
掌蹠膿疱症に対する注射治療の中心は、生物学的製剤です。2026年現在、日本国内で掌蹠膿疱症に適応を持つ生物学的製剤は主に以下の3種類が挙げられます 。
参考)【トレムフィア(グセルクマブ)】とは|【医師監修】皮膚科専門…
参考)【スキリージ(リサンキズマブ)】とは|【医師監修】皮膚科専門…
参考)乾癬の生物学的製剤6剤を比較|投与間隔・自己注射・注意点
これらの薬剤は、いずれも皮下注射で投与され、医療機関での投与が基本です。一部の製剤では、患者自身による自己注射が可能な場合もありますが、掌蹠膿疱症の適応では医療機関での管理が推奨されることが多いです 。
| 薬剤名 | 標的 | 投与間隔 | 1回投与量 |
|---|---|---|---|
| トレムフィア | IL-23p19 | 初回・4週後・以降8週間隔 | 100mg |
| スキリージ | IL-23p19 | 初回・4週後・以降12週間隔 | 150mg |
| コセンティクス | IL-17A | 初回・1〜4週・以降4週間隔 | 150mgまたは300mg |
出典:
生物学的製剤を用いた掌蹠膿疱症の治療効果は、従来の外用薬や内服薬では十分な改善が得られなかった患者さんにおいて、顕著な効果が報告されています。
トレムフィアの場合、掌蹠膿疱症の適応追加は2025年3月に行われ、既存治療(ビタミンD3外用薬・PUVA療法・コルヒチンなど)で効果不十分な難治症例に対して重要な選択肢となっています 。臨床試験では、投与開始後16週〜24週以内に反応を評価し、有効性が確認された症例では継続投与が推奨されます 。
スキリージは、他の生物学的製剤の多くが2〜8週ごとの投与を必要とするのに対し、導入期(初回・4週後)を経たあとは、12週(約3か月)ごとに1回の皮下注射で維持できる点が特徴です 。この投与間隔の長さは、患者さんの通院負担を大幅に軽減するメリットがあります。
コセンティクスは、IL-17Aを阻害する製剤として、乾癬性関節炎や膿疱性乾癬にも適応があり、掌蹠膿疱症においても炎症性サイトカインの抑制により、膿疱の出現頻度や重症度を低下させる効果が期待されています 。
Treatment Guidance for Palmoplantar Pustulosis 2022(PubMed)
日本皮膚科学会による掌蹠膿疱症診療ガイドライン。治療アルゴリズムと生物学的製剤の推奨度が記載されています。
生物学的製剤は高い効果を持つ一方で、免疫系に作用する薬剤であるため、副作用のリスクを十分に理解した上で使用する必要があります。
主な副作用としては、以下のようなものが報告されています :
参考)自己免疫疾患「掌蹠膿疱症」になってわかった:ステロイド剤の恐…
特に、結核の既往がある患者さんでは、生物学的製剤の使用により結核が再活性化するリスクがあるため、治療開始前に結核スクリーニング(胸部X線、ツベルクリン反応、IGRAなど)が必須です 。
また、B型肝炎ウイルスのキャリアの場合も、ウイルス再活性化のリスクがあるため、HBs抗原・HBs抗体・HBc抗体の検査が推奨されます。
ステロイド内服との併用については、掌蹠膿疱症では皮疹に対するステロイド内服は現在推奨されておらず、基本は他の治療法が優先されます 。生物学的製剤とステロイドの併用は、関節症状が強い場合など、限定的な症例で検討されることがあります。
生物学的製剤は高額な薬剤であり、1回の投与で数万円〜十数万円の費用がかかる場合があります。ただし、掌蹠膿疱症は難病指定疾患であり、高額療養費制度の対象となります 。
高額療養費制度とは、1つの医療機関等での自己負担が限度額を超えた場合、超えた分の医療費が返還される制度です。掌蹠膿疱症の患者さんは、同じ月の別の医療機関等での自己負担を合算することも可能で、69歳以下の場合、合算できる自己負担は21,000円以上であることが必要です 。
また、難病指定疾患として認定されると、医療費の自己負担割合が2割から1割に軽減される場合や、月額上限が設定されるなど、さらなる負担軽減が図られます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 薬剤費(1回) | 約50,000円〜150,000円(薬剤により異なる) |
| 自己負担割合 | 通常2割(難病認定で1割) |
| 高額療養費制度 | 自己負担限度額を超えた分が返還 |
| 難病医療費助成 | 月額上限設定・自己負担軽減 |
出典:
掌蹠膿疱症・高額療養費制度について(kansennet.jp)
高額療養費制度の仕組みと、掌蹠膿疱症患者向けの医療費負担軽減策について詳しく解説されています。
ここまでは生物学的製剤を中心とした注射治療について解説してきましたが、掌蹠膿疱症の治療において、注射薬と同じくらい重要なのが「病巣感染」の除去です。特に、歯科病巣との関連は、多くの患者さんや医療従事者にもあまり知られていない意外な事実です。
掌蹠膿疱症診療の手引き2022(日本皮膚科学会)では、掌蹠膿疱症に対する治療に際して、禁煙と同時に歯性病巣の検索と治療が必要不可欠であると明記されています(推奨度B)。
参考)2026年3月号No.695:「掌蹠膿疱症と歯科治療の役割」…
具体的には、以下のような歯科病巣が掌蹠膿疱症の発症や悪化に関与すると考えられています :
日本人の掌蹠膿疱症患者の約6割で歯性病巣が発症因子との報告があり、皮膚科と歯科の緊密な連携が不可欠です 。
また、扁桃摘出術も、慢性扁桃炎が確認された場合、掌蹠膿疱症の皮膚症状が大幅に改善するケースが多く報告されています。藤田保健衛生大学病院の検討では、扁桃摘出術施行群の有効率(「改善」以上)は60.8%、未施行群は17.5%と、有意な改善が認められました(p<0.01)。
参考)https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205739707392
手足のできもの「歯性病巣」が原因かも(東北大学LIFE)
掌蹠膿疱症と歯科病巣の関連について、一般向けにわかりやすく解説されています。
掌蹠膿疱症に対する口蓋扁桃摘出術の有効性—80例の検討(CiNii)
扁桃摘出術の臨床効果について、80例の検討結果が報告された学術論文です。
掌蹠膿疱症の注射治療は、生物学的製剤の登場により、従来の治療で効果不十分だった患者さんにも大きな希望をもたらしています。IL-23阻害薬(トレムフィア、スキリージ)やIL-17阻害薬(コセンティクス)は、高い効果と比較的長い投与間隔を実現し、患者さんのQOL向上に貢献しています。
ただし、生物学的製剤は万能薬ではありません。副作用のリスク、費用の負担、そして何より病巣感染の除去という根本的な治療を併せて行うことが、長期的な寛解維持には不可欠です。
今後の展望としては、さらに新しい標的分子を有する生物学的製剤の開発や、経口薬(オテズラなど)との併用療法の確立、そして個別化医療(患者さんの病態に応じた最適な治療選択)の進展が期待されています 。
参考)オテズラ(アプレミラスト)とは|効果・使い方・副作用を池袋の…
掌蹠膿疱症でお悩みの方は、皮膚科専門医だけでなく、歯科医師や耳鼻咽喉科医師とも連携を取りながら、総合的な治療アプローチを受けることを強くお勧めします。
【第3類医薬品】キューピーコーワゴールドαプレミアム 280錠