「外用で治らない爪白癬だから内服に切り替えれば安心」と考えていると、投与開始後2ヵ月以内に肝不全で入院となるケースがあります。

テルビナフィン錠(一般名:テルビナフィン塩酸塩)の最も警戒すべき重大な副作用が、重篤な肝障害です。
添付文書上の頻度は 0.01% と記載されていますが、死亡に至った例が実際に報告されています。 「低頻度だから大丈夫」という判断が、患者の命を脅かすことがあります。
参考)テルビナフィン錠125mg「タカタ」の効能・副作用|ケアネッ…
重篤な肝障害(肝不全・肝炎・胆汁うっ滞・黄疸)は、投与開始後2ヵ月以内に最もあらわれやすいことが特徴です。 そのため添付文書では、投与開始後2ヵ月間は月1回の肝機能検査を義務づけています。その後も定期的なフォローが必要です。
参考)https://med.daiichisankyo-ep.co.jp/products/files/1105/20200401102344_6866_upd_pdf_intv_txt.pdf
早期発見のサインとして注目すべき随伴症状は以下のとおりです。
これらの症状は「なんとなく体がだるい」という訴えとして来院することも多く、気づかれにくい点が危険です。 つまり早期の問診と定期検査が生命線です。
また、慢性・活動性肝疾患を有する患者では、投与中に頻回の肝機能検査が必要です。重篤な肝障害がある患者への投与は禁忌とされています。
参考:テルビナフィン錠の添付文書情報・副作用詳細(ケアネット)
テルビナフィン錠125mg「タカタ」の効能・副作用|ケアネッ…
肝障害と並んで警告欄に記載されているのが、血液毒性です。汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少はいずれも頻度不明とされていますが、死亡例の報告があります。
頻度不明だからこそ、見逃しが怖いのです。
初期症状として、以下を見逃さないことが重要です。
投与前に血液検査(血球数算定、白血球分画)を実施し、投与中は定期的な血液モニタリングが必要です。 また、汎血球減少・無顆粒球症・血小板減少等の血液障害がある患者への投与は禁忌です。
臨床現場で意識したいのは「感冒症状が長引く患者」です。テルビナフィン錠を投与中の患者が「のどが痛い」「熱っぽい」と訴えたら、血液疾患を念頭に緊急血算を検討します。これが早期発見の1アクションです。
参考:テルビナフィン錠インタビューフォーム(高田製薬・JAPIC掲載)
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テルビナフィン錠は CYP2D6を阻害するという薬物動態的特性を持ちます。 この点は、処方医が皮膚科系疾患だけを意識していると見落とすリスクがあります。
CYP2D6阻害によって血中濃度が上昇する薬剤は以下のとおりです。
| 薬剤名 | 注意事項 |
|---|---|
| 三環系抗うつ剤(イミプラミン、ノルトリプチリン、アミトリプチリン) | 活性代謝物の血中濃度が上昇 → 抗コリン作用や心毒性に注意 |
| マプロチリン | 同上 |
| デキストロメトルファン(市販の咳止めに含有) | OTCでも注意が必要 |
三環系抗うつ薬はQT延長リスクもあるため、テルビナフィン錠との併用時にはECGモニタリングも考慮します。
また、シクロスポリンの血中濃度が低下するという相互作用も報告されています(機序不明)。 移植後患者では拒絶反応のリスクが高まるため、シクロスポリンの血中濃度を必ずモニタリングします。これは見逃すと拒絶につながります。
さらに、経口避妊薬(黄体・卵胞ホルモン混合製剤)では月経異常の報告があります。 若い女性患者への処方時は事前説明が不可欠です。
テルビナフィン錠が引き起こす副作用の中で、医療従事者が最も見落としやすいもののひとつが亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)です。
頻度不明と記載されており、件数自体は少ないですが、薬剤性SCLEを引き起こす薬として国際的に認識されています。
SCLEの特徴は以下のとおりです。
重要なのは、「皮膚症状=単純なアレルギー」と早合点しないことです。光線過敏部位に生じる環状紅斑が出現した場合は、SCLEを鑑別に挙げ、必要に応じて抗核抗体・抗SS-A抗体を測定します。SCLEを疑えば、それが正しい対応です。
薬剤性過敏症症候群(DIHS)との鑑別も重要で、テルビナフィン錠ではDIHSも報告されています。発疹・発熱に加え、肝機能障害・リンパ節腫脹・好酸球増多が重なる場合はDIHSを疑います。 投与中止後にも症状が再燃・遷延することがある点が特徴で、HHV-6等のウイルス再活性化を伴うことも多いです。
日常的に報告される副作用として頻度が比較的高いのが消化器症状です。
頻度1〜5%未満の副作用は以下のとおりです。
頻度0.1〜1%未満には、腹痛・悪心・下痢・胃部膨満感・食欲不振・めまい・ふらつき・頭痛・眠気・味覚異常・味覚消失などが含まれます。 胃部不快感は意外と見落とされがちですね。
味覚異常・味覚消失は患者のQOLに大きく影響します。服薬継続を阻む要因になりやすく、特に高齢者では食欲不振→低栄養につながることがあります。投与開始時に「食事の味が変わると感じたらすぐ連絡を」と患者に伝えておくことが重要です。
さらに見逃せないのが眼の副作用です。
サルへの長期大量(150mg/kg以上)経口投与で網膜上に黄白色点が発現したとの報告があります。 このため、6ヵ月以上の長期投与を行う場合には眼科学的検査が望ましいとされています。爪白癬の治療では24週以上の投与が行われるケースもあるため、眼科との連携を念頭に置きます。
精神神経系の副作用としては、頻度不明ながら錯感覚・感覚鈍麻・不安・抑うつが報告されています。 高所作業や自動車運転を行う患者への処方には、眠気・めまいのリスクを事前に説明する必要があります。
参考:PMDA 医薬品医療機器総合機構 テルビナフィン塩酸塩錠 添付文書最新版
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
| 副作用 | 頻度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 浮腫(足のむくみ) | 0.1〜1%未満 | 夕方悪化、用量依存性 |
| 顔面紅潮・ほてり | 1%未満 | 服用初期に多い |
| 動悸・頻脈 | 1%未満 | 反射性頻脈 |
| めまい・ふらつき | 1%未満 | 降圧過多 |
| 歯肉肥厚 | まれ | Ca拮抗薬クラス効果 |

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