
ブプレノルフィンは、日本では主に2つの商品名で流通しています。一つは大塚製薬から発売されている「レペタン」で、注射液と坐剤の剤形があります。もう一つは久光製薬の「ノルスパンテープ」で、貼付剤として提供されています。
レペタン注射液の一般名は「ブプレノルフィン塩酸塩注射液」で、薬価基準収載品としてのコードは00065617です。 日新製薬もブプレノルフィン注0.2mg「日新」、ブプレノルフィン注0.3mg「日新」を製造販売しています。
参考)医療用医薬品 : ブプレノルフィン (ブプレノルフィン注0.…
レペタンの特徴として、以下の点が挙げられます。
レペタン注射液の用法用量は、鎮痛目的の場合、通常成人にはブプレノルフィンとして1回0.2mg〜0.3mg(体重当たり4μg/kg〜6μg/kg)を筋肉内に注射します。 初回量は0.2mgとすることが望ましく、その後必要に応じて約6〜8時間毎に反復注射します。
心筋梗塞症による疼痛には、1回0.2mgを徐々に静脈内に注射します。 麻酔補助を目的とする場合は、1回0.2mg〜0.4mg(体重当たり4μg/kg〜8μg/kg)を麻酔導入時に徐々に静脈内に注射します。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=1149403A1050
ノルスパンテープの特徴は以下の通りです。
通常、成人に対し、前胸部、上背部、上腕外部又は側胸部に貼付し、7日毎に貼り替えて使用します。 初回貼付用量はブプレノルフィンとして5mgとし、その後の貼付用量は患者の症状に応じて適宜増減しますが、20mgを超えないこととされています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00059721.pdf
貼付時には、皮膚の刺激を避けるため、同じ場所に貼る場合は3週間以上空ける必要があります。 また、貼付後30秒間手のひらで押えることで、密着性を高めます。
参考)https://www.heisei-ph.com/pdf/H29.3.pdf
ブプレノルフィンは、オピオイド受容体に対する部分作動薬として作用します。 この部分作動薬という特性が、ブプレノルフィンの最大の特徴であり、他のオピオイド鎮痛薬とは異なる薬理学的プロファイルを持っています。
作用機序の詳細は以下の通りです。
ブプレノルフィンは、中枢神経系の痛覚伝導系を抑制することにより鎮痛効果をあらわします。 μオピオイド受容体を介してアゴニストとして作用し、強力な鎮痛作用を示すものと考えられています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065617.pdf
部分作動薬であるため、他のオピオイド鎮痛剤に比べ、呼吸抑制に対するリスクは低いと考えられています。 しかし、完全に呼吸抑制がないわけではなく、観察を十分に行う必要があります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00001944.pdf
ブプレノルフィンは、MOR(μオピオイド受容体)に対して異常に高い親和性で弱い部分作動薬として作用し、KOR(κオピオイド受容体)とDOR(δオピオイド受容体)に対して高い親和性で拮抗薬として作用します。
ブプレノルフィンの重大な副作用として、呼吸抑制が最も重要です。呼吸抑制から呼吸不全、呼吸停止に至った症例が報告されているため、観察を十分に行う必要があります。
参考)ブプレノルフィン注0.2mg「日新」の基本情報(薬効分類・副…
呼吸抑制の頻度は1〜5%未満で、呼吸困難は頻度不明とされています。 その他の重大な副作用には、以下のものがあります。
呼吸抑制があらわれた場合、人工呼吸又は呼吸促進剤のドキサプラム塩酸塩水和物が有効です。 ただし、心筋梗塞症にはドキサプラム塩酸塩水和物は投与しないこととされています。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/sinkei/JY-13027.pdf
重要な点として、ナロキソン塩酸塩、レバロルファン酒石酸塩などの麻薬拮抗薬の効果は確実ではないとされています。 これは、ブプレノルフィンがオピオイド受容体に非常に高い親和性で結合するため、拮抗薬では完全に解離させることが難しいためです。
ブプレノルフィンに関連する最も重篤な副作用は呼吸抑制(呼吸不全)であり、ベンゾジアゼピンやアルコールを服用している人、または基礎に肺疾患がある人に多く発生します。
医療従事者がブプレノルフィンを処方・投与する際に知っておくべき、あまり知られていない意外な情報を以下にまとめます。
1. 天井効果(セーリング効果)の存在
ブプレノルフィンは、2mg/日で天井効果がみられるため、強オピオイドに変更する必要がある場合があります。 これは部分作動薬の特性によるもので、用量を増やしても一定以上の鎮痛効果が得られなくなる現象です。
参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2014/02_04.pdf
2. 初回通過効果の高さ
ブプレノルフィンは初回通過効果が高いために経口では投与されません。 このため、注射液、坐剤、貼付剤、舌下錠の剤形のみが使用されています。
3. 貼付剤の吸収特性
ノルスパンテープは、貼付後24〜48時間で血中濃度が定常状態に達します。 このため、即効性を求める場合には適さず、慢性疼痛の管理に適しています。
参考)https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/1459.pdf
4. 離脱症状の管理
オピオイド使用障害の治療にブプレノルフィンを使用する場合、投与前に患者は中等度のオピオイド離脱症状を呈している必要があります。 これを怠ると、逆説的に離脱症状を誘発する可能性があります。
5. 体温による吸収変化
貼付剤使用時に発熱や外部からの熱(カイロ、電気毛布など)により、薬物の吸収が促進され、血中濃度が上昇する可能性があります。 患者にはこの点を十分に説明する必要があります。
参考リンク:
PMDA 使用上の注意改訂情報 - ブプレノルフィンの呼吸抑制に関する重要な安全性情報
日経メディカル処方薬事典 - ブプレノルフィン注0.2mg「日新」の詳細情報
日本疼痛学会 疼痛治療ガイドライン - ブプレノルフィンの位置づけ