ベストロンは他の目薬より先に差してもいい——そう思い込んでいる医療従事者は、実は少なくありません。

ベストロンは白内障治療に使われる懸濁性点眼液です。水溶性点眼液に比べて粒子が粗く、吸収がゆっくり進むという特徴があります。
そのため、他の水性点眼液と一緒に処方された場合、ベストロンは後から差すのが基本ルールです。先に差してしまうと、後から入れた水性点眼液がベストロンの吸収を妨げてしまう可能性があります。
つまり点眼順は「水性→懸濁性」が原則です。
具体的なイメージで言うと、水性点眼液がさらさらの水だとすれば、ベストロンは片栗粉を溶いたようなとろみのある液体です。とろみのある液は目の表面に留まりやすく、後から来た水性の薬液を弾いてしまう性質があります。この特性を知らずに指導すると、患者さんの治療効果が落ちてしまうデメリットにつながります。服薬指導の際は、お薬手帳や薬情に「ベストロンは最後」と一言添えておくと、患者さんの取り違えを防ぎやすくなります。
複数の点眼薬を使う場合、間隔をどれくらい空けるべきか迷う医療従事者は多いはずです。m3.comが紹介した論文データによると、点眼間隔が30秒だと先に差した薬液の約25%、1分で約50%、2分でも75%程度が洗い流されてしまうとされています。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/treatise/6630
5分経過するとほぼ100%が吸収された状態になるというデータです。
参考)2種類以上の点眼薬をさす場合、本当に5分以上あける必要がある…
この結果を踏まえると、ベストロンのような懸濁性点眼液は最低5分、できれば10分程度の間隔を意識したいところです。
いいことですね。
間隔が短いと、先発の薬が効果を発揮する前に流されてしまい、治療効果が半減するリスクがあります。逆に間隔を守れば、両方の薬の効果をしっかり引き出せるというメリットがあります。患者さんへの指導時には、スマートフォンのタイマー機能を使って点眼間隔を管理する方法を勧めると、実践してもらいやすくなります。
ゲル化する点眼薬や眼軟膏が処方に含まれている場合、ベストロンとの前後関係で悩む場面もあるでしょう。基本の順序は「水性点眼液→懸濁性点眼液(ベストロンなど)→ゲル化点眼液→眼軟膏」です。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/5332
ゲル化製剤は点眼後に目の表面でゲル状に変化し、他の薬液の吸収を妨げるため、必ず最後から2番目に位置づけられます。
眼軟膏はさらにその後、すべての点眼が終わってから使用するのが原則です。
どういうことでしょうか?
要は、粘性が高い薬ほど後回しにするという考え方です。ベストロンは懸濁性のためゲル化製剤よりは先ですが、水性点眼液よりは後という中間的な立ち位置になります。この順番を誤ると、粘性の高い薬が先にフタをしてしまい、後続の薬がまったく浸透しないという事態になりかねません。院内の指導マニュアルに剤形別の点眼順序表を添付しておくと、スタッフ間での認識のズレを防げます。
実際の服薬指導では、患者さんが自己判断で処方順どおりに差してしまうケースが少なくありません。処方箋の記載順と点眼の実施順は必ずしも一致しない点を、明確に伝える必要があります。
確認すべきポイントは次の通りです。
厳しいところですね。
特に高齢の患者さんは点眼順を覚えるのが難しいことも多く、薬袋に番号を振ったり、点眼スケジュール表を渡したりする工夫が有効です。こうした一手間が、治療効果の維持と患者満足度の向上、双方につながります。
つまり、ベストロンとほかの懸濁性点眼液が併用される場合、どちらを優先すべきかは治療方針によって変わるということです。単純に「懸濁性は懸濁性同士でまとめて後回し」と機械的に覚えるのではなく、治療上の優先度も踏まえた指導が求められます。この視点は検索上位の記事ではあまり触れられていませんが、実臨床では非常に重要な判断ポイントです。
参考として、点眼薬の使用方法全般については以下の資料が詳しく、点眼前の手洗いから点眼量、開封後の管理まで網羅的にまとまっています。
結論は「剤形を見極めてから順番を決める」ということです。
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