低血圧症の原因を臨床的に整理する

低血圧症は体質だけでなく、循環血液量の減少、薬剤、心疾患、自律神経障害、内分泌疾患など多様な要因で生じます。医療従事者が確認すべき病態、生理機序、緊急性の判断、評価の視点を整理してみてはいかがでしょうか?

低血圧症 原因の基礎知識と核心ガイド

低血圧を起こす病態の見極め方
血圧低下は三要素で考える

循環血液量、心拍出量、末梢血管抵抗の変化に分けると、低血圧の原因を系統的に評価しやすくなります。

起立時低下は別途評価する

脱水や薬剤だけでなく、自律神経障害、長期臥床、加齢に伴う調節能低下などを背景として確認します。

急性低血圧はショックを疑う

出血、敗血症、アナフィラキシー、急性心疾患などによる急激な血圧低下では、原因検索と蘇生を並行します。


低血圧症は数値だけでなく灌流障害で判断する


低血圧症とは、一般に血圧が低い状態を指しますが、単一の血圧値だけで一律に疾患と決めるものではありません。もともと収縮期血圧が低めであっても、めまい、失神、倦怠感、冷汗、乏尿、意識変容などがなく、臓器灌流が保たれている場合には、直ちに病的とは限りません。一方で、普段より明らかに血圧が低下し、症候や末梢循環不全を伴う場合は、絶対値が著しく低くなくても臨床的に重要です。
医療現場では、血圧を心拍出量と末梢血管抵抗の積として捉え、さらに静脈還流と循環血液量の影響を加えて評価すると整理しやすくなります。すなわち、低血圧の主要な病態は、循環血液量の不足、心拍出量の低下、血管拡張による末梢血管抵抗の低下、またはこれらの複合です。低血圧の原因として、脱水・出血、心疾患、細動脈拡張を招く感染症やアレルギー、薬剤などが挙げられます。


参考)低血圧 - 06. 心臓と血管の病気 - MSDマニュアル家…
問診や観察では、発症時期、体位との関連、食事・排泄・発熱の有無、摂取量、出血徴候、服薬変更、既往歴、神経症状、胸痛・呼吸困難、尿量、皮膚温、意識状態を同時に確認します。特に「いつも血圧が低い」という情報だけで経過観察にせず、ベースラインからの変化と低灌流の有無を評価する姿勢が重要です。


原因は循環血液量・心拍出量・血管抵抗に分けて考える

低血圧症の原因を見落とさずに整理するためには、病態生理ごとに分類する方法が実用的です。まず循環血液量が減ると、静脈還流量と前負荷が低下し、結果として一回拍出量と心拍出量が減少します。脱水、下痢、嘔吐、大量発汗、利尿薬使用、摂取不足、消化管出血、術後出血、産科出血などが代表的です。出血では、外出血が明らかでない腹腔内出血、後腹膜出血、消化管出血も念頭に置く必要があります。
心拍出量低下では、心筋のポンプ機能障害、不整脈、弁膜症、右心系への急性負荷、心臓への流入・流出障害などを検討します。急性心筋梗塞や重症心不全、頻拍性・徐脈性不整脈、重症大動脈弁狭窄症、肺塞栓症、心タンポナーデなどは、低血圧と循環不全を来し得る重要な疾患です。心拍出量低下は、皮膚冷感、四肢冷感、湿性ラ音、頸静脈怒張、胸部症状、SpO2低下、乏尿などの所見と合わせて判断します。

病態分類 主な原因・機序 評価時の着眼点
循環血液量減少 脱水、下痢、嘔吐、発汗、利尿薬、消化管出血、術後出血 摂取・排出量、体重変化、口腔乾燥、尿量、便色、Hb変化
心拍出量低下 急性冠症候群、心不全、不整脈、弁膜症、肺塞栓症、心タンポナーデ 胸痛、呼吸困難、脈の不整、心電図、心エコー、うっ血所見
末梢血管抵抗低下 敗血症、アナフィラキシー、薬剤、熱曝露、神経原性ショック 皮膚所見、発熱、感染徴候、アレルゲン曝露、投薬歴、神経所見
自律神経性調節障害 糖尿病性神経障害、パーキンソン病関連障害、加齢、長期臥床 起立時症状、脈拍反応、便秘・排尿障害、発汗異常、服薬内容
内分泌・代謝性要因 副腎不全、低血糖、甲状腺疾患など 電解質、血糖、色素沈着、体重減少、倦怠感、ステロイド使用歴

末梢血管抵抗の低下による低血圧では、敗血症性ショック、アナフィラキシー、薬剤性血管拡張、熱環境、脊髄損傷などが重要です。敗血症初期には末梢が温かくみえることもあり、冷感の有無だけで重症度を判断できません。感染源、呼吸数、意識、乳酸、尿量、皮膚斑状変化などを総合的に評価します。アナフィラキシーでは、皮膚症状が目立たない症例もあるため、薬剤・食物・蜂毒などへの曝露後に急速な血圧低下、呼吸器症状、消化器症状が出現していないかを確認します。
MSDマニュアル:低血圧の主な原因


起立性低血圧では体位変換と自律神経・薬剤を確認する

起立性低血圧は、臥位または座位から立位への体位変換後に血圧が低下し、脳低灌流症状を来す病態です。立位では下肢や内臓静脈系に血液が貯留するため、通常は圧受容体反射を介して心拍数増加、心収縮力増強、末梢血管収縮が起こり、血圧が維持されます。この代償が不十分になると、立ちくらみ、眼前暗黒感、ふらつき、頸部痛、倦怠感、失神、転倒などが生じます。
起立性低血圧の評価では、少なくとも5分間の安静臥床後に血圧・脈拍を測定し、起立後2~5分以内の変化と症状を確認する方法が推奨されています。収縮期血圧が20mmHg以上低下、拡張期血圧が10mmHg以上低下、または収縮期血圧が90mmHg未満となることなどが診断の目安として用いられます。


参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=114

  • 急性発症では、脱水、出血、発熱、下痢・嘔吐、利尿薬、降圧薬、長期臥床を優先して確認する
  • 慢性・反復性では、糖尿病性自律神経障害、神経変性疾患、加齢に伴う調節障害、薬剤性を検討する
  • 起立時の心拍数増加が乏しい場合は、神経原性起立性低血圧を示唆する所見の一つとして評価する
  • 食後に症状が強まる場合は、食後低血圧を考え、食前後の血圧測定を検討する
  • 失神、外傷、転倒、胸痛、呼吸困難を伴う場合は、単なる立ちくらみとして扱わない

起立性低血圧の急性原因としては循環血液量減少、薬剤、長期臥床が代表的であり、慢性例では加齢に伴う血圧調節の変化、薬剤、自律神経機能障害が主要因とされています。 薬剤性を疑う場合には、降圧薬だけでなく、利尿薬、硝酸薬、α遮断薬、三環系抗うつ薬、抗精神病薬、レボドパ、鎮静薬、アルコール摂取なども一覧で確認することが重要です。


参考)起立性低血圧 - 04. 心血管疾患 - MSDマニュアル …


薬剤性・内分泌性・二次性低血圧を見逃さない

低血圧症の原因評価では、薬剤レビューが欠かせません。とくに高齢患者や多剤併用患者では、複数の薬剤が相加的に血圧低下へ関与します。血管拡張作用をもつ降圧薬、利尿薬、硝酸薬、α遮断薬、抗うつ薬、抗精神病薬、睡眠薬、抗パーキンソン病薬などは、循環血液量、血管緊張、自律神経反射、心拍反応に影響し得ます。新規処方、増量、服薬時間の変更、頓用薬の追加、脱水を伴う感染症や食欲低下が重なると、従来問題のなかった治療でも症候性低血圧を生じることがあります。
自己判断での休薬や減量は、心不全、虚血性心疾患、不整脈、高血圧などの原疾患を悪化させる可能性があるため避けるべきです。医療従事者は、症状と血圧推移、脈拍、体液量、腎機能、電解質、服薬状況を確認した上で、処方医・薬剤師と連携し、投与量、投与時間、薬剤の重複、脱水リスクの調整を検討します。
内分泌疾患では、副腎不全が重要です。副腎皮質ホルモンの不足は、血管作動性物質への反応性低下やナトリウム喪失を通じて低血圧を招きます。倦怠感、食欲不振、体重減少、腹部症状、低ナトリウム血症、高カリウム血症、低血糖、色素沈着、ステロイド中断歴などがあれば、急性副腎不全を含めて迅速な評価が必要です。甲状腺疾患、重度の低血糖、栄養障害なども、全身状態と循環調節に影響するため、臨床状況に応じて鑑別に加えます。
MSDマニュアル プロフェッショナル版:起立性低血圧の原因


緊急性を判断し原因検索と初期対応を並行する

急性の低血圧は、ショックの初期徴候である可能性があります。意識変容、冷汗、皮膚蒼白または斑状皮膚、頻呼吸、胸痛、呼吸困難、乏尿、頻脈または著明な徐脈、SpO2低下、持続する収縮期血圧低下を認める場合は、速やかに緊急対応を要します。心原性ショックでは、めまい、混乱、脈の弱さなどが代表的な徴候として挙げられ、救急対応が必要な状態です。


参考)Cardiogenic Shock - Symptoms
初期評価では、ABCDEアプローチを基盤とし、意識、気道、呼吸状態、循環、皮膚所見、体温を確認します。同時に、モニター装着、反復血圧測定、心電図、血糖測定、末梢静脈路確保、採血、尿量評価を進め、必要に応じて血液ガス、乳酸、血算、電解質、腎機能、肝機能、トロポニン、感染関連検査、画像検査、ベッドサイド心エコーなどを組み合わせます。出血、感染、アレルギー、急性冠症候群、不整脈、肺塞栓症、心タンポナーデ、副腎不全を含む時間依存性の高い病態を優先的に除外します。
低血圧への対応は、単に数値を上げることではなく、原因疾患の治療と臓器灌流の回復が目的です。循環血液量減少が疑われる場合には補液の適否を判断しますが、心不全、腎不全、右心不全、重症弁膜症などでは過剰輸液がうっ血悪化につながるため、身体所見、超音波所見、呼吸状態、尿量を踏まえた個別判断が必要です。敗血症が疑われる場合は感染源評価と抗菌薬投与、アナフィラキシーが疑われる場合はアドレナリン筋注を含む標準的救急対応、出血が疑われる場合は止血と輸血を含めた蘇生を遅らせずに進めます。
低血圧症の原因は一つとは限りません。たとえば、高齢の心不全患者では、食欲低下による脱水、利尿薬、血管拡張薬、感染症、長期臥床が重なって起立時の血圧低下を起こすことがあります。したがって、血圧値を単独で評価するのではなく、「急性か慢性か」「安静時か起立時か」「低灌流があるか」「循環血液量・心機能・血管緊張・薬剤のどこに問題があるか」という順序で整理することが、原因の見逃し防止と安全な介入につながります。




小林製薬の栄養補助食品 [ 公式 ] 血圧ヘルプ サプリ 30日分