるべきか」「介入方法を変える必要があるか」「新たな問題を追加すべきか」「目標を達成したため終了できるか」を判断し、次の看護へ反映します。そのため評価は、看護記録の最後に形式的に書き加える作業ではなく、個別性のあるケアを継続するための重要な意思決定です。
例えば、「疼痛が軽減し、安静時の疼痛スケールが3以下となる」という短期目標を設定した場合、評価では疼痛スケール、痛みの部位・性質、鎮痛薬使用後の変化、睡眠や離床への影響を確認します。「疼痛あり」とだけ書くのではなく、「安静時NRSは7から3へ低下したが、体動時は6であり、離床時の苦痛が残存している」のように、目標と現状の差が読み取れる表現にすることが必要です。
看護計画の評価では、目標達成度の判定、達成または未達成となった要因の分析、計画の継続・修正・終了の決定を順に整理すると記載しやすくなります。SOAP形式では、患者の言葉であるS情報、観察・測定できるO情報、そこから導くA評価、以後のP計画という流れで整理すると、事実と判断が混在しにくくなります。


参考)https://ns-pace-career.com/media/tips/07813/


看護評価を書く前に確認する項目と判断基準

看護評価を記載する前には、まず元の看護計画を見直します。看護問題、長期目標、短期目標、観察計画、ケア内容、教育内容を確認し、評価期間内に患者へどのような援助を実施したのかを時系列で把握します。目標が曖昧なままでは評価も抽象的になりやすいため、「誰が、いつまでに、どのような状態になるか」が明確な目標であることが前提です。
次に、患者の言葉、表情、行動、バイタルサイン、検査値、摂取量、排泄状況、睡眠、ADL、家族の発言などを収集します。数値だけでは患者の生活上の困難や不安を見落とすおそれがあるため、主観情報と客観情報を組み合わせて評価することが重要です。一方で、「元気そう」「問題なさそう」といった曖昧な印象のみで判断せず、観察可能な事実を記載します。


項目 基準・内容 備考
看護目標 短期目標・長期目標がどの程度達成されたかを確認する 達成、部分達成、未達成を明確にする
S情報 患者本人や家族の訴え、不安、理解度、意欲を記録する 可能な限り患者の言葉をそのまま示す
O情報 バイタルサイン、検査値、摂取量、排泄量、ADL、表情、行動を確認する 数値、回数、時間、距離などを具体的に記載する
ケアの実施状況 計画した援助を実施できたか、患者が受け入れられたかを確認する 未実施の場合は理由も記載する
要因分析 目標達成または未達成に影響した身体的・心理的・環境的要因を考える 推測だけで終えず、得られた情報を根拠にする
今後の方針 看護計画を継続、修正、追加、終了するかを決定する 次回観察する項目や介入内容を具体化する


判断の中心になるのは、看護師の印象ではなく、患者から得た情報と目標の比較です。例えば食事摂取量の改善を目標とする場合、「食欲あり」と評価するのではなく、主食・副食の摂取割合、食事に要した時間、悪心や口腔内痛の有無、体重変化、患者の発言を確認します。そのうえで、摂取量が増えた理由が食形態の調整、疼痛の軽減、食事環境の改善のどれに関連するかを考察します。
看護評価では、患者の反応を捉えた後に、その原因や誘因、改善につながる強み、今後の経過を分析する視点が役立ちます。変化した事実だけで終えず、「なぜその変化が起きたのか」「再び悪化する危険性はないか」「患者自身が活用できる力は何か」を検討することで、次の計画が具体的になります。


参考)看護におけるアセスメントの書き方|例文つきで解説! |お役立…


看護評価の書き方例をSOAPで確認する

SOAPは、S(主観的情報)、O(客観的情報)、A(アセスメント・評価)、P(計画)の順に記録する方法です。看護評価の場面では、SとOに根拠を示し、Aで目標達成度やケアの効果を判断し、Pで次の対応を明記します。重要なのは、A欄にS情報やO情報を単に再掲するだけではなく、それらを結び付けて看護上の意味を解釈することです。

  • Sには、「昨日より息苦しさが楽です」「自分でトイレまで歩けそうです」など、患者が語った言葉や感覚を記載する
  • Oには、SpO2、呼吸数、歩行距離、食事摂取量、睡眠時間、表情、実施できたADLなどの確認可能な事実を記載する
  • Aには、目標の達成度、改善または悪化の要因、残存する問題、患者のセルフケア能力を記載する
  • Pには、ケアを継続・修正・終了する方針と、次に観察・援助・指導する具体的内容を記載する

以下は、術後疼痛に関する看護評価の記載例です。看護目標を「術後3日目までに、安静時の疼痛をNRS3以下とし、疼痛をコントロールしながら病棟内を歩行できる」と設定したケースを想定します。
「S:『じっとしている時は痛みがかなり楽になった。歩く時は傷が引っ張られる感じがして怖い』と話す。O:安静時NRS3、起立時NRS5。体温36.8℃、脈拍78回/分、血圧122/70mmHg。午前に看護師付き添いで病棟内を30m歩行し、ふらつきなし。鎮痛薬内服後30分で表情の緊張が軽減し、深呼吸および咳嗽が可能であった。A:安静時疼痛は目標を達成しており、鎮痛薬の使用と疼痛時の体位調整は有効と考える。一方、体動時疼痛は残存し、離床に対する恐怖感もみられるため、歩行目標は部分達成である。P:疼痛の程度と鎮痛薬の効果発現時間を継続して確認する。歩行前に疼痛コントロールを行い、歩行距離を患者の疲労・疼痛の程度に応じて段階的に延長する。創部を支持する方法を説明し、患者が安心して離床できるよう援助する。」
この例では、「痛みが改善した」という結論だけではなく、NRS、歩行距離、表情、鎮痛薬後の変化を根拠として示しています。また、目標を達成した部分と未達成の部分を分け、未達成の背景に体動時疼痛と不安があることを分析し、具体的な次の介入へつなげています。


状況別に使える看護評価の文章例

実際の臨床では、患者の問題や看護目標に合わせて評価の焦点を変える必要があります。例文はそのまま転記するためではなく、患者固有の情報へ置き換えるための型として活用します。特に、対象者の年齢、疾患、治療段階、生活背景、理解力、家族支援の状況を反映させなければ、個別性のある評価にはなりません。
食事摂取量低下に対する評価例は次のとおりです。「短期目標である食事摂取量7割以上に対し、本日は主食8割、副食7割を摂取できた。悪心・嘔吐はなく、『温かいうちなら食べやすい』と発言があった。食事前の口腔ケアと食事姿勢の調整により、食事への集中が持続したと考える。摂取量は目標を達成したが、午後は倦怠感があり間食は摂取できなかったため、疲労の程度と体重推移を継続して確認する。食事環境の調整と口腔ケアを継続し、栄養士とも摂取しやすい献立を検討する。」
転倒リスクに対する評価例は次のとおりです。「夜間のトイレ移動時にナースコールを使用するという目標に対し、昨夜は排尿時2回ともナースコールを使用でき、転倒・転落はなかった。『一人で行くとふらつくので呼ぶようにしている』と話しており、転倒の危険性について理解がみられる。日中の歩行時には杖を使用し、見守り下で安定して病棟内20mを歩行できた。起立時に軽度のふらつきが残存するため、目標は部分達成と判断する。引き続き夜間の環境整備、コール使用の促し、起立時のふらつきの観察を継続する。」
退院指導に関する評価例は次のとおりです。「自己注射手技を説明書を見ながら一人で実施できるという目標に対し、患者は注射部位の選択、消毒、単位確認、注入、針の廃棄を一連で実施できた。単位確認時に『いつも同じ量でよいですか』という質問があり、血糖値や医師指示に応じて調整が必要な場面の理解は不十分と考える。基本手技は達成しているが、低血糖時の対応と自己判断での投与量変更を避ける必要性について、家族を含めて再指導する。」
評価の表現では、「良好」「問題なし」「できた」だけで終わらせず、何がどの程度できたかを示すことが重要です。看護記録は患者ケアの継続性を支える情報であり、他の看護師や多職種が読んだ時に、患者の変化、実施したケア、判断の根拠、次の行動が理解できる文章でなければなりません。


参考)https://tsunagaribiyori.com/kango-keikaku-hyoka-guide/


伝わらない看護評価を避ける記録上の注意点

看護評価でよくある課題は、目標と結び付かない記録、根拠のない断定、主観と客観の混在、今後の方針が書かれていない記録です。「状態は安定しているため継続する」といった表現は一見簡潔ですが、何が安定しているのか、どの観察データに基づくのか、なぜ継続が必要なのかが分かりません。読み手によって解釈が変わる表現は避け、患者の状態を具体化します。
例えば、「排泄状況は良好」という記載は、「本日排便1回、ブリストルスケール4、腹部膨満感・排便時痛なし。下剤内服後に自然排便があり、排便に対する不安の訴えはない」のように置き換えられます。そのうえで、「便秘予防の水分摂取と離床を継続し、排便間隔が2日以上空く場合は腹部症状と薬剤の影響を再評価する」と次の方針を示します。
また、評価の時点で新たな問題を発見した場合は、既存の計画を漫然と続けるのではなく、看護問題や目標の追加・修正を検討します。呼吸状態が改善していても、離床後に著しい疲労感がある、自己管理に不安がある、家族の支援体制が整っていないなど、退院後の生活に影響する問題があれば、その情報を評価に反映します。看護評価は過去のケアを採点するためではなく、患者にとってより安全で適切な次のケアを選ぶために行うものです。
最後に、評価の質を上げるためには、日々の観察を評価時にまとめて思い出そうとしないことが大切です。状態変化、患者の発言、ケア後の反応、目標に関係するデータをその都度記録し、定期的に計画と照合します。「いつ、何が、どの程度変化したか」「その変化をどう考えるか」「次に何をするか」という順序を習慣化すれば、短い記録でも根拠と方向性のある看護評価になります。





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