有水晶体眼でも術歴があれば黄斑浮腫は起こります。
参考)線維柱帯切除後の有水晶体眼で起こり得るCME — オミデネパ…

エイベリス(オミデネパグ イソプロピル)はプロスタグランジンEP2受容体作動薬として眼圧を下げる新しいタイプの緑内障治療薬です。従来のPG関連薬とは作用機序が異なり、色素沈着などの外見的な副作用は起こしにくいとされています。
一方で、黄斑部の血管透過性に影響を与えることがあり、これが嚢胞様黄斑浮腫(CME)という視力低下を招く副作用につながります。CMEは網膜の中心にある黄斑という部分に水分が溜まる状態で、例えるなら網膜の中心にスポンジのようなむくみができるイメージです。
参考)https://www.hsp.ehime-u.ac.jp/medicine/wp-content/uploads/DInews201909-1.pdf
視野の中心がぼやけたり歪んだりするため、患者のQOLに直結する副作用です。
つまり眼圧は下がっても見え方が犠牲になるケースがあるということですね。
添付文書上も「嚢胞様黄斑浮腫を含む黄斑浮腫」が主な副作用として明記されています。処方時にはこのリスクを患者にも共有しておくことが望ましいでしょう。
本剤が明確に禁忌としているのは「無水晶体眼又は眼内レンズ挿入眼の患者」です。国内臨床試験でこれらの患者に投与した場合、黄斑浮腫の発現率が高いことが確認されたためです。
参考)https://www.asayaku.or.jp/apa/work/data/pb_1954.pdf
ここまでは多くの医療従事者にとって既知の情報でしょう。
しかし近年の症例報告では、線維柱帯切除術の既往がある「有水晶体眼」でもCMEが発生し得ることが明らかになっています。これまで「人工水晶体の患者だけがハイリスク」という認識が一般的でしたが、実際には手術歴という別軸のリスク要因が存在するわけです。
これは意外ですね。
問診時に「白内障手術歴」だけでなく「緑内障手術歴(線維柱帯切除術など)」も確認する運用に切り替えると、見落としを減らせます。カルテの禁忌チェック項目に手術歴の欄を追加しておくのも一つの方法です。
安全な処方のために確認すべき項目は明確に定められています。
具体的には以下の4点です。
この4項目をチェックリスト化しておくのが基本です。
特に白内障手術「予定」も確認対象になっている点は見落としやすいポイントです。すでに手術歴がなくても、近い将来手術を控えている患者への投与は慎重に判断する必要があります。
電子カルテのテンプレートにこの4項目をあらかじめ組み込んでおくと、外来の短い診察時間でも確認漏れを防ぎやすくなります。
黄斑浮腫以外にも、比較的高頻度で報告される副作用があります。
臨床データでは、およそ5%の患者に調節機能の異常が生じるとされています。これはピント調節がうまくいかなくなる状態で、近くの物が見えにくくなったと訴える患者が一定数存在するということです。
結膜充血も比較的よくみられる副作用です。
いずれも重篤な視力低下には直結しにくいものの、患者のQOLや服薬継続率に影響するため、初診時から説明しておくと後のクレームやドロップアウトを防ぎやすくなります。特に高齢患者では調節異常を「老眼が進んだ」と誤解するケースもあるため、点眼開始時期との関連を確認する問診が有効です。
黄斑浮腫は早期に発見できれば休薬などで改善が見込めるケースが多いとされています。
投与開始後は視力検査だけでなく、OCT(光干渉断層計)による黄斑部の定期チェックが推奨されます。OCTは黄斑の断面を数十マイクロメートル単位で確認できる検査機器で、例えるなら髪の毛の太さ程度のむくみも捉えられる精度です。
自覚症状が出る前に画像上の変化を捉えられる点が大きなメリットです。
つまり定期的なOCT検査が早期発見の鍵ということですね。
PMDAが公開する医薬品リスク管理計画書(RMP)には、製造販売後調査の詳細な副作用データもまとめられています。処方経験が浅い場合は、投与開始前に一度目を通しておくと安全管理の精度が上がります。
エイベリスの安全性プロファイルと市販後調査データを確認できるPMDAのリスク管理計画書
禁忌患者への投与を防ぐための注意喚起がまとめられた大学病院の適正使用文書