「周産期センター一覧」は、一般に厚生労働省が公表する「周産期母子医療センター一覧」を指します。周産期とは、妊娠、分娩、産褥期に加え、新生児期を含む母児双方の医療を扱う領域です。周産期母子医療センターは、母体・胎児・新生児のリスクや重症度に応じて医療を提供する地域ネットワークの重要な構成要素です。
一覧には、都道府県ごとに区分、施設名、指定または認定年月日、住所、電話番号が掲載されています。令和8年4月1日現在の厚生労働省リストでは、総合周産期母子医療センターが113か所、地域周産期母子医療センターが298か所、合計411か所とされています。したがって、検索結果や民間サイトの掲載情報だけで施設を判断するのではなく、まず国の公式リストで対象施設・区分・更新時点を確認することが基本になります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001712292.pdf
ただし、一覧に掲載されていることは、特定の疾患、妊娠週数、母体搬送、新生児搬送をいつでも受け入れられることを意味するものではありません。実際の紹介や搬送では、当日の空床状況、NICU・GCU・MFICUの稼働状況、手術室・麻酔科・輸血部の対応、母体合併症の専門診療科の体制などを、地域の周産期搬送ルールに沿って確認する必要があります。
厚生労働省「周産期母子医療センター一覧(令和8年4月1日現在)」
周産期センター一覧を読むうえで最も重要なのは、「総合」と「地域」の区分を機械的な優劣として扱わず、それぞれの機能と連携上の役割を理解することです。総合周産期母子医療センターは、ハイリスク妊娠や重症母体、新生児の高度医療に対応する中核施設として位置付けられます。地域周産期母子医療センターは、産科・新生児医療を担う小児科等を備え、比較的高度な周産期医療を担いながら、総合センターや地域の分娩取扱施設をつなぎます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000571647.pdf
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 総合周産期母子医療センター | 高リスク妊娠への医療と高度な新生児医療を担う中核施設 | MFICUを含む産科病棟、NICUを含む新生児病棟、常時の母体・新生児搬送受入体制が求められる |
| 地域周産期母子医療センター | 周産期に係る比較的高度な医療を提供する施設 | 産科と新生児医療を担う小児科等を備え、地域の連携・戻り搬送にも関与する |
| NICU | 新生児集中治療室 | 総合センターは原則9床以上、12床以上が望ましいとされる |
| MFICU | 母体・胎児集中治療室 | 総合センターでは原則6床以上が示され、地域の人口規模に応じた例外がある |
| 一次・二次の分娩施設 | 正常分娩、妊婦健診、日常的な周産期診療を担う | 急変時は地域・総合センター等へ迅速に紹介・搬送できる連携体制が重要 |
総合センターにおけるNICUは、原則として9床以上、望ましくは12床以上とされ、三次医療圏の人口が概ね100万人以下の地域では当分の間6床以上でも差し支えないとされています。一方、地域センターにも新生児病室を備え、NICUを設けることが望ましいとされていますが、総合センターと同一の病床数基準が一律に適用されるわけではありません。
臨床では、「総合でなければ対応できない」「地域だから高度医療を担えない」と単純化しないことが必要です。例えば、特定の地域センターが母体救急や新生児医療で大きな役割を持つ場合もあります。逆に、総合センターであっても、専門的な心疾患、脳血管疾患、精神疾患、外傷、感染症などの合併症については、院内専門科や他施設との連携条件が個別に異なります。
周産期センター一覧は、地域の連携先を把握するための基礎資料として有用ですが、紹介先を即断するための単独資料ではありません。実務では、都道府県の周産期医療体制整備計画、周産期搬送基準、搬送調整窓口、地域の周産期救急情報システム、各施設の紹介予約・救急受入窓口を併せて確認します。とくに母体・新生児の緊急搬送では、平時に連絡先と搬送経路を共有しておくことが安全性に直結します。
照会時には、「周産期センターであるか」だけでなく、依頼目的を明確にします。例えば、切迫早産での母体搬送なのか、重症妊娠高血圧症候群への緊急対応なのか、先天性疾患が疑われる胎児の計画分娩調整なのか、出生後の人工換気管理を要する新生児搬送なのかで、必要な機能は異なります。主訴と病名だけではなく、母体バイタル、出血量、子宮収縮、胎児心拍所見、妊娠週数、既往歴、検査値、投与薬剤、輸血の要否、実施済みの処置を構造化して伝達することが重要です。
周産期医療では、地域の診療所・病院と周産期母子医療センターが役割分担を行うオープンシステム、セミオープンシステムも活用されます。オープンシステムは、地元で健診を担当した医師・助産師が分娩時に連携病院へ出向いて対応する形態です。セミオープンシステムは、妊婦健診を地域で行い、分娩は連携病院で行う形態です。地域の人的資源を生かしつつ、安全な分娩と緊急時対応を両立させるための実務的な仕組みといえます。
周産期センター一覧は全国を一括で把握できる反面、都道府県ごとの医療資源、地理、交通条件、出生数、搬送距離、近隣県との相互支援体制までは十分に読み取れません。そのため、施設数だけを比較して「多い地域は安心」「少ない地域は機能不足」と判断することは適切ではありません。広域で搬送を行う地域、大学病院や小児専門病院が役割分担する地域、離島・へき地を抱える地域などでは、実効的な体制は大きく異なります。
例えば福井県では、令和8年4月1日現在、福井県立病院と福井大学医学部附属病院が総合周産期母子医療センターとして掲載されています。地域周産期母子医療センターには福井愛育病院、福井県済生会病院、福井赤十字病院、市立敦賀病院、杉田玄白記念公立小浜病院が掲載されています。県内の施設名を把握することは出発点になりますが、実際の紹介・搬送では福井県の地域ルールと各施設の受入条件を別途確認する必要があります。
なお、施設の名称変更、組織再編、指定区分の変更、新規認定などにより、一覧は更新されます。令和8年4月1日現在のリストにも、千葉県の順天堂大学医学部附属浦安病院、国際医療福祉大学成田病院、兵庫県の兵庫医科大学病院など、新たな指定等年月日が記載された施設があります。古いPDF、院内で保存された連絡表、検索エンジンのキャッシュだけに依存せず、更新日を必ず確認する運用が求められます。
周産期センター一覧を最も有効に使う方法は、単なる施設検索表ではなく、地域の母体・胎児・新生児医療ネットワークを可視化する台帳として扱うことです。院内の産婦人科、小児科・新生児科、救急部門、麻酔科、輸血部、放射線部、地域連携室、MSW、助産師、保健師が共通の情報源を持つことで、急変時の初動を標準化しやすくなります。
院内マニュアルには、公式一覧から得られる施設名・住所・代表電話に加え、都道府県の搬送調整窓口、夜間休日の連絡手順、母体搬送と新生児搬送の分岐、情報提供書のテンプレート、画像共有手段、搬送車両・添乗の基準、家族への説明担当、戻り搬送時の連絡手順を整理しておくと実用性が高まります。ただし、電話番号や受入手順は変わり得るため、定期的な点検と改訂が不可欠です。
また、周産期医療の連携対象は産科と新生児科だけではありません。重症妊産婦では救急、集中治療、循環器、脳神経、精神科、麻酔科、輸血部、感染症、手術部門との協働が必要になります。厚生労働省は、周産期医療体制の構築において、正常分娩への安全な医療、24時間の周産期救急、新生児医療、NICU退院後の療養・療育支援を含む連携体制を目指す方向として示しています。
一覧の活用は、紹介時だけに限定されません。合同症例検討会、妊産婦死亡・重症妊産婦事例の振り返り、NICU退院児のフォロー体制、産後ケア・精神保健・自治体支援との接続、災害時の母児搬送訓練にも活用できます。総合センターには災害時を見据えた業務継続計画の策定が求められており、周産期医療は平時の診療連携と災害時の広域調整体制を連続した課題として捉える必要があります。
周産期センター一覧を確認したら、次に必要なのは、地域の実情に即した連携先の把握と、病態別・時間帯別の実践的な連絡ルートの整備です。公式リストを定期更新し、施設区分の意味を理解し、個別の受入可否は必ず直接確認するという三段階を徹底することが、母児の安全な紹介・搬送につながります。