
ホリゾンは有効成分ジアゼパムを含むマイナートランキライザーで、ヒト向け医療用医薬品として「ホリゾン注射液10mg」などの製剤が販売されています。
参考)ホリゾン注射液10mg
犬ではてんかん発作や発作重積(てんかん重積)に対して、痙攣の急性期管理薬としてホリゾン注射液やジアゼパム坐薬(ダイアップなど)が使用されることが多く、動物病院向け通販サイトでも「人体用医薬品」としてホリゾン錠が動物医療従事者向けに供給されています。
参考)犬の発作重積 – さだひろ動物病院 松戸市新松戸…
ジアゼパムは主に中枢神経系のGABA\(_A\)受容体を増強することで、抗けいれん作用・筋弛緩作用・抗不安作用を示し、犬の発作時には「痙攣を止める即効性」への期待から選択されます。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/sinkei/HR3194-01.pdf
ホリゾン注射液10mgは丸石製薬が製造する製剤で、有効成分ジアゼパムを含み、医療用としては神経症における不安・緊張・抑うつなどを適応とするマイナートランキライザーとして位置づけられています。
参考)医療用医薬品 : ホリゾン (ホリゾン注射液10mg)
一方で動物医療現場では、適応外使用(ヒト用医薬品を犬に使用)という形でてんかん発作管理に広く用いられており、十分な情報提供とインフォームドコンセントが重要になります。
参考)◆ホリゾン錠|人体用医薬品|動物医療関係者の通販サイト ペピ…
薬理学的には脂溶性が高く、静脈内投与後短時間で脳内へ移行するため、痙攣抑制効果の発現が速い反面、分布容積が大きく再分布の影響で血中濃度が変動しやすい点が犬における投与設計上の注意点となります。
犬の発作重積(てんかん重積)は脳の不可逆的な障害を引き起こす危険があり、迅速に痙攣を止めることが最優先事項となるため、ホリゾンは「起きている痙攣を止めるために使う薬剤」として使用されるケースが多く報告されています。
参考)ホリゾン投与10分後、グニャグニャの脱力状態に。副作用なのか…
あるオンライン相談では、13歳のパグで発作が収まらず既存治療にステロイドとホリゾンが追加され、ホリゾン投与10分後にグニャグニャの脱力状態が認められた症例が紹介されており、獣医師は「量次第でそうなる」「期待した効果」と説明しています。
参考)ホリゾン投与10分後、グニャグニャの脱力状態に。副作用なのか…
この症例では、ホリゾンは注射液あるいは坐薬形態で投与され、しっかりした量を入れると約10分で脱力・鎮静が生じ、その後2~3時間程度は深い睡眠状態が続くことが想定されています。
臨床的には、発作重積の初期対応として静脈内または直腸内投与でジアゼパムを導入し、痙攣が止まった後にフェノバルビタールなどの維持抗てんかん薬へ橋渡しするプロトコールが用いられることが多く、ホリゾンは「ブレイクスルー発作に対するレスキュー薬」として位置づけられることもあります。
このような使用では、発作頻度や重積の有無、既存薬との併用状況、高齢犬や併存疾患の有無などを総合的に評価したうえで、ホリゾンの投与量・間隔を決める必要があります。
犬の発作重積治療について詳しく解説している動物病院のページでは、静脈内ジアゼパム投与による初期痙攣のコントロールと、その後の持続的な抗てんかん薬治療の重要性、集中治療室レベルの管理の必要性などが示されています。
先述のパグ症例では、ホリゾン投与10分後にグニャグニャの脱力状態となり、「発作なのか、副作用なのか心配」という飼い主の問いに対し、獣医師が「これは期待した効果であり、発作でも副作用でもない」と回答しています。
ホリゾンは抗けいれん作用に加えて筋弛緩作用や強い鎮静作用を持つため、適切量を投与すると、痙攣が止まると同時に全身の緊張が抜けてぐったりした状態になることがあり、これは「治療的鎮静」と評価すべき反応です。
臨床現場で脱力・鎮静を評価する際には、次のような視点が役立ちます。
発作が完全に止まっており、呼吸・循環が安定しているにもかかわらず、「ぐにゃぐにゃ」「グーグー寝ている」という状態は、ホリゾンの鎮静・筋弛緩作用によるものと解釈されます。
ただし、呼吸抑制や過度の低血圧、長時間の深い意識障害が続く場合は、過量投与や薬物感受性の亢進、併用薬との相互作用などを疑い、モニタリングと支持療法を強化する必要があります。
飼い主説明の際には、「ホリゾンは痙攣を止めるための薬で、効いてくると力が抜けてよく眠るようになるが、それ自体は期待する効果であり、危険な副作用ではない」という点を丁寧に伝えることで、不安を軽減できます。
一方、獣医師側は、高齢犬や呼吸器疾患を持つ犬、重度の肝機能障害が疑われる犬では、ジアゼパム代謝や呼吸抑制への影響を考慮し、投与量を下げる、投与速度を調整する、酸素投与や血液ガスモニタリングを併用するなどの工夫が求められます。
発作が収まらない犬に対して、既存の抗てんかん薬に加えステロイドとホリゾンが追加された症例では、難治性てんかんや構造的脳疾患、免疫介在性脳炎などが疑われている可能性があり、急性期治療と原因精査を並行する必要があります。
ホリゾンは急性期の痙攣コントロールに優れる一方、作用持続時間が比較的短いため、フェノバルビタールやゾニサミドなどの長時間作用型抗てんかん薬との併用で発作再発を防ぐ戦略がとられることが多いです。
臨床的な併用の基本的な考え方を整理すると次のようになります。
| 薬剤 | 主な役割 | ホリゾンとの関係 |
|---|---|---|
| ホリゾン(ジアゼパム) | 急性期の痙攣止め、鎮静・筋弛緩 | レスキュー薬、発作重積時の第一選択になりうる |
| フェノバルビタール | 維持的な抗てんかん作用 | ホリゾンで発作を止めた後の再発予防薬 |
| ゾニサミドなど | 追加・併用の抗てんかん薬 | 多剤併用で難治性てんかんに対応 |
| ステロイド | 炎症・免疫反応の抑制 | 脳炎など構造的原因が疑われる場合に併用 |
ホリゾンとステロイドの併用自体に直接的な薬物相互作用は少ないとされていますが、ステロイドによる全身状態変化(血糖値上昇、免疫抑制、筋力低下など)がジアゼパムの鎮静・筋弛緩と重なると、臨床症状の評価が難しくなることがあるため注意が必要です。
また、多剤併用では、肝酵素誘導や蛋白結合率の変化を通じて血中薬物濃度が変動しうるため、長期的には血中濃度測定や定期的な肝機能検査を行い、投与量調整を検討することが推奨されます。
犬と猫の食欲増進剤・終末期ケアについて解説した獣医師監修記事では、ステロイドや他の薬剤が全身状態や食欲に与える影響についても触れており、てんかん治療中の栄養管理を考える際の参考になります。
犬と猫の食欲増進剤の解説記事(ホリゾン併用時の全身状態評価の参考)
ホリゾンを用いたてんかん治療では、痙攣を止めることが最優先ですが、高齢犬では「どこまで積極的な発作コントロールを行うか」というQOLの視点が重要になります。
オンライン相談事例のように、13歳パグというシニア犬でホリゾンを使用した場合、発作の重症度だけでなく、2~3時間続く鎮静・睡眠状態が日常生活に与える影響や、家族の不安・介護負担も考慮したうえで治療方針を組み立てる必要があります。
実臨床では、以下のような「意外と見落とされがちなポイント」があります。
てんかんを抱えた犬・猫と暮らす家族向けに、オンラインペット相談やインスタライブで情報提供している獣医師の活動では、ホリゾン投与後の反応や生活上の工夫についても発信されており、医療従事者が家族支援のヒントを得る場になり得ます。
こうした視点を踏まえると、ホリゾン 薬 犬の使用は単に「痙攣を止める技術的手段」ではなく、長期的なケアプランの一部として位置づけられ、家族とのコミュニケーションを含めた包括的な支援が求められることが分かります。
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