二次感染のない単純な湿疹にデルモゾール g 軟膏を漫然と継続すると、ゲンタマイシン耐性菌を選択して感染が悪化するリスクがあります。
デルモゾール g 軟膏は、岩城製薬が製造販売する副腎皮質ホルモン・抗生物質配合外用剤です。 有効成分は1g中にベタメタゾン吉草酸エステル(BV)1.2mg(0.12%)とゲンタマイシン硫酸塩1mg(力価)(0.1%)を含有します。 薬価は1gあたり27.7円で、同一成分の先発品はリンデロンVG軟膏0.12%です。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=67834
剤形は軟膏・クリーム・ローションの3種類があります。 軟膏は白色ワセリンを主体とした油性軟膏剤、クリームとローションは水中油型の乳剤性基剤です。用途に応じて使い分けられます。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00009245.pdf
| 剤形 | 基剤 | 包装 | 主な適用部位 |
|---|---|---|---|
| 軟膏 | 白色ワセリン(油性) | 5gチューブ×10 / 500g瓶 | 乾燥・落屑傾向の皮疹 |
| クリーム | 水中油型(乳剤性) | 5gチューブ×10 | 急性・亜急性で滲出傾向 |
| ローション | 水中油型(乳剤性) | 10mLボトル×10 | 頭皮・有毛部 |
なお、2018年4月の薬価改定時に基礎的医薬品となり、後発品としての取り扱いは終了しています。 室温保存が原則で、開封後は遮光保存が必要です。
参考:ゲンタマイシン硫酸塩はWHO必須医薬品リストに収載された重要な抗菌薬です。

つまり「すべての湿疹に使えるわけではない」が原則です。
参考)デルモゾールG軟膏の基本情報・添付文書情報 - データインデ…
効能効果は明確な条件付きで規定されており、湿潤・びらん・結痂を伴うか、二次感染を合併している場合のみ適応があります。 条件を満たさない乾燥性の単純な湿疹への使用は適応外となります。
具体的な適応症は以下のとおりです。
特に注意すべきは、症状が改善した時点で「速やかに使用を中止し、抗生物質を含有しない薬剤に切り替えること」という条項です。 この切り替えタイミングを逃すと、耐性菌誘導や二次感染(真菌症)のリスクが生じます。これが実臨床で見落とされやすいポイントです。

以下の患者への投与は禁忌であり、処方前に必ず確認が必要です。
| 禁忌事項 | 理由 |
|---|---|
| ゲンタマイシン耐性菌・非感性菌による皮膚感染 | 感染が増悪するおそれ |
| 真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症 | 同上、疾患が増悪 |
| 動物性皮膚疾患(疥癬・けじらみ等) | 同上 |
| 鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎 | 治癒遅延・感染拡大のおそれ |
| 潰瘍(ベーチェット病を除く) | ステロイドにより皮膚再生が抑制 |
| 第2度深在性以上の熱傷・凍傷 | 同上 |
| アミノグリコシド系抗生物質・バシトラシン過敏症の既往 | 交差アレルギーのリスク |
特に見落とされやすいのが「外耳道炎への使用時の鼓膜穿孔確認」です。 鼓膜が穿孔していた場合、ゲンタマイシン成分が中耳に達し、難聴を引き起こす可能性があります。難聴は不可逆的になる場合もあるため、耳の処方前には耳鏡所見の確認が必須です。
化粧下・ひげそり後への使用も禁忌に準じた指導が求められます。
長期連用には要注意です。 副作用は大きく「ステロイド由来」と「ゲンタマイシン由来」に分けて理解すると整理しやすくなります。
参考)デルモゾールG軟膏 - 基本情報(用法用量、効能・効果、副作…
⚠️ 重大な副作用(頻度不明)
ステロイド由来の皮膚症状(長期連用)
ゲンタマイシン由来
大量または広範囲・長期使用では、全身投与と同様の副腎皮質機能抑制が起こり得ます。 投与中止の際は急性副腎皮質機能不全を避けるため、漸減が原則です。小児では長期大量使用またはODTにより発育障害の報告もあります。
参考:副作用の体系的な理解に有用なリソース
臨床サポート:デルモゾールG軟膏 効能効果・副作用一覧

「StrongランクのBVにゲンタマイシンが配合されている」という事実が、実は処方設計において最も見落とされやすいポイントです。
ベタメタゾン吉草酸エステル0.12%はStrongランクに分類されており、フルオシノロンアセトニドの3.6倍の皮膚血管収縮能が外国人データで確認されています。 つまり抗炎症力は相当に強く、単純な炎症にはオーバースペックになる場合があります。
実臨床で意識したい使い分けのポイントを整理します。
同一成分薬として「リンデロンVG軟膏0.12%」(先発)があります。 薬価差があるため、維持期に先発に切り替えるかどうかも処方設計の判断に含まれます。
また、アミノグリコシド系外用剤として代替可能な選択肢はフラジオマイシン硫酸塩含有製剤ですが、ゲンタマイシンとは交差耐性がなく、感受性確認後に使い分けることが耐性菌管理上有用です。
| 併用薬・食品 | リスク | 対応 |
|---|---|---|
| テトラサイクリン系抗生物質 | 相互に吸収阻害 | 服用間隔を2〜4時間あける |
| セフジニル(セフェム系) | 抗菌薬吸収低下 | 投与間隔をあける |
| ニューキノロン系抗菌薬 | 抗菌薬吸収阻害 | 投与間隔をあける |
| 甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシン等) | 甲状腺薬吸収低下 | 投与間隔をあける |
| 制酸剤 | 鉄の吸収阻害 | 投与間隔をあける |
| タンニン酸含有食品(緑茶・紅茶等) | 鉄吸収低下 | 服用前後の摂取を避ける |