軽度認知症の高齢者にベシケアを追加投与しても、記憶検査の点数はむしろ改善することがあります。

過活動膀胱治療で処方されるベシケアは、コハク酸ソリフェナシンを主成分とする抗コリン薬です。抗コリン薬は膀胱の収縮を抑える一方、脳内のアセチルコリン受容体にも作用してしまう性質を持っています。この受容体は記憶を司る海馬に多く分布しており、長期間ブロックされ続けると記憶検査の成績が下がる例が報告されています。
参考)医療用医薬品 : ベシケア (ベシケア錠2.5mg 他)
イメージとしては、記憶を保存する「棚」への出し入れ通路が少し狭くなるような状態です。すぐに認知症と診断されるわけではありませんが、加齢による物忘れとよく似た症状が現れやすくなります。
つまり、抗コリン作用が強いほど中枢神経への影響も出やすいということですね。
服用中の患者さんに軽い物忘れの訴えが増えた場合、まず被疑薬としてベシケアを含む抗コリン薬を確認する視点が役立ちます。MMSEなどの簡易認知機能検査を定期的に実施する運用がおすすめです。
添付文書上、ベシケアには重篤な副作用として幻覚やせん妄などの精神神経系症状が明記されています。高齢者への投与に関しては、腎機能や肝機能の低下を踏まえて慎重投与の対象とされる点も見逃せません。
参考)ベシケア錠5mgの効能・副作用|ケアネット医療用医薬品検索
厚生労働省の高齢者医薬品適正使用の指針でも、抗コリン系薬剤は認知機能低下やせん妄のリスクが挙げられている薬剤群に含まれています。これは特定の一剤だけの問題ではなく、抗コリン負荷の総量として評価すべき考え方です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/kourei-tekisei_web.pdf
複数の抗コリン薬を併用している患者さんは要注意です。
添付文書の「重要な基本的注意」欄は処方前に必ず確認しておきたい項目です。院内の電子カルテに抗コリン負荷スコアの自動計算機能があれば、併用薬のリスクを一目で把握できます。
高齢女性の尿失禁治療では、抗コリン薬の中でも中枢移行性の低い薬剤を優先する考え方がガイドラインに示されています。ベシケアは比較的選択性が高い薬剤に分類されますが、それでも個人差による影響は避けられません。
具体的には、投与開始から2〜4週間後に本人や家族から「最近ぼんやりしている」「物忘れが増えた」といった訴えがないか確認する運用が有効です。症状が軽度な段階で気づければ、減量や薬剤変更で回復するケースが多く報告されています。
早めの気づきが回復の鍵になります。
一方で自己判断による急な中断は、尿失禁症状の再燃や排尿困難を招くおそれがあるため避けるべきです。用量調整は必ず医師の判断のもとで行うことが原則です。
β3作動薬であるミラベグロンなど、抗コリン作用を持たない代替薬への切り替えも検討材料になります。
見落とされがちなのが、認知症の診断プロセスにおいてベシケアなど抗コリン薬の服用歴が十分に問診されていないケースです。物忘れ外来を受診した患者さんの服薬状況を確認すると、複数の抗コリン薬を併用していたという報告もあります。
参考)飲み続けると認知機能障害につながる「過活動膀胱の抗コリン薬」…
これは「薬剤性認知機能低下」と「真の認知症」を混同してしまうリスクがあるということです。実際、被疑薬を中止しただけで認知機能検査の点数が改善した事例も存在します。
薬をやめただけで改善するなら儲けものですね。
医療経済ジャーナリストの分析によれば、長期服用によって認知症リスクが生じる薬剤として過活動膀胱治療薬が具体的に指摘されています。処方を見直す前に、まず服薬歴の棚卸しをする習慣が診断精度を高めます。
お薬手帳アプリで抗コリン薬の重複を可視化する方法も、日常業務に取り入れやすい工夫のひとつです。
高齢者への抗コリン薬投与に関する注意点や適正使用の考え方が詳しくまとめられた厚労省の指針です。
抗コリン薬ごとの認知機能への影響の違いや比較データが専門家の回答形式で解説されています。
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