
世界全体の65歳以上人口の割合は10.4%ですから、日本はその約3倍の高齢化率となっています。2位のイタリアとも4.3ポイントの差があり、日本の高齢化の進行度が際立っていることがわかります。
参考)高齢化率とは?2025年は29.4%で過去最高|推移・将来推…
内閣府 令和8年版 高齢社会白書
最新の日本の高齢化率や高齢社会対策の全体像が掲載された政府公式資料。試験出題頻度も高い。
2026年、日本社会は「2026年問題」と呼ばれる大きな転換点を迎えます。これは、第二次世界大戦直後の1947〜1949年に生まれた団塊世代(約800万人)が、2025年末から2026年にかけて全員が75歳以上の後期高齢者となることで引き起こされる、社会・経済の大規模な構造変化を指します。
参考)2026年問題とは?団塊世代の後期高齢者化が日本社会・ビジネ…
厚生労働省の推計によると、2026年時点で後期高齢者の人口は約2,200万人に達する見通しです。これは日本の総人口の約18%に相当します。問題はその「増加スピード」にあります。団塊世代が一斉に75歳を超えるため、後期高齢者人口が数年間で急増し、社会保障制度・医療機関・介護事業所への負荷が集中的に高まります。
高齢化率の分子となる「高齢者」は、日本では65歳以上を指すのが一般的ですが、「高齢者の医療の確保に関する法律」では65〜74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と区分しています。この区分は単なる年齢の話ではなく、医療制度・介護保険・就労率・消費行動など多くの社会システムに直結します。
参考)超高齢社会とは?高齢化社会・高齢社会との違いと日本の到達年【…
高齢化が進むほど、慢性疾患の管理や長期介護が必要になり、医療費・介護費が膨らみます。都市部でも地方でも、施設不足や人材不足、移動手段の不足により、必要なサービスを受けにくい問題が起こります。
参考)医療・介護対策に必要な地域包括ケアシステムとは?高齢者にやさ…
後期高齢者1人あたりの年間医療費は75歳未満の約2倍以上とされ、国民医療費全体の押し上げ要因となります。要介護・要支援認定者数のさらなる増加が見込まれ、介護人材不足は一層深刻化します。
この状況に対応するため、地域包括ケアシステムの構築が急務となっています。地域包括ケアシステムは、介護や医療が必要になっても高齢者が地域に住み続けられる仕組みのことです。地域の特性に合ったシステムを作るため、自治体、医療機関、介護事業者、ボランティア団体など多様な関係者と連携する必要があります。
65歳以上の高齢者では「単独世帯」が最も多く、かつ増加を続けています。このため、要介護状態になっても可能な限り住み慣れた地域で生活できるよう、地域において医療・介護・予防・住まい・生活支援の各サービスを整備し、それを有機的に結合する地域包括ケアシステム、さらに、これを進化させた地域共生社会の構築を急ぐべきです。
参考)65歳以上高齢者での単独世帯増加踏まえ地域包括ケアシステムの…
人手不足や高齢化の進展に対応するため、医療機関と介護施設が連携・役割分担を進め、地域全体で効率的かつ持続可能な医療・介護の提供体制を作ることが求められています。地域の医療機関が協力して在宅医療の24時間体制を構築するとともに、高齢者施設での急変時に備え、協力医療機関の確保や搬送ルールの整備を行うことが強調されています。
参考)【介護保険最新情報】Vol.1525 「医療計画及び介護保険…
厚生労働省 地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムの概要や具体事例、自治体の取り組みが詳しく解説された公式ページ。
これまで人口の高齢化は、医療費や社会保障費の増加、労働力減少を招き、経済成長を押し下げる要因として語られてきました。しかし、この認識は変わりつつあります。
参考)高齢者は“お荷物”ではない 長寿を成長に変える「日本とシンガ…
日本の国家予算における社会保障関係費の割合は、1970年代の約5%から現在は25%へと急拡大しています。この50年間で5倍に膨れ上がった背景には、世界に例を見ない速度で進行する人口高齢化があります。
参考)将来の年金は本当にもらえるのか?膨張する社会保障費と世代間格…
1970年度の社会保障関係費は約3兆円でGDP比5%程度でしたが、2025年度にはGDP比25%に達する見通しが示されています。2024年度の社会保障給付費は前年度比2%増の138兆3,019億円で、新型コロナウイルスへの対応で給付費が膨らんだ21年度に次いで過去2番目の高水準です。
2040年には、経済活動を支える生産年齢人口が、2025年の推計と比べて約1,200万人減ると見込まれています。この変化は、労働力の確保、経済全体の生産性、社会保障制度の持続可能性に、極めて大きな影響を与えかねません。
参考)【2040年問題】企業戦略の転換点!長期的視点で描く持続可能…
さらに、社会保障給付費は2018年比で約1.5倍に膨らむ見通しで、現行制度の維持が難しくなる可能性が高いと考えられます。このように2040年問題は、高齢化、人口減少、労働力不足、社会保障制度の逼迫が複雑に絡み合い、社会と経済の未来を根本から揺さぶる構造問題です。
医療従事者として特に注目すべきは、厚生労働省が2026年7月に公表した「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~」です。本プランでは、直ちに取り組むべき重点領域として6つの項目が設定され、「リハビリテーション」も明記されました。
参考)厚労省「攻めの予防医療」、リハビリを予防・医療・介護貫く重点…
「リハビリテーション」については、「科学的分析を活用したリハビリテーションへの主体的な参加への支援」が掲げられ、新規事項としてポータルサイト等によるツールを用いた情報発信・普及啓発が盛り込まれました。地域リハビリテーション活動支援事業による、住民主体の通いの場、地域ケア会議等へのリハビリテーション専門職等の関与の推進、生活機能が低下している高齢者を対象とした「サービス・活動C」(短期集中予防サービス)の推進、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション等の介護保険サービスにおけるリハビリテーションの適切な評価とサービス提供体制の強化が図られます。
高齢化が進む社会では、単に「病院が忙しくなる」という話では終わりません。むしろ問題は、高齢者が増えるのに、病院だけでは支えきれなくなるというところにあるのです。これから増えていく高齢者の中には、85歳以上の人も多いです。そして、その中には一人暮らしの人もいます。子どもがいても、遠くに住んでいるかもしれません。
参考)高齢者が増えるのに、病院だけでは支えられない時代が来る|藍に…
医療と介護と生活が、全部つながった問題になります。高齢者ウェルビーイングは、生活者とその周囲を支えるために、医療・介護、金融、交通、住まい、余暇など複数の領域が連携して取り組むべきテーマです。社会的意義にとどめるのではなく、企業が継続的に取り組めるビジネスとして成立させるための視点が重要となります。
こうした課題は、従来の制度や市場設計では十分に扱われてきませんでした。医療・介護の枠組みではカバーしきれず、かといって個人や家族に丸投げするには社会コストが無視できない——まさに大規模な「空白領域」があるのです。
参考)https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/wellbeing-of-the-elderly/growth-base.html
厚生労働省 U.E.N.O.Plan
予防医療・健康寿命延伸のための具体的な施策パッケージ。リハビリテーションの位置づけが明記。
高齢化の意味を理解することは、医療従事者として今後の方針を定める上で不可欠です。高齢化率という割り算の分子はもう動かせません。では分母はどうか。地域の悪循環と大都市圏の高齢化を踏まえ、介護の現場からできることを考える必要があります。
参考)高齢社会対策とは?「高齢者対策」より広い概念|分子は動かせな…
あらためて数字を確認します。2025年の高齢化率は29.4%で過去最高、2050年には37.1%になると推計されています。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年に34.8%、2050年には37.1%まで上昇する見込みです。
65歳以上66万人の1人暮らしの人は933万人を超え、最多を更新しています。団塊の世代が75歳以上となり、「老老介護」が一段と深刻化しており、介護疲れによる共倒れや単身者の孤立が課題となっており、支援体制の充実が急務です。
参考)日本の医療・社会保障政策:多岐にわたる改革と喫緊の課題(2/…
高齢化は、経済にとって「負担」なのか。それとも「成長の機会」になり得るのか。高齢者ウェルビーイングは「社会課題」ではなく「次の成長基盤」と捉える視点も重要です。
医療従事者として、高齢化の意味を正しく理解し、地域包括ケアシステムや予防医療、リハビリテーションの強化など、多角的なアプローチでこの課題に取り組むことが求められています。
国立社会保障・人口問題研究所
日本の人口推計や社会保障に関する最新のデータや研究結果が掲載された公式機関。