相対リスク減少 計算と絶対リスク減少

相対リスク減少の計算式を2×2表から確認し、相対リスク、絶対リスク減少、NNTとの違い、臨床研究を患者説明へ生かす注意点を整理します。数字の大きさだけで治療効果を判断していませんか?

相対リスク減少の計算と絶対リスク減少

相対リスク減少を正しく読む要点
🧮
基本式は1−相対リスク

相対リスク減少(RRR)は、治療群のリスクを対照群のリスクで割った相対リスク(RR)から算出します。

📊
絶対リスク減少も併記する

同じRRRでもベースラインリスクが異なれば、実際に減るイベント数とNNTは大きく変わります。

🩺
対象・期間・害を同時に確認する

効果指標は患者背景と観察期間に依存します。副作用の絶対リスク増加も対にして判断します。


相対リスク減少 計算式と相対リスクの基本



相対リスク減少(relative risk reduction:RRR)は、介入によって不良転帰のリスクが対照群に比べて相対的にどの程度低下したかを示す指標です。臨床試験、コホート研究、医薬品の有効性評価などで使われます。


まず、治療群と対照群におけるイベント発生リスクを定義します。ここでいうイベントは、心血管イベント、再発、死亡、入院、感染、疾患発症など、研究で事前に定められた転帰です。予防効果を評価する場合には、一般に「起きてほしくないイベント」を対象とします。


群 イベントあり イベントなし イベントリスク
治療群 a b EER=a/(a+b)
対照群 c d CER=c/(c+d)


  • 治療群イベント率:EER(experimental event rate)
  • 対照群イベント率:CER(control event rate)
  • 相対リスク:RR=EER÷CER
  • 相対リスク減少:RRR=1−RR
  • 同じ式の別表現:RRR=(CER−EER)÷CER


たとえば、対照群のイベント率が10%、治療群が7%であれば、RRは0.07÷0.10=0.70です。したがって、RRRは1−0.70=0.30、すなわち30%となります。この場合の「30%減」は、10人中3人のイベントを減らしたという意味ではありません。「対照群で観察されたリスクを基準に、リスクが3割低下した」という意味です。


RRが1なら両群のリスクは同じであり、RRRは0%です。RRが0.60ならRRRは40%、RRが1.20ならRRRは−20%です。後者は予防効果ではなく、治療群でイベントリスクが20%相対的に高い方向を示します。ただし、点推定だけで有害と結論づけず、信頼区間を確認する必要があります。


相対リスクと相対リスク減少率の定義・2×2表を用いた計算式は、医学書院の実践統計学解説でも確認できます。


相対リスク減少 計算例と絶対リスク減少の違い

RRRは効果を大きく見せやすいため、絶対リスク減少(absolute risk reduction:ARR)を必ず並べて読むことが重要です。ARRは両群のイベント率の差であり、次式で算出します。


ARR=CER−EER


先ほどの例では、CER=10%、EER=7%なので、ARRは10%−7%=3%です。RRRは30%ですが、絶対的には100人に治療を実施したとき、期間内に減るイベントは平均で3件という解釈になります。相対値と絶対値は矛盾する指標ではなく、異なる問いに答える指標です。


指標 計算 例(CER 10%、EER 7%) 主な意味
相対リスク(RR) 7%÷10% 0.70 治療後に残る相対的リスク
相対リスク減少(RRR) 1−0.70 30% 基準リスクに対する減少割合
絶対リスク減少(ARR) 10%−7% 3% 患者100人あたりのイベント差
治療必要数(NNT) 1÷0.03 33.3→34人 追加1イベントを防ぐための治療人数


ここで重要なのは、RRRが同じでもARRが同じとは限らない点です。たとえば、RRRが30%の治療を考えます。


  • 対照群リスク10%の場合、治療群リスクは7%、ARRは3%、NNTは約34人
  • 対照群リスク1%の場合、治療群リスクは0.7%、ARRは0.3%、NNTは約334人


いずれもRRRは30%ですが、臨床的な絶対利益は10倍異なります。高リスク患者で介入の絶対利益が大きくなりやすい理由はここにあります。一方で、患者個人のベースラインリスクは、年齢、併存疾患、既往歴、重症度、治療歴、追跡期間、アウトカム定義などで変化します。試験全体のARRやNNTをそのまま全患者に当てはめることには限界があります。


日本内科学会雑誌は、「発症率33%減」と「3人治療すれば1人が利益を得る」が同義ではないことを示し、RRRとARR、NNTを区別して解説しています。


相対リスク減少 計算からNNTを求める手順

NNT(number needed to treat:治療必要数)は、追加で1件の不良転帰を防ぐために、一定期間に何人へ治療を行う必要があるかを示す指標です。予防的介入でイベントを減らす場合、NNTはARRの逆数で算出します。


NNT=1÷ARR


計算上の注意点は、ARRを必ず小数へ変換してから逆数を取ることです。ARRが2.5%なら、2.5ではなく0.025を使います。したがって、NNTは1÷0.025=40です。「40人に治療すると必ず1人だけが利益を得る」という意味ではなく、研究と同じ対象・治療期間・アウトカム定義の集団で、平均的に1件の追加イベントを回避するための人数という意味です。


実務では以下の順序で確認すると、計算間違いと過剰解釈を減らせます。


  • アウトカムが不良転帰か、有益な転帰かを確認する
  • 治療群と対照群の分母・イベント数からEERとCERを求める
  • ARR=CER−EERを小数で算出する
  • NNT=1÷ARRを計算する
  • 患者数は端数を切り上げ、観察期間を必ず併記する
  • ARRの95%信頼区間がゼロをまたぐ場合は、NNTの解釈を慎重に行う


ARRが負の場合、介入は不良転帰を増やす方向です。この場合、単に負のNNTと書くよりも、絶対リスク増加(absolute risk increase:ARI)=EER−CERを算出し、害必要数(number needed to harm:NNH)=1÷ARIとして示すほうが臨床的に理解しやすくなります。


なお、NNTの数字だけを異なる試験間で比較することは危険です。追跡期間が6か月のNNTと5年のNNTは同列に扱えません。複合エンドポイントか単独エンドポイントか、試験参加者のリスク水準、標準治療の内容もNNTを大きく左右します。


ARRからNNTを導く基本的な考え方と、NNTを「臨床効果の目安」として読む際の留意点はEBM LIBRARYの解説が参考になります。
EBM LIBRARY:絶対リスク減少とNNTの計算・解釈


相対リスク減少 計算で信頼区間と有意差を読む

相対リスク減少は推定値であり、試験で得られたRRRだけを見て効果の確実性を判断してはいけません。RRまたはRRRの95%信頼区間を確認し、無効果を示す値をまたいでいないかを評価します。


  • RRの無効果値は1.00
  • RRRの無効果値は0%
  • ARRの無効果値は0%
  • オッズ比の無効果値も1.00


例えばRRが0.70、95%信頼区間が0.50〜0.98であれば、RRRは30%、95%信頼区間は2%〜50%に換算できます。推定上はリスク低下を支持しますが、真の相対低下が小さい可能性から大きい可能性まで残っています。


反対に、RRが0.70、95%信頼区間が0.40〜1.20なら、点推定は30%の相対リスク減少を示していても、信頼区間はRR=1をまたぎます。治療による大きな利益の可能性と、無効または有害である可能性の両方を排除できません。このような結果を「30%リスクを下げた」と断定して患者説明や採用判断に使うのは不適切です。


さらに、統計学的有意差と臨床的重要性も別です。症例数が非常に多い研究では、ARRがごく小さくても統計学的有意差が出ることがあります。逆に、重篤な転帰を予防し、害が少なく、患者が強く重視するアウトカムであれば、小さなARRでも価値を持つ場合があります。相対リスク減少の数字を、患者が経験し得る絶対利益、害、負担、費用と切り離して評価しないことが大切です。


相対リスクは治療群リスクを対照群リスクで割った値であり、RRRは1−RRで求めるという基本定義は、NIHの臨床疫学テキストでも示されています。
NIH Bookshelf:相対リスク、相対・絶対リスク減少、NNTの概念


相対リスク減少 計算を患者説明に使う意外な注意点

相対リスク減少を患者説明へ使う際の意外な落とし穴は、「同じ30%減」という表現が、患者の初期リスクによって全く異なる体験を意味することです。医療者側には馴染みのあるRRRでも、患者はしばしば「自分の発症確率が30ポイント下がる」と受け取ります。これは30%の相対低下と30%ポイントの絶対低下を混同した理解です。


説明では、相対表現を省くのではなく、自然頻度と絶対数を併記する方法が有用です。例えば「この研究に近いリスクの100人では、治療しない場合に10人がイベントを起こし、治療した場合は7人でした。3人分の差で、相対的には30%少ないという結果です」と説明します。分母を100人または1,000人にそろえると、患者・家族・多職種間で比較しやすくなります。


  • 「30%減」だけで終わらせず、「100人あたり何人の差か」を続ける
  • 効果が見込まれる期間を明示する
  • 対象患者が試験参加者とどの程度似ているかを確認する
  • 複合エンドポイントなら、何が最も減ったのかを分解して確認する
  • 有害事象についてもARI、NNH、重症度を確認する


特に複合エンドポイントは、死亡、入院、軽微な症状悪化など、患者にとって重みの異なる事象をまとめていることがあります。複合エンドポイントのRRRが大きくても、その主な寄与が患者にとって比較的軽いイベントであれば、死亡や重篤な障害の絶対利益を別に確認する必要があります。逆に、希少でも致命的な転帰を防ぐ介入では、NNTが大きくても臨床的意義が高いことがあります。


相対リスク減少は、治療効果をコンパクトに比較するための有用な指標です。しかし、意思決定で中心に置くべきなのは、患者のベースラインリスク、ARR、NNT、NNH、追跡期間、アウトカムの重要性、患者本人が何を利益・負担と考えるかです。RRRを入口にしつつ、絶対リスクへ戻って読むことが、数字を臨床判断に変えるための基本になります。

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