精神科専門療法は、医科診療報酬点数表の「第2章 特掲診療料」「第8部 精神科専門療法」に位置付けられる診療報酬項目です。精神疾患や精神症状を有する患者に対して、精神療法、集団療法、作業療法、デイ・ケア、訪問看護、退院支援、在宅患者支援などを実施した場合に、その内容に応じて評価します。
実務上、狙いワードである「精神科専門療法 点数」を検索する際には、単に「何点か」を確認するだけでは不十分です。該当区分、対象患者、実施場所、診療時間、実施者、算定頻度、施設基準の届出、他項目との併算定可否までを一連で確認する必要があります。特に外来では、通院精神療法と精神科継続外来支援・指導料、認知療法・認知行動療法、心理支援に関連する評価を混同しないことが重要です。
精神科専門療法の通則では、原則として第1節に掲げる各区分の所定点数により算定し、当該療法に薬剤を使用した場合には第1節の点数と第2節の薬剤料を合算します。また、特に規定がある場合を除き、精神科を標榜する保険医療機関で算定する取扱いです。したがって、算定判断では「精神科標榜の有無」と「例外的に他科でも算定できる項目か」をまず区別します。厚生労働省「第8部 精神科専門療法 通則」
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603759.pdf
なお、診療報酬は改定や疑義解釈、マスター更新により取扱いが変わり得ます。公開前の原稿や院内マニュアルでは、適用時期を明記したうえで、診療報酬情報提供サービスおよび地方厚生局の最新情報を確認する運用が不可欠です。診療報酬情報提供サービスでは令和8年度診療報酬改定に対応した情報・マスターが提供されています。診療報酬情報提供サービス
参考)302 Found
精神科専門療法には多数の区分がありますが、日常的なレセプト確認で遭遇しやすい項目を中心に、代表的な点数と注意点を整理します。以下は厚生労働省公開の点数表に基づく代表例であり、実際の請求では通知、施設基準、患者の状態および当該改定年度の取扱いを必ず照合してください。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 精神科電気痙攣療法 | 閉鎖循環式全身麻酔ありは2,800点、その他は150点 | 1日1回限り。閉鎖循環式全身麻酔の点数には所定の麻酔費用が含まれる |
| 経頭蓋磁気刺激療法 | 1,200点 | 施設基準の届出が必要。薬物治療で十分な効果が認められない成人うつ病患者が対象 |
| 入院精神療法(Ⅰ) | 400点 | 精神保健指定医が30分以上実施し、入院後3月以内、週3回まで |
| 入院精神療法(Ⅱ) | 入院後6月以内は150点、6月超は80点 | 原則、入院後4週間以内は週2回、以後は週1回まで |
| 通院精神療法 | 措置入院退院後の計画対象者は660点、初診日に60分以上は540点、30分以上は400点、30分未満は330点 | 初診日は30分超、再診等は5分超が算定の時間要件 |
| 在宅精神療法 | 措置入院退院後の計画対象者は660点、初診日60分以上は600点、60分以上は540点、30分以上60分未満は400点、30分未満は330点 | 通院精神療法との合計頻度に注意 |
| 精神科継続外来支援・指導料 | 55点 | 病状、服薬状況、副作用確認を主とした支援。多剤投与時の算定制限がある |
| 標準型精神分析療法 | 390点 | 診療に要した時間が45分超の場合に算定 |
| 認知療法・認知行動療法 | 医師による場合480点、医師・看護師共同の場合350点 | 施設基準の届出が必要。一連の治療につき16回まで |
| 精神科作業療法 | 220点 | 施設基準の届出が必要 |
| 精神科デイ・ケア | 小規模590点、大規模700点 | 施設基準および診療計画の要件を確認する |
| 精神科デイ・ナイト・ケア | 1,000点 | 施設基準の届出が必要。別途、疾患別等診療計画加算40点がある |
上表のうち、通院・在宅精神療法は外来精神科で特に重要な基本項目です。一方、認知療法・認知行動療法、精神科作業療法、経頭蓋磁気刺激療法、ショート・ケア、デイ・ケア、ナイト・ケアなどは、個別に施設基準の届出を要するものがあります。「実施した」という事実だけで所定点数を算定できるわけではなく、届出済みの保険医療機関において、患者要件・実施要件を充足して初めて請求できます。精神科専門療法の区分別点数・注記
通院・在宅精神療法は、入院中ではない精神疾患または精神症状を伴う脳器質性障害のある患者に対し、精神科を担当する医師が、一定の治療計画の下で継続的な働きかけを行う治療方法です。危機介入、対人関係の改善、社会適応能力の向上を目的とした指示・助言などが含まれます。単純な処方継続、形式的な服薬確認、短時間の定型的な診察のみでは、療法としての内容を説明できないおそれがあります。厚生労働省資料「通院・在宅精神療法」
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001604903.pdf
通院精神療法の基本的な点数は、初診日に60分以上実施した場合が540点、その他の患者で30分以上が400点、30分未満が330点です。ただし、精神保健福祉法上の措置入院を経て退院し、都道府県等が作成する退院後支援計画に基づく支援期間中の患者に対して、当該計画上で療養を担当する精神科医師が実施した場合は660点となります。
在宅精神療法では、初診日に60分以上が600点、その他の60分以上が540点、30分以上60分未満が400点、30分未満が330点です。通院と在宅で時間区分が完全に同じではないため、在宅診療の場面では「初診日か」「60分以上か」「30分以上60分未満か」「30分未満か」を正確に記録しておく必要があります。
頻度にも上限があります。退院後4週間以内に行う場合は、通院・在宅精神療法を合わせて週2回まで、それ以外は両者を合わせて週1回までが原則です。つまり、同一患者に対して通院精神療法と在宅精神療法を別項目として個別に上限管理するのではなく、両方を通算して頻度判定する必要があります。
また、抗うつ薬または抗精神病薬をそれぞれ1回の処方で3種類以上投与している場合には、所定要件を満たさなければ所定点数の50%での算定となる取扱いがあります。薬剤の種類数、臨時投薬の有無、やむを得ない多剤投与に該当するか、必要な記録があるかを、処方内容とレセプトの双方で点検することが大切です。通院・在宅精神療法の注記と多剤投与時の取扱い
精神科専門療法では、基本点数だけではなく、加算の算定要件と同日併算定の制限が請求精度を左右します。加算を見落とすと適切な評価を受けられない一方、併算定不可の項目を重ねると返戻や査定につながる可能性があります。診療行為の実施日、患者区分、専門職の関与、届出状況を連動させたチェックが必要です。
通院・在宅精神療法に関しては、20歳未満の患者に対して一定期間内に実施した場合、20歳未満加算を算定できる取扱いがあります。また、児童・思春期の専門的な体制を備える医療機関では、児童思春期精神科専門管理加算の対象となる場合があります。ただし、これらは重複して算定できないため、患者年齢だけで自動判定せず、実施施設と適用する加算の優先関係を確認することが必要です。
抗精神病薬を服用している患者に対し、客観的指標による副作用評価を実施した場合には、特定薬剤副作用評価加算として月1回25点を算定できる場合があります。ただし、通院・在宅精神療法側で算定した月に、精神科継続外来支援・指導料側の同趣旨の加算を重ねて算定することはできません。評価実施日だけではなく、月単位での重複を確認する必要があります。特定薬剤副作用評価加算と精神科継続外来支援・指導料
認知療法・認知行動療法は、医師による場合480点、医師と看護師が共同して行う場合350点です。入院中以外の患者に対し、習熟した医師が一連の治療計画を作成して患者に説明したうえで実施し、一連の治療について16回まで算定できます。同日に行う他の精神科専門療法は、認知療法・認知行動療法の所定点数に含まれるため、同日請求の設計時には二重計上がないかを確認してください。
精神科継続外来支援・指導料は55点であり、病状、服薬状況、副作用の有無等の確認を主とした支援を行った場合に算定する項目です。医師の支援に加え、医師の指示の下で保健師、看護師、作業療法士または精神保健福祉士が療養生活環境の整備に関する支援を行った場合は、40点を加算できる仕組みです。ただし、他の精神科専門療法と同日に行う場合の当該支援に係る費用は、他の精神科専門療法の所定点数に含まれます。精神科継続外来支援・指導料の点数と注記
精神科専門療法の適正請求では、点数表の暗記よりも、診療録・予約情報・スタッフ記録・届出状況・レセプトが矛盾なくつながっていることが重要です。特に通院・在宅精神療法は、時間区分で点数が変動するため、診療録の時刻記載が不明確であれば、30分以上や60分以上の根拠を示しにくくなります。
診療録では、開始時刻と終了時刻、または実施時間を明確にし、単に「精神療法を実施」と記載するだけでなく、患者の病状、危機性、自殺念慮の評価、服薬状況、副作用、生活上の問題、対人関係、就労・就学状況、家族背景、具体的な介入内容、治療目標、次回までの方針を患者ごとに記録します。記載はテンプレートを活用してもよいですが、個別性のない定型文のみでは、実際に行った精神療法の内容を十分に裏付けられないおそれがあります。
請求前には、診療日ごとに「区分」「時間」「初診・再診」「実施医師」「精神保健指定医の該当性」「対象患者要件」「頻度上限」「多剤投与時の減算判定」「併算定不可項目」「加算の重複」「施設基準届出」を照合するフローを設けると有効です。とくに初診日に60分以上の通院・在宅精神療法、措置入院後の継続支援、児童思春期関連加算、認知療法・認知行動療法、オンラインを用いる精神療法は、通常の再診より確認項目が増えるため、受付・医師・医事部門で情報共有する体制が求められます。
精神科外来の評価は、診察時間、患者の重症度、専門職連携、地域連携、救急対応などと密接に関わります。厚生労働省の資料でも、通院・在宅精神療法は診察時間や精神保健指定医であるかどうかにより評価が分かれること、早期診療体制充実加算は精神科救急医療や時間外診療体制等を含む体制評価であることが示されています。点数だけを目的にせず、患者に必要な治療を適切に実施し、その根拠を正確に記録・請求することが、精神科専門療法の実務における基本です。精神医療に係る現状と課題に関する厚生労働省資料