化学受容器の場所と役割|頸動脈体・大動脈体の解剖と機能

化学受容器はどこに存在し、どのような役割を果たしているのか。頸動脈体と大動脈体の正確な解剖学的位置、中枢化学受容器との違い、低酸素や高二酸化炭素に対する反応メカニズムを医療従事者向けに解説します。

化学受容器 どこに関する基礎知識と核心ガイド

化学受容器の存在部位と機能
末梢化学受容器の2大部位

頸動脈分岐部の頸動脈体と大動脈弓の大動脈体に存在し、酸素・二酸化炭素・pHを感知します。

中枢化学受容器は延髄に存在

延髄腹側面に位置し、主に二酸化炭素分圧の上昇を感知して呼吸中枢を刺激します。

低酸素時の反射的反応

酸素分圧低下を感知し、心拍数増加・呼吸促進を起こして体内の酸素供給を維持します。


化学受容器の解剖学的存在部位


頸動脈体は、総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈に分岐する部位の直後、動脈外膜内に位置する小さなクラスター状の組織です 。左右の頸部に1つずつ存在し、動脈血中の酸素分圧(PaO2)、二酸化炭素分圧(PaCO2)、pH、温度の変化を感知します 。一方、大動脈体は大動脈弓およびその分枝に散在する感覚受容器であり、頸動脈体と同様に酸素・二酸化炭素・pHの変化を感知しますが、人間においては頸動脈体の方が機能的に重要とされています 。


参考)https://www.sciencedirect.com/topics/immunology-and-microbiology/carotid-body-chemoreceptor


中枢化学受容器と末梢化学受容器の違い

中枢化学受容器は延髄の腹側面、すなわち脳幹の呼吸中枢群と反対側に位置し、Medullary respiratory chemoreceptors(MRC)と呼ばれます 。中枢化学受容器は主に動脈血中の二酸化炭素分圧(PaCO2)の上昇、つまり高二酸化炭素血症(hypercapnia)によって刺激され、その興奮が呼吸中枢を刺激して呼吸を亢進させる作用を持ちます 。


参考)302 Found


これに対し、末梢化学受容器は主に酸素分圧(PaO2)の低下、つまり低酸素血症(hypoxia)によって強く刺激されます 。末梢化学受容器もPaCO2の上昇によって刺激されますが、その効果は中枢化学受容器に比べて弱く、低酸素状態に対する感受性が特に高いという特徴があります。また、頸動脈体は酸素分圧・二酸化炭素分圧・pHのすべてを感知しますが、大動脈体はpHの変化にはあまり反応しないという違いも報告されています 。


参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/respira_2016/02_01.pdf


項目 中枢化学受容器 末梢化学受容器
存在部位 延髄腹側面 頸動脈体・大動脈体
主な刺激 PaCO2上昇(高二酸化炭素) PaO2低下(低酸素)
神経支配 脳神経を介さない 舌咽頭神経・迷走神経
反応速度 比較的遅い 即時的
適応 適応しやすい 脱感作しない


化学受容器の神経支配と伝達経路

末梢化学受容器からの求心性信号は、それぞれの部位によって異なる脳神経を介して延髄の心臓血管中枢および呼吸中枢に伝達されます。頸動脈体の化学受容器は舌咽頭神経(第IX脳神経)の頸動脈神経枝によって支配され、大動脈体の化学受容器は迷走神経(第X脳神経)によって支配されています 。


参考)https://taylorandfrancis.com/knowledge/Medicine_and_healthcare/Cardiology/Aortic_bodies/


化学受容器が低酸素やアシドーシスを感知すると、その興奮(インパルス)がこれらの求心性神経を介して延髄の心臓血管中枢に伝わり、反射的に心拍数の増加や呼吸促進を引き起こします 。これにより、体内の酸素供給を維持し、二酸化炭素の排出を促進するホメオスタシス機構が働きます。頸動脈体は特に高い灌流を受けており、動脈血中の酸素分圧を継続的にモニターする役割を担っています 。

低酸素・高二酸化炭素時の生理的反応


化学受容器は、動脈血中の酸素分圧が約60mmHg以下に低下すると強く刺激され、換気量を増加させる反射を引き起こします 。この反応は、高地への移動や呼吸器疾患による低酸素状態において特に重要であり、酸素化を維持するための代償機構として機能します。頸動脈体は約20mm³の大きさでありながら、極めて敏感な酸素センサーとして働きます 。



また、化学受容器は二酸化炭素分圧の上昇やpHの低下(アシドーシス)にも反応します。中枢化学受容器は主にPaCO2の上昇によって刺激され、末梢化学受容器も同様にPaCO2上昇によって刺激されますが、その効果は低酸素に比べて弱いです 。これらの化学受容器の刺激は、呼吸中枢活動の亢進を介して間接的に呼吸困難の発生に関与することが明らかになっています 。



  • 低酸素状態(PaO2低下):頸動脈体・大動脈体が強く反応し、呼吸促進・心拍数増加を引き起こす
  • 高二酸化炭素状態(PaCO2上昇):中枢化学受容器が主に反応し、換気量を増加させる
  • アシドーシス(pH低下):頸動脈体が反応し、呼吸性代償を誘導する


臨床的意義と病態生理

化学受容器の機能異常は、さまざまな呼吸器・循環器疾患の病態生理に関与しています。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では、長期間の高二酸化炭素血症により中枢化学受容器が適応し、低酸素が主要な呼吸駆動因子となることがあります。この場合、酸素投与により低酸素刺激が除去されると、呼吸抑制を来すリスクがあります。


また、頸動脈体は高度に灌流された組織であり、動脈血中の酸素分圧を継続的にモニターする役割を担っているため、頸動脈体腫瘍(paraganglioma)などの病変が生じると、呼吸・循環調節に異常をきたす可能性があります 。さらに、心不全や睡眠時無呼吸症候群などの疾患においても、化学受容器の感受性変化が病態進行に関与していることが報告されており、治療標的としての研究も進められています 。


医療現場では、化学受容器の機能を理解することが、呼吸管理や循環管理において重要です。特に、低酸素時の化学受容器反射を考慮した酸素療法の設定や、高二酸化炭素血症患者の換気設定において、化学受容器の生理学的特性を踏まえた対応が求められます。


CV Physiology | Chemoreceptors




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